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猫とテレパシー

昔飼っていた猫の話である。

彼は性格が穏やかで他の雄猫からは喧嘩でやられてばかりだった。でもイケメン猫でモテており、恋の季節になると家の庭に雌猫が数匹遊びに来た。

彼は自分のご飯(家の中)をご馳走したり(この時は家族一同、彼女を連れてきたと一時騒然となったがその後静かに見守った)、ある年雌猫が車庫の棚で子育てを始めると隣に寄り添うくらい優しかった。

まだ母乳が必要な時に親兄弟と離れてしまったため、免疫を十分にもらえていなかったのか体が弱く、病院通いが多かった。それに人間のやり方で育てられたので猫社会での事情を知らず、苦労は多々あったことと思う。

子猫時代、母親から教育を受けられなかったことや、兄弟と取っ組み合いできなかった分、私が代わりにできることはしてやろうと思った。

まず一番に交通事故に合わないように道を渡る時の注意を教えた。ぼーっとしており危なっかしいから。近所の猫が交通事故で亡くなったと聞いていたのもある。

左右確認をやって見せ、車が来ている時にはたとえまだ遠くても捕まえて「おー、怖いねー」と連呼して止まることを教え、通過したら「ヨシ」と手放すを3回繰り返した。そして猫一匹でできているかを2度確認した。

ある日「シャーッ」と私達に言うようになった。私は他の猫に言われたんだなと思って笑って「違うよ」と声を掛けたのだけど彼は止めずに4日間続けた。よく見ると悲しそうにしている。

あぁ、心が傷ついたんだなと思った。それで「シャーって言われたの。大変だったね。大丈夫か?」繰り返し声を掛けて撫でてやると収まったらしくそれきり言わなくなった。ナイーブなイケメンである。

あまりに喧嘩に負けるので戦い方(手袋をした手を対戦相手と見立ててトレーニング)を教えたりもしたが子猫育てはこれでよかったのか疑問も残る。

そんな環境のせいか人間の言葉を割とたくさん覚え、理解していたように思う。

そして、人間が頭の中に画像を思い浮かべると伝わることを私に教えてくれた。

その彼に何かしらのアクションを起こす時に必ずやっていた5つのことがある。

1. これからすることを言葉で説明する

2. 画像を頭に浮かべる

3. スキンシップで落ち着かせる

4. 受け入れることを褒める

5. 終わったら頑張ったことを褒める

猫にも心の準備や励ましや慰めが必要だと思ったからだ。

例えば病院に行く時。

1. 「病院に行くよ」と声を掛け、具合が悪いところを治すのだと説明する。

2. 病院の画像を頭にイメージする/猫の症状を目視する

3. 「大丈夫だよ」と言っていっぱい撫でる。

4. 「お利口さんだね」と褒める

5. 「よく頑張ったね」と褒める

初めての事でも2回目以降でも全く同じ手順を踏む。

2は頭の中の画像を猫に読み取ってもらうためにしている。これから行く場所を伝え、行く理由として猫自身からは見ることのできない怪我の外観や具合の悪い様子等を私の視覚を通して伝えている。

猫は頭の中のイメージ画像を読み取っているのではないだろうか?

そう思えたきっかけは猫が皮膚病になってシャンプーをせねばならなくなった時のことだ。

最初は週1だった。「体を洗うよ」と声をかけ、お風呂場に連れて行ったが、2回目からは脚を突っ張って抵抗していた。穏やかな彼が見せる初めての抵抗姿勢。

前回のシャンプーから1ヶ月が経ったある日、私はぼーっとしていて声をかけずに抱っこした。そのとたん彼は脚を突っ張って嫌だと示した。

ん?まだお風呂って言ってないよ。お風呂場にも向かっていない。ただ抱っこしただけで?

意識を読まれた、と思った。だからこそイメージ画像を頭に描けば読み取ってくれると考えたのだ。

頭で考えていることを読み取る能力=テレパシー=生存本能の1つ 

だと思っている。

私がイメージを伝える事を意識して繰り返し行っていたら、逆に猫も私に意識して伝えるようになってきたと思う。

もしかしたら私にも画像を送ってきていたかもしれない。でもごめんよ、私は読み取れない。

元々飼い猫は人間と一緒に暮らす以上、ある程度自分の意志を訴える必要がある。鳴いたり、目で訴えたり、ある特定の場所に行って知らせる。お腹すいた、ご飯食べたい。遊びたい、相手して。外に出たい、戸を開けて。

でも具合が悪い時はずっと寝てたり、ご飯を食べずに自分に籠ったりで、飼い主側が異変を察知して病院に連れて行ったりするのではないだろうか?少なくとも前に飼っていた猫達はそうだった。

その猫はまばたきやしぐさで辛さや不安等を伝えてきていた。具合が悪い、怪我している、毛が汚れた。少なくとも私には見てすぐ何かあるのだなと気づくサインだった。

その都度どこかに怪我がないか、血が出ていないか見たり、あちこち触れてどこか腫れてないか、猫がどこを痛そうにしているか等細かく確かめた。

傷を見つけたらアクリノールという黄色くて刺激性のない消毒液をコットンにつけてそっと浸み込ませた。ポコッと腫れていたらもう消毒液では効かないので「病院に行くよ」と伝えた。

そして具合が悪いと低体温気味になるので保温のためにひざ掛けでくるんだりした。

毛の汚れを気にしている時は触るとアッ・・・と遠慮するしぐさを見せた。そういう時は大抵側溝かどこかで喧嘩した後だ。一見きれいに見えていたとしてもお湯に浸してしっかり絞ったタオルで体を拭いた。

伝えてきてくれたおかげですぐに消毒が出来、傷口が腫れたり膿んだりすることもなくなり、だいぶ病院通いが減った。清潔も保てたと思う。

病院のイメージと傷の具合(視覚)をセットで思い浮かべ、「良くなってるよ。病院に行かなくてもいいよ。良かったねー。」と撫でると尻尾をブンブン左右に振って喜んでいたのにはびっくりした。ちゃんと伝わっている。

ちなみにこの5工程は彼とその彼女が晩年一緒に薬を飲む事になった時にも役立った。その時は粉薬で、一袋分飲ませるために水で湿らせた指に粉をつけては猫の舌の上に擦り付けるを数回繰り返さなければならなかった。

薬を飲ませるのは母親の担当で、私は説明係だった。飲む前に声かけをし、十分なスキンシップをし、励まし、褒め続けた。そしてこの薬は何に効く薬で飲んだらどのような効果があるかを具体的にイメージした。

雄猫は「お薬飲もうね」の一言でもう舌をくちゃくちゃ動かした。理解している。彼が最初。私は粉薬を一指分ずつ飲み続ける猫を励まし続け、飲み終わったら頭や胸を撫でてよくやったと褒め続け、猫は褒められ続けた。

続いて初めて家で薬を飲ませることになった雌猫。実は雌猫は雄猫よりも上手に薬を飲んだ。私は同様に薬を飲み続ける猫を励まし続け、飲み終わったら頭や胸を撫でて偉かったと褒め続け、猫は褒め言葉を受け止め続けた。

その後の2匹はぼーっと姿勢良くお座りしていたが30分位経った後に「大丈夫か?お腹はゴロゴロしてないか?」と撫でながら声を掛けると雄猫はお目目をキラリンと輝かせた。大丈夫らしい。雌猫にも声掛け。大丈夫みたい。

それから一番なついている人を私が見て(視覚)「(様子を)見せてきなさい」と言った。雄猫は父親に、雌猫は母親にそれぞれ向かう。そしてまた褒めてもらった。

薬を飲みなれている雄猫を最初にしたので雌猫は見習えたのかもしれない。2匹は薬を飲むことを受け入れ、自ら進んで薬を飲んだ。自分の足で母親の前に立って。私はただ横で励ましていただけである。

信じられない光景だったが事実である。

このコミュニケーション方法を『イメージ投影法』と名付ける。

他の動物でもきっと役に立つはず。個体差はあると思うけど。

お宅の猫ちゃんにもちょっとやってみませんか?





飼い主も繊細に気づくように鍛えられてありがたい限りである。猫の方は大変だったけどお世話をする役目を仰せつかって幸せでした。

もう天国に戻って行った猫と生前交流が出来て楽しかった思い出である。





















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