見出し画像

fuco:の暮らし「パーツ」の見つけ方

今でも忘れられないのですが、言語療法の先生に「fuco:ちゃんは修学旅行のしおりを見て、ここ行った、あそこも行ったと楽しむタイプのお子さんですね」と言われました。

当時はピンとこなかったのですが、すること自体を楽しむというより、TO DO リストを終える毎にチェックしていくのが嬉しいタイプってこと。ということは、1日を埋めるパーツが沢山必要で、それらを見つけていくことは本当に難しかったです!!(fuco:は知的レベルが3歳くらいの重度自閉症)


幼児期、彼女の遊び方

遊具やおもちゃを使うことはできる、だけど自分で楽しむということはなかったです。何が好きなのかもいまいちわかりません。そして何もしない時間というのが、どうしていいかわからずとても苦痛。そんな子でした。

とにかくまが持たないので公園もよく行ったし、夏は多い時は週5回プール、川、海にいました(日焼けしすぎて初対面の人に「いつもどこで波乗ってます?」と聞かれたことも…)。勿論1人で3人の子供を連れていくのは大変だし、自分が楽しくないと辛いので、いつも友達たちとワイワイ行きましたね。

水はいつでもサイコー
吉野川の激流でラフティングも経験、
スリリングは大好きな彼女


そして冬は温泉。できればスーパー銭湯的ないろんな種類がある温泉のほうがいいです。家で暇すぎて、パニクられるぐらいなら、どこにでも連れていく!頑張りました。

(ちなみに好きな「水」をいかして、今もプールや温泉は行っています)



「遊ぶこと」も教えていく必要がある

彼女が最初にハマった遊びはパズル。2歳の頃には80ピースくらいできました。自閉症の人は目で見る情報に強いので、パズルは得意な人が多いです。

今は1000ピースを3時間で完成。
誕生日には新しいパズルをプレゼント


他にはアンパンマンの人形を横一列にきちんと並べたり、アニメのセリフを人形持って繰り返したり(自閉症らしい遊び方!)、楽器屋のドラムセットを叩くのが好きで、おもちゃのドラムセットも買ったことも。

アイロンビーズもしたし、床にマットを敷いて、療育の時に好きだったトランポリンも置きました。その時々でハマったものもあったと思います。

でも、そんなには続かないのです…手探りでいろんな「遊び」を試しながら教えていきました(彼女はゲームも塗り絵もハマらなかったし、うまくいかなかったモノの方が多し…)。


刺し子にハマったわけ

そんな時に小学校の先生が教えてくれたのが刺し子です。下にガイドラインがあるので、どこを縫えばいいかわかりやすかったようです。ただ、細かな糸の処理は難しかったので、1人でできるように始めと終わりは少し長めに糸を残すように教えました。100枚とかもっと縫ったんじゃないでしょうか。

本当に毎日毎日してました!


今でこそ百均にも簡単なのがあったりしますが、当時はどこにでもはなかったので、デパートで新しい柄を見つけては、実家の親がせっせと送ってくれました。刺子はスペースをとらずにできるし、旅行にも持って行けました。というわけで、刺し子はしばらく続いたのです。



ピアノを弾けるようになるまで

そして小6の12月からピアノを始めます。もともと幼稚園の課外レッスンで、妹が習っていて、そのうち3歳になったばかりの弟も始めます。その後他の自閉症の子も習い始めたと聞いたので、「先生、もう1人…(この後私も習い始めもう2人になりましたが)」とお願いしたのが始まりです。

先生は特別にではなく、できるだけ他の子たちと同じように教えてくださっていると思います。違うのは音は全て色(赤ならド、黄色ならレ、緑ならミなど)を塗り、指も決まった番号(親指が1、人差し指が2など)を必要なところに書くこと。

彼女は何かを視認するスピードがとても速いので、こうしておくことでより瞬間的に理解できます。すぐに両手で演奏できたので、12月に習い始めて3月の発表会のステージには立っていました。

発表会は毎年家族総出の大イベント!


そのうち私と一緒に連弾を始めます(子供の頃に習っていてよかった!)。これはとても上手くいきます。彼女は音楽を演奏するというより、楽譜を読み解きながら音を出すのですが、そうするとまるで本を読むようにどんどん先に進みたいわけです。でもそうすると、音楽としては全く違うものになってしまう。

でも連弾なら、目で見る情報、楽譜どうりに弾きたいので、伴奏のこの音が出てから自分のこの音が出るという風に弾きます。自分勝手に進めることはできません。

色がついたのが彼女パート、下が伴奏の母


先生とよく話すのですが、きっと彼女はオーケストラのスコア譜(全ての楽器の楽譜が書いてあるもの)も読めるくらい、一度に視覚情報を得るのに優れています。

他にも聴覚過敏なぐらい耳がいいというのも、ピアノを始めてみると強みになりました。心地いい響きとそうでないものの区別ができるので、間違えるとすぐに気づきます。

逆に理解しにくいことで言うと、優しくとか華やかにとか曲調の違いです。彼女が演奏すると、全て行進曲のように明るくて賑やかな曲になります(ショパン別れの曲の明るさには笑った)。やはり概念的な目に見えないものは難しいのだなと思います。

その曲を知ってるかどうか、曲の長さなどは気にしません。とにかく楽譜を読み弾くのです!


例えば、卵を優しく扱うのは「割れないように」と想像できるんですけど、音を優しくってイメージできないじゃないですか。でもそれなら、彼女の弾き方に合う曲を選べばいいのです。明るくてスピード感もあってという曲。リズムも苦手なものがあるので、それも含めて選曲が肝です!



家事もスケジュールを埋めるパーツ


余暇だけでうまらないパーツには家事も入れました。最初に教えたのは、水遊びが好きだったから風呂掃除。冷たいから嫌だなと思わせないよう、水が気持ちいい夏に始めました。「綺麗に」なっているかどうかは別にして、今でも決してめんどくさがることなくしてくれます。

ヘルパーさんが彼女のために来てくれるようになると、一対一で家事も教えてもらいました。掃除機をかける、タオルを畳む、アイロンをかける、料理をするなどなど。

どんな時も文句言わずしてくれるというのが、
彼女の強み!大事!


掃除機はかけれるんですけど、動きが早すぎて柱とかにガンガンぶつけるので、いろんなものが壊れそうで今は卒業。タオルはその後畳むものをハンカチやパジャマなどに増やしています。アイロンは本人は危険ではないと思いますが、服が危険で終了(笑)。

余暇でも家事でもですが、その後継続できるものは、1人で自立してできるかどうか。誰かと一緒でないとできないというものばかりだと続きません。



調理を教える時のコツとツボ

調理は毎回私が1から手順書を作りました。料理の工程は、彼女にわかりやすいように分解すればいいわけです。

例えば、野菜を切る時にはまず形や大きさを見本を示すとできます。「肉の色が変わるまで炒める」というのは曖昧な表現なので難しく、「肉を炒める⑤(タイマー5分の意味)」と書きます。

料理は手堅くアプリからレシピをもらい、簡単にしていきます。料理は基本面倒な母…


ヘルパーさん用のスケジュールと手順書も
毎回作成


カレーを作る時はまず準備物を揃えます。人参1本、ジャガイモ2つ、お肉、炒めた玉ねぎ(あらかじめ作っておくと早いので)、カレーのルーといった具合に。

そこから「野菜を切る、肉を炒める、水を入れる、カレーを入れる」をタイマーで時間を提示しながら続きます。そうしておくと、多分fuco:からしたら、「はいはい」って感じなんだと思います。

いろんなメニューを試したので、発見も多くありました。肉類は生の触感が気持ち悪くて嫌だから、触らなくていいようにカットしてあるものを使いました。炒める時も油が跳ねたりすると怖がって、「助けて〜」とヘルパーさんに変わります。姫気質なところあるので(笑)。

ソーセージ入りパンとホットケーキの図、
よくできました!


面白かったのはものによって、どうやら野菜か草かた区別が難しいこと。セロリとかって調理した状態でしか見ていなかったので、生だと草と思うらしく料理に入れるの嫌がります。絵本に出てくるようなジャガイモとか大根、人参などは信用していました。なるほど!です。

(ちなみに現在は調理はしていません。母が手順書を作るのが大変すぎるからです…やはり準備が大変だったり、自立度が低いものは続きません)



できるようになったことを活かす

ピアノが弾けるようになったら、学校の文化祭などで演奏させていただきました。それまで皆んなみたいに踊ったり、セリフを言ったりできなかったので、彼女にとっては何もしない日だったのですが、ピアノを演奏することで役割のある日に変わりました。

結婚のお祝いに結婚行進曲を弾いたある日


調理すると妹や弟はおいしいと喜んだし(デザートもついたから)、卒業や転校、お礼をする時はいつもクッキーを焼きました。 

地域の小学校卒業式では、同級生先生たち合わせて100人弱に、2週間くらいかけてせっせと焼いては冷凍し、配りました。これは歴史的偉業でしたね、今はもうそんなエネルギー全くないです(笑)。

本人が好きなのは型抜きと、袋詰め
小学校卒業式は中に飴を砕いて入れ、ステンドグラスみたいにしました(笑)大変すぎた!


できることで喜んでもらうことは、本人のモチベーションにつながりますし、言葉で会話をできない彼女にとって、コミュニケーションツールになったと思います。

こうやって、彼女の生活パーツは少しずつ少しずつ増えていきます。続いたり、好きそうだったのは「どうすればいいか本人にわかりやすいもの、終わりや完成形がはっきりわかるもの、1人で自立してできるもの」

しかし「遊びも教えなければいけない、本人の出来る芽(こうやったらできそう)を見極めなくてはいけないこと」はとても難しかったです。自閉症って全く違う独特の感性や感覚を持っているんですよね。

そして飽きないように、常に新しいものも増やしていくのですが、ある日そこに唐突にアートが加わります。

この始まりと広がりにもコツが!


次回はこの話から…毎月1.15日はnoteの日。次回は2/1更新です。


yasuco:


#自閉症 #知的障害 #アート








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?