設立相次ぐ株式取得型クラウドファンディング事業について
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設立相次ぐ株式取得型クラウドファンディング事業について

藤原弘之 / Hiroyuki Fujiwara

みなさんこんにちは。ゲーマーキャピタリストの藤原です。最近はDQB2にハマっております。

最近、株式取得型クラウドファンディング事業の開始が相次いでいると思いますので、少しこれについて書いてみます。しばしお付き合いください。

株式取得型クラウドファンディング事業とは

未公開企業の株式をプロではない一般投資家に対して募集行為をし販売できるというのは、数年前に法令が変更されたおかげで、ある一定の条件のもとできるようになりました。条件というのは例えば、メール等で勧誘ができない、投資家はWebサイトの掲載情報だけで出資判断、投資家1人が行える1社あたりの出資は年50万円まで、発行体側が行える調達は年1億円まで、などです。

これら一定の条件がありながらも、シードステージへのリスクマネー供給の一手段として、昨今、注目を浴びている手法です。

業界のプレイヤーについて

株式取得型クラウドファンディング事業への参入事業者は私が存じ上げる限り次の通りです。

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急成長を目指してVCファンドからも出資を受けている事業者もあり、一定の評価を得られていると思われます。

なお、ファンディーノのこれまでの成約状況をWebサイトから集計してみましたので、ご参考までに以下に貼り付けておきます。手数料は調達額x20%ですが、3,000万円を超える部分は15%に、同プラットフォームにおける2度目以降の調達は全て15%になるようです。

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株式取得型クラウドファンディングで調達するリスク

発行体側のスタートアップにとって1回の調達案件で平均200名程度のプロではない一般株主が一気に生じるという制度上の特性から、そのスタートアップの次回以降の調達ラウンドで、VCが尻込みするケースが少し出てきているようです。

2019年始時点で、本格的にサービスが動いているのは上表のうち「ファンディーノ」と「エメラダ・エクイティ」ですが、特に普通株で募集するファンディーノについては、多数の普通株主の存在が嫌気され、後続ラウンドにおいてVCからの調達が上手くいかないということがあり各社苦労されているようで、結局、後続ラウンドも同じファンディーノプラットフォーム上で行うという荒技で何とかしのいでいるのが現実ではないかと思います。

実際のオペレーションをイメージしてみても、後続ラウンドでVCが参加する際、200人を超える一般投資家の方々と株主間契約を締結するのはかなりの悪夢です。このあたり、工夫で乗り切ったケースや成功事例などがあったらぜひ教えていただければ嬉しいです。

他方、エメラダ・エクイティは普通株における反省?から、設計に工夫が見られます。まず、有償新株予約権を使うことで、一般投資家はすぐに株主としての権利行使ができないようにし、後続ラウンドでプロVCを安心させています。さらに、一般募集する案件も、エメラダだけが審査するのではなく、既にプロの投資家が付いている案件(あるいは付くことが確定している案件)にのみに限定することで信頼度を上げています。

後続ラウンドのことも考えた非常に誠実な立て付けだと思いますが、今度は事業自体の収益性を成り立たせるのが難しくなり、悩ましいところです。比較的裕福なエリートサラリーマンが投資家としてのメインセグメントだとは言え、有償新株予約権はやはり普通株と比べメジャーではなく、投資家確保に課題が出てきそうですし、審査条件にプロの存在を必須としていることにより募集案件自体が少なくなってしまうので、上記ファンディーノのような手数料収入も期待できません。

今後への期待

これまで紹介した2社以外にも、今後サービスが開始されていく株式取得型クラウドファンディング事業がどのようなスキームを採用するのかは分かりませんが、しっかりと後続の調達ラウンドが通せるようなスキームなり活動なりをされることを期待しています。

確かにシードステージへの出資がまだまだ少ないという課題の解決に、株式取得型クラウドファンディングは有効な手立てではありますが、あるスキームで調達したスタートアップが後続ラウンドで立ちゆかなくなることが初めからある程度分かっている状況において、そのスキームでひたすら調達させまくるような状況は好ましくありません。

そもそもシード投資をしたいのであれば、自らがGPとなって足繁く機関投資家や事業会社巡りをしてLP出資者を募り、シードスタートアップに投資しまくるVCファンドを組成すればよいはずです。言い方は悪いかも知れませんが、プロは投資しないようなスタートアップと、得られる情報に一定の制限がある一般投資家とを無理矢理Webサイトだけでマッチングさせて20%にも及ぶ寺銭を吸い上げようとすることが本当に正しいのか、というと疑問が残ると思います。(金融庁ご指定の制度がそういう制度なんだから仕方ないじゃないかという話ではあることも理解はできます)

もちろん、これから株式取得型クラウドファンディング事業をスタートする方々は、その辺りは十分すぎるくらい考え抜かれていると思いますし、そもそも彼ら自身がVCから資金調達をするスタートアップでもあり、走りながらの試行錯誤も続くでしょうから、同じスタートアップ投資に関わる業界人として、リスクマネー供給のエコシステムが盛り上がるように頑張っていただければと期待しています。(本当です)

それならお前がファンド作ってシード投資やれよって話であり、ご指摘はその通りなのですが、膝に矢を受けてしまってな・・・

----- 2021/10/10追記 -----
現在では様々なECF事業者さんが、後続のVCラウンドでプロが尻込みしないような仕組みを工夫され実施されています。当記事は2019年2月(Facebookに投稿したのが2018年12月)の執筆当時の状況を元に記載している点を予めご了承ください。

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藤原弘之 / Hiroyuki Fujiwara

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藤原弘之 / Hiroyuki Fujiwara
エンジニア出身。外資系大企業時代に通ったMBAを機にスタートアップの世界へ。M&A Exitを含みStartupは都合3社経験しつつCVCで投資も。今はまたスタートアップ投資やM&A、VCへのLP投資など。FC東京SOCIO15年目ビッグフレームス。工学部卒/経営学修士。