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その青は土の匂いがした。

 いったいどこから始まったのかを思い返すと、ちょうど一年前になるだろうか。かえでさん、おじいさんと5周年イベントの打ち上げをした日のことだ。

 どんな熱狂も、喉もとを過ぎればいつもと変わらない日常にかえる。やけに落ち着き払った自分が、ふとこれまで歩いてきた方を向いたとき、なにがどうしてこんなに張り切ったんだろうかと驚き呆れるのも無理はない。去年は去年でなにやら必死だったのだということは、当時書いた記事からも察せられる。

 自分には、もはやなんの拘泥もないと思っていた。他者への期待などというものは、ともすれば余計なお世話であるし、変に背負わせるのも酷であるから、このときは本当に冗談半分であった。そう、本当にこのときは。

いちばん恐ろしいのはこれが一年前という事実

 おじいさんとは、じつはこの日に初めてお会いしたのだが、我ながら図々しくて今見ても変な笑いが出る。じっさい「無理だよ〜」と頭を抱える彼に、2人して「やるよ」だの「大丈夫大丈夫」だのと、とくになにか根拠がある訳でもなくただ連呼していたから本当に酷い。だが蓋を開けてみれば、"ESPADA"でおじいさんは総合10位を獲得。このときの接戦は忘れられない。当時の様子を知りたい方は、彼の記事と拙著と合わせて読んでみてほしい。

 これまで今まで何度も書いてきたことだが、「積み重ね」でしか見えない景色がある。その意味で今回の周年イベントは、ラウンジcherryにとってひとつの到達点だったのではないかと思う。

 私が傭兵として参加することを決めたのは、完全にその場の勢いであった。ラウマスのムーさんと、彼と旧知の間柄であるかえでさんが、周年について話し合っていた場に偶然にも居合わせたのだ。この少し前から、ムーさんがいろいろと準備していたのをなんとなく感じてはいたから、「本気でやるつもりなんだ」と確信した。はじめに書いたとおり、私は彼が1位を目指して走るとは思っていなかったから、驚くと同時にある種の高揚もあった。

 「ミリオンライブ!」という輪の中で私が感じ取ってきた空気感、それはサービスを提供する側も享受する側も、どちらも真面目で幼いということ。これは煽りでもなんでもなく、よくコンテンツとして存続しているなと思う。このようなことは別段珍しい話でもないが、その只中で、ラウンジのリーダーとして、また1プレーヤーとして、何年も悩み踠きつづけるというのは尋常ではない。そんな男が、筋を一本とおそうと言うのだ。熱意には、熱意でしか応えられない。

 誰よりもこのコンテンツと向き合ってきた人だから、その渾身を、いちばん近いところで見届けたいと思った。今この瞬間を誰よりも楽しんで、個人としてもラウンジとしても最上の結果を出す。最高にかっこいいじゃないか。彼のことをずっと見てきたかえでさんはもちろん、先代ラウマスのこまるさんはじめcherryのメンバーにとって、感慨もひとしおであったことと思う。ラウンジの皆が同じ方を向けるのは、彼の直向きさ故なのだろう。
 つまるところ、勢いだったことは否定しようもない事実だが、そこから先は私なりの餞だと思ってくれたら嬉しい。

願いごとに「。」はつけない

 そして、今回の健闘を支えたLowEさんについても触れておきたい。LowEさんは、私たちの古巣にあたるラウンジSKETCHBOOKで仲良くなったいわば同志だ。世の中は、ようやく声出しのライブができるまでに回復しつつあるが、3年前は誰にとっても辛い状況だったのではなかろうか。だが有難いことに、そんな状況だったからこそ、当時仲良くなった人たちの多くとは、今でも交流が続いている。3周年イベントの打ち上げに所用で来れなかった彼と、別日に飲む機会を設けて、お話しできたことが今につながっていると実感する。かつて一緒に走ったときのことも、間違いなくいい思い出だ。

 縁はほんとうに、どこでどうつながるかわからない。LowEさんはもともと、cherryの定住で今年も琴葉担当として頂点を目指していた紅さんと親交があり、それがきっかけで"ESPADA"にて数奇な再会を果たした。彼の得意分野は分析と定量化、そしてその実行だ。よく勘違いされがちなことだが、徒に稼働することはまったくもってナンセンスである。ただ起きているだけなら誰にでもできる。根性は、理論の上にしか乗らない。言うなれば、cherryがラウンジとして今回これだけの結果を出せたのは、各々がもともと持ち合わせていた実直さの下に堅いレールが敷かれたからだ。彼の功績は計り知れない。

 努力に結果が伴えば、それはすこぶる気持ちがいい。逆に今は悔しさに塗れたとしても、それが全力を尽くした結果であるのなら、次につながるだろう。本気の失敗には価値がある。Robochaさんと紅さんには、今はただエールを贈りたい。がんばれ。

最高のチームに、おめでとう

 私もずいぶん長いことひとつのコミュニティに身を置いた。正直を言えば、楽しいことばかりではなかった。いろんなことをやってみても、うまくいったと思えるのは指で数えられる程度だろう。だが今回、一本一本はあまりに薄く細い糸がひとつの束になって、ここにたどり着けたのだと納得することができた。これもまた「積み重ね」の結果であると、日頃エンターテイメントに身を置く一個人として、最後の最後に答えを得た。感謝している。

追伸 よっち、今度は俺がお前の肉焼くわ


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