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イークラウドが業界への懸念を払拭、VC調達も見越した新しい株式投資型クラウドファンディングとは?

皆さんこんにちは。藤原です。今回のスタートアップ取材記事は株式投資型クラウドファンディング事業(長いので以降『ECF』と呼称します)を展開するイークラウド株式会社を取り上げます。

イークラウドはECFが孕む様々な問題点や課題を予め解決してから同事業を開始したスタートアップです。彼らは2020年夏に第1号案件を公開し、ECFプラットフォーム事業を本格稼働させたことが記憶に新しいところです。

今回、イークラウド代表の波多江さんにその辺りのお話を伺うことができましたので、ぜひご一読ください。イークラウドはいいぞ。

この記事の登場人物

イークラウド株式会社 代表取締役社長 波多江 直彦氏
藤原 弘之(質問内容を太字で記載)

ECF事業立ち上げ時のファイナンス

今日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。

実は僕も前職時代、2018年頃ですが、ECF事業自体に興味があって、新規事業として少しだけ検討したことがあったんですが、やっぱりネットビジネスみたいにお手軽には始められないというか、所謂スタートアップ的な始め方はできない事業ですよね。波多江さんは、どういう方針でこのECF事業を始めようと思われたんですか?
確かにお手軽には始められない事業です。しかも当時は少し前にコインチェックさんの事件があったりして、内部管理体制やコンプライアンスへの取り組み方について、スタートアップの世界でもいろいろと課題が出たという時期でした。僕たちは金融業をやる上での心構えもそうですし、心構えだけではなくて、体制面もしっかりとしたものをちゃんと構築してから進めなければならないと思っていました。

後々社会問題になったら大変ですもんね。
そうなったら起業家も困りますし、個人投資家にも大損させてしまいます。当初数年間は良くても、そこから先に業界として継続的な発展が見込めなくなってしまう。そうならないように、初めから金融機関とガッツリ手を組んで、僕らに足りない部分は彼らから支援を受ける形でやっていこうというのが、当時のファイナンスの方針ですね。

なるほど。それで大和証券グループさんと。
VCまわりはせずに金融機関だけに当たりました。その中で僕らの構想に対して興味を持っていただいたのが大和証券グループさんでした。イークラウドを創業したのが2018年7月で、同年11月に着金して4億円の増資の発表という流れです。

早いですね。大和さんの思惑はどういうものだったんでしょう?
大和さんは上場株式の売買でシニアな資産家の方々を投資家として抱えているのが彼らの強みです。ただ、これからはもっと若返りに取り組んで、新しいFinTechサービスを創っていきたいと思われていたようです。特にクラウドファンディングの将来性については高く評価してくださっていたので、お互いの思いが合致したというところかと思います。

確かに大和さんってスタートアップに対してフレンドリーというか敷居が低いというか(笑)、丸尾さん(*)も偉い人なのにものすごくフレンドリーですよね。
確かに(笑)。丸尾さんとはよくお話しさせてもらって、昨今の金融業界の動向とか、かなり勉強させていただいていますよ。

(*) 大和証券株式会社 専務取締役 企業公開担当の丸尾浩一さんのこと。僕もお目にかかったことがありますが、役員でありながら非常にアクティブにスタートアップと関わっていらっしゃいます。(下記リンク参照)
https://media.startup-db.com/interview/daiwa-maruo

2018年7月に創業してから、この前の第1号案件まで、結構時間がかかっていますが、それはやはり認可のところで時間が?
正確に言うと金融商品取引業への業登録なんですが、金融庁関東財務局に対して届出を提出してから認めてもらうまで結構時間がかかりました。過去には2〜3年くらいかかっている会社もあります。僕らはだいたい1年半くらいだったので何とか合格点といったところですけど、本音を言うと最短記録を出したかったです。

どうしてそんなにも時間がかかるものなんでしょう?
新しいことを始めるので、しっかりとした体制であったり、社内のルールがちゃんと整えられているかということを厳しく見られます。全ての事に対して、なぜそうなっているのか説明を求められるんです。そこが結構大変でした。業登録に必要となる経験のある人材も、そんなに簡単に採用できないですしね。

要件を満たす方がいたとしても、御社は金融業というお堅い業界ではあるものの、スタートアップでもありますよね。その辺のフィット感も。
そこはめちゃくちゃ重要なので面接ではかなり重点的に確認しています。ITに対する素養というか、ITサービスへの向き合い方ですね。ウチの管理部長は60歳前後でかなりシニアですけど、インスタを使いこなしていますし、その辺りは単に証券会社の経験だけで採用してはいけない部分ですね。

ECF業界に対する懸念とそれに対する回答

ECF企業の社長を前にして申し訳ないのですが、実は僕のnoteでECFに対する割とネガティブな記事を書いたことがあったんです。結構古い記事で、初稿は僕のFacebookに2018年末に書いたもので、noteには2019年2月に転載した記事なんですが。(下記リンク参照)

ちょっと拝見してよいですか。。。読みました。超、的確なご指摘でした。
事業構想段階の時に、相談に行けばよかったです(笑)

いやいや、お恥ずかしい。先日ご一緒したWebinaでも思ったんですが、イークラウドがECFに対する懸念点を予め解決してからこの事業を始められた初のケースだと思うのですが、起業当初からここが問題点だろうと分かって始められたんですか?
いえ、当初は「何か嫌がられてるなぁ」というのを薄々感じていたくらいです。何に対して嫌がられているかというと、1回の資金調達で200人ほどになる普通株主が生じることに対してなんですが、それを要素分解して『具体的に何が懸念点になっているのか?』をちゃんと分析している人はまだいなかったです。

それをちゃんと整理しようと。
その結果、以前のWebinarでお話しした3点に集約されるだろうと。要するに『(1) 好ましくない属性の方々が紛れ込まないか』『(2) 株主間契約みたいなものが存在しないから契約関連でスタックする』『(3) 株主総会の運営などの手続きが大変になりそう』の3つですね。

これらを解決されてから事業を始められたのは誠実だと思いました。最近は変わってきていますが、少し前までの論調として「VC/CVCがこれだけいる中、どうしてECFで調達したんだけっけ?良い案件だったらプロが出資しますよね?」というような指摘についてはどう思われますか?
まずECFは調達手段の1つに過ぎないと思っています。僕らもこれが万能だとは思っていなくて、あくまで1億円まで個人投資家から集められる手法であるということで、他の資金調達手段との「or」で選ぶのではなく、「and」として適切に組み合わせて調達していただけたらと思っています。例えば優れた経営者はEquityだけではなくDebtも組み合わせて活用しますよね。それと同じで、ステージに応じてうまく使い分けて組み合わせて欲しいと思っています。

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その為には、それぞれの資金調達手段の特性をスタートアップがよく理解する必要がありますね。
いつ、どの手段を、どう使っていくのが良いのか、その辺りをしっかりと僕らも啓蒙していきたいと思っています。確かに少し前まではVCやCVCなどのプロから断られて断られて、仕方なくECFに流れ着いた、みたいな風潮がありましたけど、もうそうではないんだということを、僕らが今後リリースする投資案件によって示していきたいと思っています。

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第1号案件について

そんな中で先日、第1号案件が目標達成してクローズされた訳ですが、ご感想はいかがですか?
1件目から目標を達成しないというのはさすがにあり得ないので、正直ホッとしています(笑)。調達金額についても、希薄化も考慮しての上限に達することができました。投資家の皆さんの期待の高さを感じますね。

具体的にはどういうスタートアップなんですか?
地元カンパニーという、全国の名産品をカタログギフトで送れるサービスを展開している会社です。(下記リンク参照)

これがそのカタログなんですが、1つの商品が1枚のカード形式になっていて、冊子になっていないんですよ。

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ホントですね。カタログギフトって製本されているイメージでしたが、確かに冊子になっている必要はなくて、こうなっていても良いですもんね。
これだと贈る方が柔軟に中身をカスタマイズできます。これは長野県のカタログギフトの例なんですが、例えば長野県と千葉県のギフトを組み合わせて贈る、みたいなことも簡単にできるんです。もちろんオンラインギフトも対応できますが、この形が結構喜ばれるようです。

それぞれのカードに生産者が載ってますね。
裏にストーリーも付けているので、その生産者・商品それぞれのストーリーも一緒に楽しんでもらって、いろんな地元を感じてもらえたらと。

典型的な東京のスタートアップみたいなところではないですが、第1号案件として戦略的にそうしようと?
確かに、カタログ販売のITシステムがしっかり作り込まれているのはありますけど、所謂バーティカルSaaS!みたいなのでないのは確かです(笑)。僕がイークラウドでやりたい構想というのは、全国の支援者を集めてスタートアップに資金を循環させていく流れを構造的に創っていくことです。地元カンパニーがやっているビジネスはそこと根底が同じです。例えば福岡の人が北海道の生産者の商品をギフトとして東京の人に贈るみたいなことですね。そういうつながりを大切にしているところに、僕らと通じるものがあると思います。

今後の展望

なるほど。これから第2号案件、第3号案件と続いていく訳ですが、展望をお聞かせいただけますか。
第1号案件はご祝儀的な側面も否めないと思いますので、第2号案件からはもっと難易度が上がるだろうと、気を引き締めています。幸い今回の第1号案件によって組織力が向上しましたし、個人投資家の反応から新たに分かったことも多々あったので、そういったことを活かして取り組んでいきます。

投資家の属性に特徴ってあるんですか?
ご登録いただいた投資家の最初の100名は確かに大企業の重役の方であったり、年収が1,000万円以上の方だったり、あとスタートアップ経営者の方が多かったんですが、実は今回の案件によって、地方公務員の方が増えました。地元を盛り上げるという意味で株主になっていただけたので、一気に投資家層の裾野が広がった感じです。そういう意味では、投資案件が新しい個人投資家を連れてきてくれることもあるんだなと驚いています。

それは面白いですね。イークラウドさんの次の案件も楽しみにしています。
ぜひ楽しみにしていてください。僕らが今後並べる投資案件のリストがECFのブランドを創り、スタートアップ経営者の方にECFを使ってみたいと思ってもらえる流れにつながると思っています。そして数年後にはM&AやIPOといったExit実績が創れるように頑張って行きます。

期待しています。今日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました!

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イークラウド株式会社について

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イークラウド株式会社は、金融・IT・ベンチャーキャピタルで培ってきた経験・ノウハウを融合した、ECFプラットフォーム「イークラウド」を開発・運営する気鋭のスタートアップです。一般投資家に対しては、これまで限定的だったベンチャー投資に関する情報と機会を、起業家に対しては、従来の銀行やVC/CVCなどに加え新たな資金調達の手段を提供しています。2018年7月に創業。2018年11月には大和証券グループ本社の子会社であるFintertech(フィンターテック)より約4億円を資金調達しました。

イークラウドのECF第1号投資案件は目標上限額を達成しました。これからも魅力的なスタートアップがどんどん登場すると思いますので、スタートアップ投資に興味のある方はぜひ下記Webサイトにアクセスしてみてください。


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