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初めての一杯から最後の一杯まで:私とコーヒーの物語

筆子の昔がたり、あるいは昭和な話。今回はコーヒーについて。

今はコーヒーは全く飲みませんが、25年ぐらいまではよく飲んでいました。コーヒーを積極的に飲んでいたのは、20年間ほどです。

はじめて飲んだコーヒー

コーヒーにまつわる一番最初の思い出は小学校6年生のときのもの。

うちに私の友だちが数人遊びに来たことがありました。そのとき、母がインスタントコーヒーを出してくれたのです。

国産のコーヒーがはじめて発売されたのは1960年の夏ですから、70年代のはじめは、けっこう高かったと思います。

まあ、今も、たとえインスタントでも、コーヒーは安くはありません。

それ以前のコーヒーの記憶がないので、母はふだんは子供にはコーヒーを飲ませていなかったのでしょう。お客様が来たから特別に出してくれたのだと思います。

応接間にいる私達の前に、青い小さな花模様のついたデミタスカップに入れたコーヒーが出されました。

そのコーヒーにはすでにクリープと砂糖が入っていました。

クリープは今もあるのか知りませんが、森永乳業から出ていたコーヒーに入れる白い粉です。乳製品と言えるでしょう。

「クリープを入れないコーヒーなんて」というキャッチフレーズで終わる、芦田伸介さんが出ていたCMがとても有名で、皆、この言葉を知っていました。

考えてみると、昭和40年代は、テレビの影響力が強く、私はテレビコマーシャルによって「コーヒーはとてもいいものだ」と刷り込まれたと思います。

子供のときに刷り込まれると、大人になっても、なかなか洗脳が解けません。

日曜の夜にやっていた、『日曜洋画劇場』で流れるネスカフェのCMにも影響を受けました。

ヨーロッパの人(たぶん)が、毎朝、日常をネスカフェで始めるイメージ先行の美しいCMを、「いいな~」とぼーっとしながら見ていました。

バックにはロバータ・フラックの『やさしく歌って( Killing Me Softly with His Song)』が流れていました。

母の出してくれたコーヒーの話に戻ります。

コーヒーを飲んだ友だちが「甘いね、おいしいね」「ほんとだね」と口々に笑顔で言ったので、何かすごく誇らしく、うれしい気持ちになりました。

そのときの幸せな気分と応接間の空気を今でもよく覚えています。

ブラックコーヒーを飲む友人

次のコーヒーの思い出はずっとあとになって18歳ぐらいのときのエピソード。

高校を卒業して、短大に入ったあと、名古屋の栄地下にある喫茶店(たぶんヒマラヤ)で、久しぶりに高校時代の女友だちに会いました。

そのとき2人ともコーヒーとケーキを頼みましたが、その友人はコーヒーに砂糖もミルクも入れずブラックで飲みました。

「お砂糖入れないの?」
「うん、ブラックのほうがおいしいから」

「かっこいぃ、大人や」、そう思いました。考えてみると、友だちのそのときの服装や立ち居振る舞いはちょっと背伸びをしていたのですが、当時の私にはまぶしく見えました。

その日から私もコーヒーをブラックで飲むようにしました。最初は苦かったのですが、大人になるためにがんばって飲んでいたら、そのうち慣れました。

「どうして、大人になるためにそんなことをがんばったのか? そんなことしなくても勝手に年をとって、またたくまに65歳になると言うのに」。

当時の私に会ったらこう言いたいです。

慣れると今度はブラックでしか飲めなくなりました。

何も入れずに飲むとコーヒーの味がよくわかるので、おいしいコーヒーを求めていろいろな喫茶店に行ったりもしました。

どこの喫茶店でもコーヒーはおいしくいただいていましたが、一度だけ、20代の時勤めていた会社のそばでものすごくまずいコーヒーに出会い、そのときはミルクを入れて飲みました。

会社の話はこちら。

若い頃の私の趣味の1つは喫茶店めぐりで、おいしいコーヒーを求めて、1人でいろいろな喫茶店に行きました。

20代のはじめごろ、YMCAで英語を習っていましたが、クラスメート全員が私がコーヒーを好きなのを知っていて、「筆子は会社をやめて喫茶店を経営するのが夢だ」と思っていました。

今、私がコーヒーを全く飲まないのを知ったら、皆、驚くでしょう。まあ、全員、私のことなんて忘れていると思います。

コーヒーを飲むのをやめた日

37歳になる直前にカナダに留学しましたが、私のコーヒー好きは変わりませんでした。

北米はコーヒーの本場というか、たぶん日本よりコーヒーの消費量が多いです。

今、Cくんに、コーヒーの消費量が多い国を聞いたら、こんな結果でした。

コーヒーの消費量が多い国のトップ10は以下の通りです:

1.フィンランド
2.ノルウェー
3.アイスランド
4.デンマーク
5.オランダ
6.スウェーデン
7.スイス
8.ベルギー
9.ルクセンブルク
10.カナダ

これらの国々は特に北欧や西ヨーロッパの国が多く、コーヒー消費が文化に深く根付いています。

ChatGPT-4

私の話に戻ります。

毎日、コーヒーをたくさん飲んでいたせいでしょうか? ブラックで飲み始めてから20年たったある日、胃がむかむかして、ものすごく気分が悪くなりました。

その頃は、もうカナダにいました。ガソリンスタンドでアルバイトしていた友達が、そこのノベルティー商品の大きなマグでコーヒーを飲んでいるのを見て、いいなと思った私は、そのマグを分けてもらいました。

朝、カフェテリアでマグにコーヒーをたっぷり入れてもらったのを1日中持ち歩き、やたらとコーヒーを飲んでいました。ほとんどカフェイン中毒です。

日本にいるときは、喫茶店や自宅などで休憩タイムにコーヒーを飲んでいたのが、常にコーヒーを携帯して飲む状態になっていたのです。

気持ち悪さの原因はコーヒーのせいに違いない。惰性で飲んでいるところもあったので、スパっとやめました。そして紅茶に切り替えました。

この時、私の人生からコーヒーは退場しました。以来、全然飲んでいません。

カフェインが入った飲料は飲まない


紅茶に切り替えた直後、ティム・ホートン(カナダのコーヒーとドーナツのチェーン)で紅茶と間違えてコーヒーを頼んでしまい、飲んでみたら強すぎて飲めなかった……という話は、すでにブログに書いています。

その時、「こんな強烈な飲み物を20年間も飲んでいたんだ」と唖然としました。

しばらく紅茶を飲んでいましたが、例によって紅茶もがぶがぶ水代わりに飲んでいたらカフェイン中毒のような症状が出たので、このとき紅茶を飲むのをやめました。

以来、紅茶も緑茶もカフェインが入っている飲料は基本、飲みません。

たまに、娘とスターバックスのドライブスルーに行って、抹茶ラテを頼みますが、飲料でカフェインを取るのはこのときぐらいです。

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