「筆先三寸」日記再録 2003年7月~9月

2003年7月1日(火)

▼なおちゃんと、海外旅行は行ったことないよなあ、てな話をしていた。
「淡路島も行ったことないしなあ。海水浴でもブイの向こうまで泳いだことないし」
 そんなのそもそも海外旅行でもなんでもないが、一応言ってみた。すると、なおちゃんが反論した。
「あるでぇ。去年、海で、ずっと向こうまで泳いだやん。お父さんといっしょに、ポカリスエットのとこまで」
「え? ポカリスエット?」
「こんな岩みたいなんが積んであって、お父さんが落ちたらあかんでって」
「それはポカリスエットとちゃう。それも言うならテトラポッドや」
 堤防の脇に白と水色の空き缶が積んであったら、それはきっと不法投棄だと思うぞ。

▼今日、ともちゃんのクラスに新しい子が入ってきたらしい。しかも女の子で可愛いらしい(ともちゃん談)。
 そのことを、帰宅した私に話すともちゃんのうれしそうなこと。
「ももかちゃんっていうねん」
 大はりきりである。
 そして先生のおたよりによると、ともちゃんは今日一日というもの、ももかちゃんの後をついて回って、
「おれ、○○っていうねん」
 と、自分のフルネームを連呼していたとのこと。なにが「おれ」か。
 お兄ちゃんとは違って、こいつは将来立派なナンパ師になるにちがいない。
 ていうか、そんなことしてると仲良しのうたのちゃんに叱られるぞ。


2003年7月2日(水)

▼ボーナスのお買い物その1。
電動自転車「ヤマハPAS」
 サイがともちゃんの送り迎えにきっと便利であろうと主張するので購入した。
 これが意外とおもしろい。
 乗り心地にしても、自転車をたいして超えるようなものではないのだが、初めて乗ったときの感触がどうも奇妙である。坂道なんかで踏み込んだときにアシスト機能が働くのだが、突然だれかにグイと押されるような感じがする。おお、とちょっと驚く。すぐに慣れるんだけど。
 でも結局ただそれだけで、上り坂でも降りて押すはめになるようなことがないだけで、やっぱり力はいるし脚は疲れるのだった。
 サイにはそれが意外だったようで、ぜんぜん楽ちゃうやん、とご立腹である。
 それやったら初手から原付にしとけっちゅうねん。

▼ボーナスのお買い物その2。
NTTドコモ「シグマリオンIII」&「P-in Free 1P」
 もちろん私としてはこちらがメインである。
 本当はPalmマシンがほしかったのだが、こっちが発売されたのを見て、思わず買ってしまった。
 モバギは持ってるけど、モノクロで解像度も低いし、動作はのろいし、ブラウザも今どきのサイトには合わなくなってきてるし。
 その点こいつは軽い小さい解像度も十分、アプリは軽快と今のところ文句なし。キーボードは格段に小さくなったけど、クリエやリナザウは話にならない(実は今日の日記も全部、通勤電車で打った。手の動きも小さくてすむので、隣に人がいても全然苦にならない)。
 でもなんでノートPCじゃなくて、PDA(CEマシン)かってところなのだが、価格はともかくとして、起動と終了が圧倒的に速い(手軽)というのが大きい。使ってる最中でもふたを閉じれば電源オフ、開けば電源オンでさっきの画面から、というのは到底PCには真似できない。この気楽さとスピードはゲームボーイ以上である。
 ということで、PIMまでもこっちをメインにしようと、それはちょっと苦闘中。

 でもちょっと問題が。せっっかくはりきってCFカード型のPHS端末まで買ったのに、家の中では電波が届かないんでやんの。窓開けて半身を突き出して操作すればうまくいくんだけど。
 そんなとこ他人に見られたら、ただの近所の変なおっさんやがな。


2003年7月13日(日)

▼今日保育園で、ななみちゃんのお母さんが、ともちゃんに話しかけたという。
「ともちゃん、うちのななみがともちゃんのことすっごい好きやねんて。結婚したってくれる?」
 でもともちゃんは、好きだのなんだのと言うと、すぐ結婚といわれるのでよほどうんざりしていていたらしい。
「ううん、もう、だれともけっこんせーへんねん」
 また、うたのちゃんに怒られるようなことを。
 そこで、ななみちゃんのお母さんはたずねた。
「じゃあ、ともちゃんはだれが好き?」
「ゆきせんせい」
「先生じゃなくて、お友だちの中やったら、だれが好き?」
 それでもともちゃんは首を振る。
「ゆきせんせいとおふろはいりたいねん」
 怪訝な顔をするななみちゃんのお母さんに、ともちゃんは続けた。
「だってな、おっぱいみれるもん」

 私は、この話をサイからのまた聞きで聞いた。
 しかし、5歳にして、若くて可愛い女の先生のおっぱいが見たいとは。
 おまえはクレヨンしんちゃんか。
 ていうか、お父さんも見たいぞ。

▼それはともかくシグ3の話。
 これまで携帯電話だとか、モバギだとか、クリエだとか、いろんなPDAのために液晶保護シートを買ってきた。
 店頭売りされてる分なら、たいていのメーカーのものに手を出してきたと思う。
 でも、どいつもこいつもプーだった。透き通っているようでも、なんだか画像やフォントがぼけるし、薄いようでも、スタイラスの反応が悪くなるし。透明のふりしてよけいに見にくくなるなんて論外である。
 しっかーし! 今回のこれ(ミヤビックスの液晶保護シート)はちっがーう!
 ちょっと、ていうか、本気でおどろいた。めっちゃきれい。貼ってる感じなんてまったくない。画面の見え具合も、画像のくっきり度も全く見劣りしない。すっげ。しかも、スタイラスの反応も文句なし。
 買え買え、PDA使いは全員買え。
 ほんまにきれいから。液晶保護シートの概念が変わるから。


2003年7月20日(日)

▼夏休みになるので、いちど二人だけでお父さんの実家に泊まってはどうかという話になった。
 二人は目を輝かせてうなずいた。
「いっそのこと、二人で電車乗って行くか」
 なおちゃんは、首を振る。
「えー、むり。ぜったいむり」
 でもともちゃんは行きたいのである。お兄ちゃんと旅に出たいのである。
「おにいちゃん、いけるて。いこういこう」
「むりやって」
「ぜったいいけるから。でんしゃのっていこう、おにいちゃん」
 その根拠のない自信はどこからくるのか、ともちゃん。

▼先月のことである。
 なおちゃんは、しまじろうの策略にはまって、なんだか子どもだましみたいな通信教育の教材を購読している。小学校時代は、学研の「かがく」と「がくしゅう」にはまった身としては、そこそこの付録もついている(割と喜んでいる)ので、まあいいかと続けさせている。
 で、それには通信添削テストみたいなのが毎号ついているのである。なおちゃんは根がまじめであるし、返信時についてくるシールを集めると豪華景品がもらえたりするというので毎号一生懸命やっている。
 いつものことながら、それがどうしたという話なのだが、えーと、私は、なおちゃんに投函を頼まれておきながら、そのテストの入った封筒を落としてなくしてしまったのである。
 はっはっはっはー。
 はは。
 は。
 なおちゃんごめーん。

▼それでこれも先日の話なのだが。
 サイが、何かのきっかけで、ともちゃんを叱る中で、こんなことを言ったらしい。
「お父さんやさしいやろ。もうあんなわがまま言うたらあかんで」
 なおちゃんは、それを横で聞いていたのだが、ともちゃんに向かって、こうつぶやいたという。
「お父さんやさしいけどな、手紙たのむときは気ぃつけた方がええで」
 なおちゃん、やっぱりごめーん。


2003年7月21日(月)

▼3連休の話その1。19日の土曜日のこと。
 連休初日だというのに、一家そろって6時半に起床して映画を見に行くはめになった。
「劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 七夜の願い星ジラーチ/おどるポケモンひみつ基地」である。
 車で20分のところにある、いわゆるシネコンにでかけたのだが、いきなりナビにだまされて40分近くかかってしまい、も少しで上映開始に遅れるところだった。だって、そこで右折すれば入れそうに見えたのに、ずっと向こうでUターンしてもどって入れとか言うんだぜ、ナビのねえちゃんったら。いままで、ナビを信用せずに何度も窮地に陥った身としては、「えー、ほんまかいなー」と疑いながらもそれに従ったのだが。
 Uターンできるはずの場所が、真新しいガードレールでふさがってやんの。おかげで、そこから再び田舎道をえんえん迂回することになってしまったのだ。で結局、はじめに見えた入り口から入ったのだった。ナビのばかー。
 いや、そんなことはどうでもいい。映画の話である。
 あ、いや、映画こそもっとどうでもいいものだった。テレビ版のほうが面白いぞっていうくらいで。
 クレヨンしんちゃんを見習ってほしいものである。
 でも、ともちゃんは、館内では退屈していたみたいだったのに、もう一回見に行きたいとか言ってる。
 きっと、「映画を見る」っていうのが楽しかったんだと思う。いいぞいいぞ。

▼その2。20日の日曜日のこと。
 なおちゃんの夏休みの宿題のひとつに、公共交通機関で近場へ出かけて、なにに乗ってどこへ行ったか文章にするというのがあった。
 というわけで、午後になって、急に梅田へ行くことになった。目指すはヨドバシカメラ(お父さん用)とポケモンセンター(子ども用)である。
 まずはヨドバシ。とりあえず、プリンタが5年も6年も昔の奴なので、新しいのを買うことにした。全面フチナシ印刷とか超高画質写真印刷とかは興味がないのでパス。ゆえに6色インク7色インクなんてのは初手からオミット。むしろ興味があるのは普通紙にきれいな顔料インク系とか、設置場所が助かる複合機系とかである。あれこれ迷いたかったのだが、結局まえから気になっていたHPのにした。エプソンでもなく、キャノンでもなく。
 第一に小さいのがありがたい。給紙口をたためばノートパソコンの外箱より小さい。ついで、給紙口が手前なのがありがたい。家では壁にくっつけてPCラックを置いているので、背面給紙ではやりにくくてしかたないのである。
 サイはもうちょっと高いのでもいいと言ってくれるし、エプソンの複合機もいいのが出てるし、店員のお姉さんは比較しながら親切に説明してくれるし、ほかにもいろいろ見比べたかったのだが、それがままならなかったのが唯一残念である。なんといっても、なおちゃんがマジうるさかったのである。「お父さんまだー」だの、「すぐ決めるって言うたやんー」だの、「あと1分で買いやー」だの、横でずっとまくし立てられては検討する気にもなれない。くっそー、もーほんまにー。おかげでいろいろ買い忘れたやんけー。
 そして、なおちゃん待望のポケモンセンター。午後の暑い時間帯だというのに、入り口前にずらっと親子連れが並んでいてびっくりした。なんと、入場制限しているらしい。それでも親子で並びながらなんとか入店。とはいえ、なにがあるでもなく。子どもたちは人ごみの中であれこれ手にとって喜んでいたが。なんかよくわかんないけど、二人そろってゲームみたいのを買ってもらってやがってましたが。
 この日は本当に暑かったけど、ともちゃんはえらかった。抱っこもせがまず、わがままも言わず、手をつないで元気に歩く歩く。さすがに帰りの電車では、ぐっすり寝込んじゃったけど。

▼その3。21日の月曜日。すなわち本日。
 午前中にちょこっと買い物に出かけただけで(昨日買いそびれたUSB2.0のボードも買った。こんなもんでも挿すだけでOKとはやっぱりXPのありがたさというやつか)、とりあえず今日くらいはゆっくりしたいよな(上記二日間はもっといろいろ行動したのだ)、と思っていたのだが、午後から近所のプールに行くことになった。毎年おなじみの流水プールつきの市営プールである。
 親子4人、そろって家から水着にTシャツである。ともちゃんなんて、ハリケンジャーの浮き輪を抱えて、浜辺の幼児そのものである。
 なおちゃんはさすがに3年生で、泳ぎもそこそこ達者なので心配ない。頭上に抱え上げて思い切り水に放り込んでも、大喜びしてもっともっととせがむぐらいである。身長より水の深い競泳用の50mプールへも連れて行ったが、いろんな泳法ですいすい泳いで見せてくれた。さすがに疲れてくると、プールの真ん中あたりでおぼれかけてたが。
 心配なのがともちゃんである。どこへでも勝手に行きたがるし、せっかく持って行ったのに浮き輪には見向きもしない。水が怖いとかいうのは、まったくないらしい。流水プールでも、ギャハギャハ言いながらお兄ちゃんと追いかけっこをしていた。たまにゲボゲボも言ってたけど。おかげで、ずっとついて回らざるをえなかったサイはへとへとである。
 ちなみに、私は密かに持ち込んだ禁制品のビールを飲んで、プールサイドで寝転がっていたのである。ていうか、ほんとに寝てしまっていたのである。極楽極楽。


2003年7月29日(火)

 先週、初めて舞城王太郎のデビュー作を読んだときのメモから。

舞城王太郎『煙か土か食い物』(講談社ノベルズ)。
 たいした才能である。ただし、『このミス』で上位に食い込んだとはいえ、暗号を駆使した連続殺傷事件を扱った本格ミステリと見ればフェアではない。行き当たりばったり型の探偵ものと見てさえ、まったくフェアではない。しかしおそらく作者はそんなことは百も承知である。本格パートはちらりと(本当にちらりと)でてきて、主人公より先に真犯人にたどり着く「名探偵」が、物語とは別の場所で受け持っていた(ことになっている)のであろう。
 それでも面白い。それでもこれはミステリである。
 むやみに饒舌な文体が新しいわけではない。ミステリでは新しかろうが、村上龍や高橋源一郎がやってきたこと、そして町田康が辿り着いたフィールドを押し広げるところまでには至っていない。これも同じく作者は百も承知で、作中に「『くっすん大黒』のドライブ感」なんて言葉が出てくるのが、作者のフェアな(あるいは傲慢な)態度の現れである。
 職場で大急ぎで弁当をかき込んで、昼休みにもページを繰るような小説は数ヶ月ぶり(いや、もっとか)だというのに、読んでいる間、私には常に不満があった。いやしくものちに三島賞を受賞する作家である、どこかで「文学」に転じる瞬間がやってくるはずだと確信していた。開巻数ページでその確信はあったのに、一向にその気配がないのが不満だったのである。
 こんな不満は京極夏彦を読んでいるときには出てこない。宮部みゆきならなおさらである(高村薫と馳星周ならちょっとある)。
 いってみれば、人物が作者の手を離れること、物語がプロットより深いところに突き刺さることを期待していたのである。しかし、それはミステリにとってタブーである。叙述方法も含めて、プロットが精緻であればあるほど、それはタブー以外のなにものでもない。ペン先からほとばしる精神の運動を、強靱なプロ意識で押さえ込めるのが優秀なミステリ作家の資質であるはずだからである。凡庸な作者にはそもそもそんな運動など起こらない。
 しかし結局、私の不満は満たされることとなった。すべての物語が収束してのち(そのせいで安心したのか油断したのか)、ラスト10ページで作者はきっちり「文学」を見せてくれた。満足である。
 誤解のないように言い添えると、これはミステリより文学が上とかそういう話ではない。水と油は混じり合わない。もちろんこの作品でも混じり合ったりしていない。一作の中で両方見れて面白かったという話である。

 そんでもって、続いて最新作を読んでのメモ。

舞城王太郎『九十九十九』(講談社ノベルズ)。
 なんだこりゃあ。メタミステリって、山口雅也みたいのかと思ってたら(そう、私はミステリ素人)、なんだこりゃあ。
 ミステリじゃないのにミステリ。推理もへったくれもないのにミステリ。ていうか、幻想小説とかマジックリアリズムとか不条理小説とかの方がいいのか。ジャンルとしては。
 よく売れてるらしいが、私以上に素人のひとは、どう読んだんだこれを。
 でも面白い。変な世界へ引きずり込まれて、ぐいぐい引っぱり回される読書が好きな人にはお勧め。


2003年7月31日(木)

 昨日、おばあちゃんから、子どもたちにはがきが届いた。夏休みなので遊びに来いとか、まあそんな内容である。
 なおちゃんは、当然返事を書いた。なんといってももう3年生である、「ピアノの発表会来てくれてありがとう」だの、「じんじゃのおまつりで金魚すくいをしました」だの、漢字まじりで工夫しながらいろいろ書いた。
 そうなると、自分も書きたいのがともちゃんである。しかしながら、こちらは5歳児、ひらがなもままならない。それでも、大小直曲正歪裏表とりまぜて四苦八苦しながらこう書いた。

「いつもほいくえんにいってます かしこくしてるよ げーむかってね」

 いきなり催促かい。

 というわけで明日より2泊3日、地方都市における夏休みの小市民家族の代表的な大イベントといたしまして、東京ディズニーリゾートへ参ります。シーも行きます、ランドはもちろんです。どれだけ暑いか、どれだけ混んでるかを想像しますと、引率者としては気が重いです。なおちゃんにはすでに、「お父さん、ぜんぜんうれしそうちゃうやん」との指摘も受けております。一方、サイは予習に余念なく、こちらは「お母さん一番うれしそうやん」と看破されております。
 それではみなさま、ごきげんよう。


2003年8月31日(日)

▼むしまるさんは正味1ヶ月更新を休みました。考えられる原因を以下のうちより選びなさい。

 1.仕事が忙しくて、それどころじゃなかった。
 2.うつ状態がひどくて、それどころじゃなかった。
 3.コンピュータが壊れて、それどころじゃなかった。
 4.家族に不幸があって、それどころじゃなかった。
 5.ディズニーランドから帰ってくるのに、道に迷って1ヶ月かかった。

▼正解は秘密。ディズニーランドの日記と、それ以降8月中のかなりダークな日記は、書いては見たものの、アップするかどうか微妙なところである(前者は他人にはくだらないため。後者はいろいろ差しさわりがあるため)。
 というわけで、従来どおりの他愛もない文章でお茶を濁しておく。

▼たとえば、ラーメン屋でどんぶりに虫が入っていたとする。
 そこで、その筋の人が、
「なに出しとんじゃコラ、虫食わすんかボケ。わびに百万出せ」
 と言ったとすれば恐喝である。ラーメンに虫が入っていたという弱みにつけ込んでの。
 またたとえば、歩いていてその筋の人にぶつかったとする。
 そこでその人が、
「いたたたた、骨折れた。どこ見て歩いとんじゃボケ。治療代に百万出せ」
 と言っても恐喝であろう。よそ見していてぶつかったという弱みにつけ込んでの。
 そこで最近話題のヤミ金融である。彼らは、人が金を借りたからといってこう言う。
「なに10万も借りとんじゃコラ。利息じゃボケ、百万出せ」
 借金したのはたしかに弱みであろうが、それにつけ込んで何の根拠もない多額の金を要求するのは、恐喝そのものじゃないんだろうか。
 貸金業規制法だの何だの眠たいことを言わずに、こんなのとっとと恐喝罪でも脅迫罪でも、刑法で引っ張ればいいのに。


2003年9月11日(木)

 売れているらしいのでちょっと気恥ずかしいのだが、中古CD屋で安かったので、「女子十二楽坊」のアルバムを買ってしまった。
 感想はやっぱり、「かっこいい」である。
 もちろん技術は抜群。ルックスは中途半端だけど。グループのネーミングもばっちし。「少林寺三十六房」みたいでいかにもである(坊と房は意味も似てるし)。これがカタカナじゃ、いくら気取ってもダサダサだったと思う。
 プロデューサーが腕利きなんだろう、きっと。中国人女性の民族楽団なぞ、下手すると温泉旅館の演芸場めぐりに終わるところを、楽曲は無論のこととして、プロデュースのセンスで大ヒットまで持っていったというのはたいしたものである。
 で、アルバムであるが、もうなんちゅうかこれだけのポテンシャルのバンド、日本に迎合しなくてもいいって。SMAPだの小田和正だの、そんなの今さらどうでもいい。ていうか、それこそ温泉旅館のアトラクションである。
 全曲“自由”や“奇跡”みたいな、バリバリ力技のオリジナルばっかりだとずっとよかったのに。
 とにかくひたすらかっこいい。
 それと、多くの楽器が同時に鳴る音の魅力。
 津軽三味線なんかでもそうだけど、民族楽器によるユニゾンの迫力って、どこか沸き立つものがある。。
 だから、オーケストラによるクラシックってのもファンが多いんだろうな。高尚だとか落ち着くとかだけじゃなくて。


2003年9月16日(火)

 ともちゃんによると、今日、生活発表会にかかる重要な抽選が行われたらしい。
「ともちゃんかっぱやねん。かっぱなあー。いややねんなあー」
 半分しょげて文句たらたらである。
 なんでも、今度の出し物は「そんごくう」らしい。それでともちゃんは「かっぱ」すなわち沙悟浄の役を引き当てたというのである。
「ともちゃん、そんごくうがよかってん。せやけどひとりだけやねん」
「ぶたよりよかったやん」
 と慰めても、ともちゃんの表情は晴れない。
「かっぱのぼうしかぶらなあかんねん」
 仕方がない、私も父親である。息子のへこんだ顔はやはりつらい。
 だから、この日は一日、
「やーい、ともちゃんかっぱー、かわいー、ひひひー」
「かっぱのかっこで、かっぱっぱーとか歌うんやろー、わはははー」
 と精一杯ねぎらいの言葉をかけたおしてやったのであった。
 人生の厳しさを学ぶがよい。


2003年9月30日(火)

 先日、テレビのバラエティ番組で紳助がこんなことを言っていた。
「理想のルックスを手に入れるか、収入が5倍になるか、どちらがよいか」
 出演者の間でも議論になっていたが、これを見ていた我が家でも意見は分かれた。
 私はもちろん、「収入が5倍」である。ルックスに対する不満は多々あるにしても。
 ところがサイは、「理想のルックス」と言う。
「だってモテモテやで。人生変わると思うわ」
 夫も子どももありながら、いまさら何を言い出すのか貴様。
 しかし、真摯な話し合いの結果、最終的に二人の意見は一致を見た。
「収入はそのままで、仕事が5分の1、月曜だけ出勤とか」
 それが、最もよいと言う結論になった。
 こぢんまりした夫婦である。

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