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「風立ちぬ」キャラ配置戦略【宮崎駿】

加代と、 黒川さん どうもキャラが似ている気がした。口うるさく、実は親切、情が深い。で、表でキャラをまとめてみた。 カプローニに夢で出会う。 目が覚めると母が居る。二人はパラレルである。 お絹は次郎が好きだったが先に結婚。 本庄もさっさと嫁をもらう。 黒川の口うるささを制止するのは服部。 加代が追いかけようとするのを制止するのは黒川夫人。 こういう表になる。 カストロプとユンカーに該当する女性キャラが居ない。 カストロプは「ハレツする」と言う。 国産エ

映画・アニメ・コミック読み解き一覧

実写映画アニメの読み解きはかなり盛んに行われていますが、実は実写映画のほうはあまり読み解かれていません。実写映画の前段にある文学がさほど読み解かれていないからです。以下読み解き済み作品一覧です。 特に「ゴッドファーザー」と「パルプ・フィクション」は現代人の教養として必須ですから、複数回の視聴をおすすめします。 アニメ現代アニメの最上レベルの作品は、過去の世界文学作品の傑作と、同等ないし上の内容を持ちます。そう思って視聴しなければ、内容を取り損なってしまいます。 コミッ

シン・エヴァンゲリオン劇場版の構成

私の構成観では以下になります。時間は適当です。 鏡像構造です。ただ同色部分の対句は少ない。細かく見ればあるのかもしれませんが、そこまで没入できないので簡単な章立て表のみで終わりとします。 Youtubeで見れるエヴァ解説は、いずれも優れています。文学系で最も詳細に作品を検討できているのは(私の認識では)夏目漱石研究なのですが、アニメ解説は残念ながらそれの上をいっています。視覚情報なので記憶しやすいというのもあるでしょう。しかし作品への集中がなければ記憶しても解析しないわけ

「竜とそばかすの姫」における映像と脚本の関係の考察

美術的映画 実写映画にはいわゆる「美術的」な名作群がある。いずれもストーリーは不明確にして面白くない。以下鑑賞歴あるものをつらつらと。 「ミツバチのささやき」(1973年・スペイン) 昔細田守監督が「最も好きな映画」と言っていた。自転車~列車の到着に至るカメラワークの素晴らしさは必見。 しかしスートリーは意味不明。スペイン内戦を描いているらしいが読み解いていない。 「ノスタルジア」(1983年・イタリア) タルコフスキー作品でも最も美術的に優れる。しかしこれまたスト

東アジア世界におけるキャラクター配置戦略の定型化に起因する物語世界の歪みについての考察と警鐘

この人はどう見ても猪八戒である。 この人の律儀さは沙悟浄と言える だからこちらが孫悟空で 彼女は三蔵法師である。孫悟空に大事にされる。 と当てはめてゆくと、悲しむべき結論が導き出せる。 こちらが白馬である。 孫悟空は最初「弼馬温」という下級役人として天界で仕事をしていた。業務内容は馬の世話である。だから馬の世話役を引き継ぐのは仕方がないのだが、にしても今回の作品では、流石に悟空の労働環境が劣悪すぎないか。山道が多いので乳母車の流用が難しいのは理解できるが、それにし

「鬼滅の刃」テレビ版・第十九話「ヒノカミ」後半

私の視聴経験では「SHIROBAKO」第二話「アルピンはいます」以来の巨大な盛り上がりだった。 1、父の神楽 この作品は回想シーンが定期的かつ強引に挿入されるが、絵のタッチがリアルタイムの戦闘シーンとことなり、かつ大変優れているので、違和感なくスムーズに楽しむことが出来る。 「さらざんまい」第九話の終わりの、「カバレリア・ルスティカーナ」シーン、 こちらは水彩画タッチの止め絵の挿入だが、似た雰囲気を感じられた方も多いだろう。 父の神楽の篝火は、 「君の名は。」の神楽

「君の名は。」解説【含ネタバレ】

「物語」は、人間集団のDNAのようなもので、時代を超えて、かたちを変えて生き続けます。変形しながら反復強化される、と言ってもよいです。DNAは紐の一種ですから、物語も紐の一種かもしれません。 「君の名は。」の、元の物語は古事記、日本書紀です。 アマテラスとスサノオ 三葉はアマテラスです。 瀧はスサノオです。 アマテラスが年上です。スサノオは暴れん坊で喧嘩っ早いので、だから最初、瀧は頬に傷が有ります。姉を、年上を慕うのもスサノオの特徴です。二人の母はイザナミです。もう黄

「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」解説【押井守】

「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」は1995年公開のアニメ映画です。日本アニメの内容的頂点ともいえる傑作です。 公開当初、評判は悪かったです。難解すぎたのです。かなりの映画通でも「中身がよく理解出来なかった」という人が多かったです。キネマ旬報などの雑誌でも、まったくあさってな方角の評論が頻出していました。理解できる人がほとんど居なかったもようです。客入りもガラガラでした。しかし内容が深いので評価はじわじわと上がり、続編も作られ、リメイクもされ、さらにハ

「千と千尋の神隠し」解説【宮﨑駿】

宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」は、文明論を語るアニメです。全体の構造を見ればそれは明らかです。作品というものは、全体の構造を見なければいけないのです。 1、全体の構成 冒頭のワンシーンに、この作品の構造は明示されています。 鳥居 小さな祠たち そして上の部分が切れた大きな木。 三つのアイテムがまとめて示されます。このシーン、なにか意味があると思った方多いと思います。物語、とくに名作の冒頭に示される部分には、たいてい物語全体を暗示する情報が詰まっています。ここを発見

「火の鳥・鳳凰編」 解説【手塚治虫】

今日我々が目にする日本のコミック、アニメの根源には、手塚作品があります。なにごとも基本が大事です。基本をしっかり押さえましょう。 注意点 映画でも文学でもそうですが、語り口のスムーズさは時代とともに確実に向上します。今日黒澤明の「羅生門」を心地よく鑑賞できるひとはさほど多くは無いと思います。話のテンポが悪く、俳優はすべて過剰演技、編集はギコギコしています。見ていると知的な気分にはなりますが、かなり疲れます。 たいして「けものフレンズ」は恐ろしくスムーズです。スムーズだから

「この世界の片隅に」原作解説(こうの史代)

映画は白木リンがらみの話の大部分削っています。解釈もところどころ変えています。映画の解釈としては他の方にお任せします。この欄はあくまで原作の解釈です。 星空 冒頭、広島市内で浦野すずは、人さらいのばけものに捕まります。持っていた海苔を切り抜いて望遠鏡に貼り、星空を作って化け物を眠らせて、いっしょに背負われていた北條周作と窮地を脱出します。 末尾、最後から2ページ目、周作とすずの夫婦は、戦災孤児を背負い、星降る呉に戻ってきます。つまりこの物語の最初と最後は、対になっていま

ネオ・ファウスト

手塚の「ネオ・ファウスト」読んでみた。最後の最後に通貨発行問題扱っているかどうか気になったからである。遺作なのは知っていた。 手塚は若い頃から「ファウスト」を繰り返し読み込んでいた。でも通貨発行問題わかっている感じがない。ひとつには「ファウスト」ともともと近い時間観だから、かえってわかりづらかった、というのはあるかもしれない。 「ファウスト」は以下のように論理組み立てる 1、ありもしない地下の埋蔵金を担保に紙幣を発行する 2、反乱軍が暴れだす。鎮圧する。すると反乱軍の