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未来のお米について考える座談会

座談会のテーマ|「富富富」から考えるお米とサスティナビリティ

「食べておいしいのは当たり前だけど、社会にとっておいしいお米とは何だろう」をテーマに、予防医学の研究者、地域振興のプロデューサー、大学教授、お米のスペシャリストといった、様々な分野の有識者に語り合ってもらいました。

◆パネラー紹介

■ESD:(Education for Sustainable Development)とは、「持続可能な社会の担い手を育む教育」のことで、環境的視点、経済的視点、社会・文化的視点から,より質の高い生活を今の世代だけでなく、次世代も含む全ての人々にもたらすことを目指した教育概念のこと。

田井中:今日は、いろんなご専門の方にいらっしゃっているので、簡単なショートプレゼンテーションと言いますか、いろんな話を伺いたいなと思っています。

米と地域づくり 〜散居村が作るコミュニティー〜

富山県の散居村とは

田井中:「米と地域」あるいは「米とデザイン」について、林口さんのご専門にひきつけて、ご紹介いただけますでしょうか。

林口:私たちは、観光を通じた地域づくりをおこなっているのですが、中でも最大のミッションは、富山の「土徳」を伝えることだと言っております。

土徳とは、自然と人が共生して創り上げてきた「土地の品格」だと感じていて、それを皆様にお伝えすることが私たちの使命だと言う風に思っております。

(画面に照射されている写真を指差しながら)皆様、散居村ってご存知だと思うのですが、こういった農村形態は、日本に8市町村あると言われており、そのうち、5市町が富山県にあります。

ただですね。ここ(富山県)は、大きな庄川と小矢部川という川の間に挟まれた扇状地です。

扇状地というのは、川が氾濫した跡地なので、土地は肥えているのですが、石ころだらけで、本来(扇状地)は稲作に全く向いていません。

しかし、ここでは、富山県の地形や人々の努力のおかげで、お米が作れるようになりました。

というのも、富山県は山々に囲まれた影響で、豊富な雪解け水があるので、水捌けが良くても水を保つことができたんですね。

(富山の)人々は頑張って石をどかして、開拓をして、奈良時代から東大寺(奈良県奈良市)にお米を出していたというぐらい古くからお米作りをしてきました。

(富山でお米を作っていた人は)自分の開拓した田んぼの横に家を建てるということをしました。

そうすると、家が散らばっていくということになります。

なので、「人と自然の共生」というシンボルが散居村であり、富山にとって本当に「お米づくり」が重要になるのです。

私たち(水と匠)は、その散居村に佇む「アヅマダチ」と呼ばれる古民家の再生をしまして、昨年(2022年)10月から、散居村の保全活動に寄与するような、お宿を開業いたしました。

田井中:この散居村って、まさに田んぼの中に住むというか、田んぼの中に暮らしがあるというイメージですよね?

林口:そうですね。本当にたんぼです(笑)

散居村の実態

田井中:(家と家の)間を田んぼが繋いでいるということは、皆さんで協力して田んぼの世話をするとか、作業をするとか…それにも適して散居するようになったのでしょうか?

林口:「散居村ってなんで家がバラバラなんですか?」「皆さん仲が悪いんですか?」と良く言われるのですが、決してそんなことはなくて、むしろ逆にコミュニティの力がすごく強いんです。

それは、今おっしゃったように、農作業を共同でおこなう仕組みがしっかりできていて、作業が集中する時期は、地域のみんなでしっかり助け合ってやっておられます。

さらに、ここの地域では、浄土真宗の信仰がとても盛んなので、「他力信仰」といって「自然の力や大きなもの」に感謝しながら、「ありがたい、おかげさまで」と感じて生きている人たちが多くいるんです。

田井中:まさにそのコミュニティデザインの核ですよね。

水と田んぼと米作りというですね、自然景観と人の営み。それが全部くっついてこの景観を作り出しているということですよね。

米と環境 〜米が日本の食料危機を救う?〜

気候変動や多様性の面からみる日本の水状況

阿部:本当、日本は「水の国」というか、水が豊富だという風に皆さんは一般的に思っているのですが、気候変動や多様性といった面で考えていくと、(現在の日本は)「もう未来がないんじゃないか」というような大変な状況。

実際に私たちが日常的に使っている水、例えば、この衣類にしても何にしても、それらを全部含めてどのくらい「日本の水」を使っているかといえば、(全体の)2割ぐらいなんですよ。

(残りの)8割は海外からのバーチャルウォーター。海外の水なんですね。これは、先進国の中では、海外への依存率がまさにナンバーワンなんです。

「生態系サービス」と米の関係性
米は「日本の水」を元にして作っている。このことは日本における「生態系サービス」を向上させる主要な取り組みのひとつであると阿部さんは語る。

生態系サービスとは
人間の生活は食料や水、気候の安定など、多様な生物や環境が関わりあうことで得られる様々な恵みによって支えられている。 これらの恵みを「生態系サービス」と呼ぶ。

阿部:自然環境を保全していくことが、生物多様性を保全していくことにつながっていく。さらに、その生物多様性は、私たちが生きていく上で生態系サービスの基盤にある。

今SDGsが言ってるような、「環境・社会・経済」といった時に、環境がベースで私たちは安心して暮らせる。

そういった意味では「お米」というのは、日本における生態系サービスの主要なもののひとつなんだろうと思います。

コロナやウクライナ(戦争)の影響で食料安全保障が危なくなってきていると思ってます。本当にこのままだと日本の食料は厳しくて、飢えちゃうんじゃないかと。

そこで、いかに米を活用していくか、例えば、気候変動に適応していけるような品種にどう改良していくのかなどが近々の課題なわけですよね。

米を100%を受給できるような環境を残すこと自体が、私たちの未来の暮らしを担保することにつながっていく。

米とウェルビーング 〜幸福度に与える影響〜

田井中:お待たせしました石川さん、「米とウェルビーイング」について、お話をいただけないでしょうか。

作物と歴史の関係性

石川:「米」と「麦」を比較したときに、米を作ってる地域の人の方が、利他精神に溢れるっていうのを言われてます。

中国でこんな実験があったんですけど、中国の北部では「麦」を作っていて、南部では「米」を作ってます。

実験の一環として、それぞれの地元のコーヒーショップへ繋がる通路に邪魔な椅子を置いたんですね。

そうすると、麦を作っている地域の人たち(北部の人たち)は何もしないんですよ。でも、米を作ってる地域の人たち(南部)は、椅子をみんなのためにどける。

なぜかというと、米を作るには麦を作るのと比べて他の人と助け合わないとできないから。

どういう作物を育ててきた歴史があるのかっていうのは、その地域の風土や文化にすごい影響を与えています。

林口:お米の特徴として、米自体が神聖なものとして扱われていたり、豊作を祈ったり、豊作に感謝したりといった、「精神風土」とすごく深く結びついているなと思うんですが、小麦はどうなんでしょうか?

石川:米を前にするとほとんどの日本人は「いただきます」っていう感じになると思います。

そして、そこには生産者の顔がどこか思い浮かぶというか…だけど、パンを前にすると多分「いただきます」って気にならない。

そこが歴史の差なんだと思うんですよね。

日本昔ばなしとウェルビーング

日本昔ばなしが好きで、あそこには日本的なウェルビーングの原型、幸せの姿があるだろうと思ってよく見るんです。

そこでいつも思うのが、「長者どんの食生活」。

お椀いっぱいのお米と味噌汁、さらにお魚があって…これらを見るたびに、「自分たちの食生活は、長者どんの食生活だ。なんて幸せな時代に生きてるんだ」ってすごい思うんですよ。

阿部:その辺に関連してフードロスの問題が出てくるよね。この豊かな食生活の裏には何があるかというね。

石川:特にこの今の時代に求められるのは、いかに環境負荷が低いものであるのかということ。

例えば、出汁。「あごだし」みたいな小さい魚から取った方が、出汁としては好まれるといったふうに、その環境のことも考えたときに、「じゃあ米ってどうなんだろうか」っていう視点は、これから問われてくると思うんですよね。

富富富を実食 〜「富富富」の良いところ〜

(富山県市場戦略推進課長 伴さんより「富富富」のご紹介)

伴:目の前にされております「富富富」ですが、立山連峰から流れ出てくるきれいな水。そういった水で育てられた大変自慢のお米となっております。

「富富富」の特徴として、美味しさは当然なんですけれども、環境に優しい作り方をすごく重視しております。

一般的なお米と比べて、農薬で言えば3割減、化学肥料で言えば2割減という形で作らせていただいております。

いろんな品種が全国的にはあるわけですが、この「富富富」がそういった「環境に優しいお米作り」という面でリーダーシップを発揮して進めていきたいなと思っております。

「富富富」の優れているところ

田井中:渋谷さん。この「富富富」の良さっていうのはどういうところにあるんですか。

渋谷:「富富富」が面白いのは、いつでもどこでも毎日いて欲しいお米っていう味わいで、本当に一粒一粒がしっかりとしているけど、味は濃すぎない。

でも、ちゃんとおかずを乗せて食べてもらうとご飯の味も楽しめて、おかずも引き立ててくれる。本当に日常使いで、いつでもどこでもそばにいて欲しいと思えるお米は、実はあんまりなかったんですよね。

田井中:毎日いて欲しいってことは、要は人々の暮らしにどれだけ寄り添っていけるかってことですよね。

決して特別なものではなくて、「富富富」があるから、毎日が嬉しいとか、工夫があるから、毎日幸せとか、そういうお米になるといいってことですかね。

渋谷:でも、その先にちゃんと環境を考えて作られてるっていうのが大前提としてあるので、だから本当に未来型の品種かもしれないですね。

ベストな食べ方とは

石川:マウントレーニア(コーヒーの商品名)って知ってます?

ストローでコーヒーを飲むっていうのを、最初にやったところらしいんですよ。それを日本の森永乳業が日本に持ってきてるんですけど、重要なのはマウントレーニアを飲むときに、現地ではレーニア山を見ながら飲んでるんです。

だから、この「富富富」もそうですけど、例えば、「富富富」を食べる時に立山の景色が浮かぶかどうか…これだけでもなんか全然違う気がするんですよね。

林口:結局、富山県に来ていただかないと伝わらないことがあって。

例えば、「富富富」の本当の美味しさが伝わるのが、立山を見ながら食べるのが一番味わえるのかもしれないとしたら、どうやって富山まで来ていただこうかっていうのを私たちは考えるんですね。

田井中:普段食べる「富富富」が、自分たちの暮らしにつながってるんだなっていう風に思い至れるような、そういうブランドになっていくといいかもしれないですね。

座談会のまとめ 〜今後「富富富」に望むことは?〜

田井中:最後にお一人ずつ「富富富」に対して、応援のメッセージというか、エールというか、こんな風な風風になったらいいなとか、今日のお話も踏まえてそうですね。

林口:今日皆さんといろいろお話しさせていただいて、この富山や日本が築いてきた日本式の循環社会っていうのを、それがお米を通じてまた世界に広がっていくきっかけにもなるんじゃないかなと思いました。

石川:今日、私たちが「富富富」に対していろんなことをイメージしながら味わって食べたように、そんな食卓の光景が広がることを「富富富」が果たす役割として期待したいなと思いました。

渋谷:「富富富」の文字って、こうだんだん旧字体から新しい文字になってます。

こう新しくなっただけじゃなくて、次に繋がっていくってすごくいいロゴですし、「フフフッ」って笑顔が溢れるいい名前だと思うので、もっともっと作っていけると嬉しいなというふうに思います。

阿部:この「富富富」が「人と自然」あるいは「人と人」の繋ぎ役になるんじゃないか。この「富富富」を食べることによって、幸せになるにはどうしたらいいんだろうかとか、考えて欲しい。時間や空間も繋いでいく。そんな繋ぎ役に是非なってほしいなという風に思ってます。

田井中:「富富富」ってやっぱりものすごい新しいブランドですよね。

新しいブランドだけれど、持ってる価値は実はものすごく普遍的ですし、お米が本来果たしてきた役割をもう一度取り戻すみたいな、そういう新しい当たり前、新しい普通みたいなものが、この「富富富」ってお米の中に込められてるんじゃないかなっていうふうに私は思いました。

このおいしいお米が、日本中だけでなく世界中で食べていただけるような社会が来ると本当に幸せだなと思います。


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