笛入礼太

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「恋文の技術」を読んで #白熊文芸部

「恋文の技術」を読んだ。 誰かに手紙が書きたくなるような小説だった。 *** この作品は、いわゆる「書簡形式」の小説だ。 主人公の守田一郎が書いた手紙を、読者が垣間見ているといった体で進行していく。 第一話を読んだだけの段階では、守田とその後輩の話しか出てこない。 しかし第二話、第三話と読み進めていくと、手紙をやりとりする相手が変わっていき、守田は複数の人物と文通をする「文通武者修行」を行っていることがわかる。 そして、複数の宛先からなる手紙を多面的に読み解いていくと、話

    • 「推し、燃ゆ」を読んで #白熊文芸部

      「推し、燃ゆ」は、主人公の推していたアイドルが、ファンを殴って炎上したことから始まる物語だ。 推しが燃えたから「推し、燃ゆ」である。シンプルなタイトルだ。 この作品を読んで思ったのは、これは単に「推し」を推すアイドルファンの悲哀を描いた物語ではないということだ。 「推し」を推す、という表現は近年メジャーになった表現と言えるし、こういった流行ネタを扱った作品は、基本的に廃れるのが早い。 例えば、芥川賞作家・綿矢りさのデビュー作「インストール」は、女子高生がパソコンの風俗チャ

    「恋文の技術」を読んで #白熊文芸部