おすすめ本 金井真紀『虫ぎらいはなおるかな?』

おくさんにすすめられて読んだ、金井真紀さんの『虫ぎらいはなおるかな?』

今年読んだ本の中でいちばん良かった。

「はじめに」を読んだだけでも、この著者がすごく好きになった。
以下「はじめに」より引用。

虫は、にんげんの大先輩である。【中略】それなのに、どうだろう。大先輩たる虫への敬意がまるでない。
自分しかいないときは勇気を奮い起こして、ゴキ太郎を退治する。すなわち、殺しである。理由はただ、「見た目が気持ち悪い」というだけの、まったく身勝手な犯行だ。
「多様性を面白がる人になりたい」なんて言いながら、虫が出てきた途端このザマだ。わたしが理想とするわたしは、どこかへ消し飛んでしまう。

「多様性を面白がる」をモットーとする虫が苦手な著者が、昆虫館の元館長や昆虫園の職員をはじめ、虫を題材にしたアーティスト、害虫の研究者や、認知心理学者などいろんな「昆虫の達人」に会いに行って「虫が好き(または嫌い)という気持ちはどこから来るのだろう」と真剣に検討する。

だんだんと、虫の話に限らず「好きってなんだ? きらいってなんだ?」という問いに近づいていって、「苦手なものを排除する全体主義的なことでいいのか」「恐怖心と嫌悪感を誤解していないか」など、とても本質的な哲学にふれていく。

虫を好きにならなくてもいい。
「きらい」「こわい」「気持ち悪い」から、一歩踏み出してみない?
そういう気持ちにさせてくれる本。

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