自閉症fuco:展覧会から考える「関係する」って?
今年も佐賀県主催、障害のある作家たちの関係するアート展が開かれています。こちら毎回1万人という来場者がある、この分野では全国的にも異例の展覧会です。
fuco:はその第1回(今年4回目)に展示していただきました。この「関係する」というワードは数値化できず目に見えませんが、つくづくとても秀逸だと思っています。
今回は出展した作家の家族として、私たちが実感してきた「関係していくこと」について書いてみたいと思います。それはもう些細なことから広がり、とてつもなく力強いです!!
2021年「関係するアート展」に出展した、10メートル作品がうまれるまで
2016年学校に行けなくなった彼女が、あまりに暇だった時に母が「マルでも描いたら」と何気なく紙とペンを渡して、ある日彼女は絵を描き始めます。家族としては暇がつぶれたらそれでよかったのですが、幸運なことに作品を出展する機会がすぐに訪れます。
放課後等デイサービスでお世話になっていた事業所に、佐賀県障がい者芸術文化活動支援センターSANCがあり、作品展を時々されていたからです。
そのうち私は画材屋さんの丈夫な紙や豊富なカラーバリエーションのペンも買い与え、ますますfuco:は描くようになります。
そんな時に私は自分の仕事でラジオに出演。ディレクターさんと色々話をしていたら、「じゃ、今度アートで(富永)ボンドさんの番組にも出たらいいよ」と別番組に呼んでいただいたのです(神がかり棚ぼた!)。
ボンドさんに「どんどん描くのでおっきな紙が欲しいんですよ」と番組内でいうと、「ロール紙がいいんじゃない?」と教えていただき、すぐ画材やさんに発注。
それがあの10メートルの紙なんですね。意気揚々と描き始めます!私もしばらく紙を買いに行かなくてよくて、本当に助かりました(笑)。
そして彼女が描いていることを知る原田さん(関係するアート展企画担当PICFA施設長)から、「絵ださない?」とある日電話がかかってくるのです!
いくつもの「〇〇な関係」がなかったら生まれなかった作品
障害のある人の制作活動は自発的に生まれはするかもしれないけれど、持続させたり、世に出していくのは当事者だけでは難しいです(それは障害のある人の暮らしも同様)。そこには何らかの「関係性」が必要になってきます。
(親が描いたらと言う、画材を買ってくる、SANCから展示する機会を提供してもらう、こんな紙があるとボンドさんに教えてもらう、作品を落ち着いて集中して描ける日常を支えてくださる事業所の方がいる、出展をと声をかけてもらう)
fuco:もたくさんの関係性の点が線となり、この作品ができ、仰々しくこの時にガラスケースの中に飾られたわけです!
そこに垣間見えるモノやヒトとの関係一つ一つのなんと肯定的で熱いこと!私思うんですが、それって間違いなく「愛」ですよ。
4回目関係するアート展で感じた、育まれてきた関係!!
先日この関係するアート展オープニングに伺った時、たくさんの方に声をかけていただきました。改めてしみじみ関係ができたこと、それがしっかり育まれて今に至っていることに感激しました。
その時に同席した何人か(沢山書きたい人はいたのですがすみません!)との、アート分野での極めて私的な関係性の育みについて、具体的に書いてみようと思います。
彼女のアート活動、全てはSANCから始まりました!
アートと無縁の生活をしていたので、訪デーと同じ事業所内になかったら、まず作品として出してなかったです(笑)。SANCのアトリエも歩いてすぐの場所にあるのですが、あと数百メートル遠かったら行ってなかったです(笑)。毎日の生活でいっぱいいっぱいだったので…
SANCでは作品を出展していただくだけでなく、大学生とワークショップしたり、自宅では使えない画材を使わせていただいたり。彼女はこの場所で誰かと描く楽しさも育ませていただきました。
途中から個人として活動をしていこうと決めたので、スタッフの方に無理難題相談もしたし、非常に非常にお世話になってですね、今も足はアトリエの方に決して向けないで寝ています(笑)。
PICFAまるっといつも関係していただいてます!
何かと先進的なことをされている医療法人清明会障害福祉サービス事業所PICFA。
こちらもSANCイベントで出会い、それからイベントに伺うだけでなく、遠方からのお客さんをいつも案内し、わからないことがあれば教えてもらい、メンバーやスタッフの方と何かと仲良くしていただいています。
私もPICFAの作家さんに個人的推しがいます。それは作品だけでなく、その方達の人生も含めた推し!私たちはファンですと応援していただくこともあれば、同じように好きになって応援している人たちもいます。いつもお互いに気になる存在ってわけですね。
アイディアマンでハートが男前なしまちゃん
しまちゃんは5年前?、私たちが初めてグッズを作ったSANCイベントで、会場設営をしていたデザイナー。何がやりたいか全くわからない、そんな時に出会ってます。
私たちのようなド素人が何かを作ったり、活動すると、常に途方にくれた状態です。しまちゃんはいつも嫌な顔もせず相談にのってくれた人でした。
どうしてそっから親しくなったのかは謎ですが(笑)、個展をした時にはチラシや看板、シール、カードセットのデザインもまるっと依頼。「こうやったら絶対面白いと思うんやけど」ってよく言います(笑)。
デザインの提案だけでなく、「fuco:が将来こうなったら良くない?」目線で常に考えてくれます。私たちもしまちゃんの幸せのためなら、今後いつでもどこまでも飛んでいきたいと思ってます!
そしてよし君は世界最強株式会社の社長になった!
よし君はfuco:と同じ支援学校の一年後輩。在学中は親子ともにあまり接点はなかったけど、卒業後アート活動を通じて徐々に親しくなりました。
とにかくユニークで楽しい青年です!パフォーマーでもあり、いつもよし君がいるだけで笑顔になれます。
お母さんが事業所と家庭だけでない何かを探されていた時に、私が紹介したのが「しまちゃん」で、二人はまず名刺をつくったようです。
よし君がずっとつくりたかった世界最強株式会社社長の名刺!しまちゃんがきっと何度もよし君の話をちゃんと聞いて、「最高やね!面白いね!」と言ってできたんだと思います。名刺ができて、今やもう社長絶好調ですよ!
fuco:、よし君、すずちゃんはこの数年ユニットでステージパフォーマンスもしていて、この夏は作品展示だけでなく、ワークショップもします。よし君は「悩みを笑いに変える社長の薔薇色相談コーナー」、fuco:は「必殺パズル塾」。えぇ、いつも通り大真面目にね(笑)。
アート靴下から関係を広げてくださる山口知事!
fuco:が関係するアート展にでた時、初めてお会いしました。その後、私たちは地元佐賀のデザイナーや靴下メーカーとゼロから靴下をつくり、県庁を表敬訪問。
この靴下はその年佐賀県内特別支援学校高等部を卒業した全ての人に、クラファンを通して寄贈しています。
だから知事に履いてほしかった、晴れがましい場所で知事が履いているところを彼らが見たらどんなに嬉しいだろう、自分たちに想いを寄せる身近なヒトと思えるだろうと考えたからです。実際本当によく履いてくださっていて、今年の展覧会オープニングでもでした!
身近な「関係性」がきっとどこまでも連れてってくれる
歳をとっていく、小さな子供がいる、障害がある家族がいる、健康でない、孤独、誰だって何かしらちょっとした凹なところがあるから、お互いに少しだけ想いを寄せ合う(それこそ関係性)のは自然なこと。障害があるかどうか、そんなに構えなくてもよかったんじゃないかと最近私は思います。
出かけてみると社会も周りも、自分たちが思うより向こうはすでに関係する準備もできていたんですよ。「何かあれば言ってよ!」ってなってるとこ沢山ありました。
障害があってもなくても、時にちょっと勇気を出して「関係していくこと」は人生をいつも広げてくれたんです。お互いに。
追記として、この関係するアート展の主催である県庁文化課の緒方さん、ヘラルボニーでいつもお世話になってる社員さんたち、実はfuco:と同年代の方々です。
皆さんが深い気遣いと思いやりで、「より良き未来」に泥臭いくらいひたむきに向かっている姿にいつも励まされます!想いあえる未来はきっと明るいのだと思います!!!
いつも長文読んでいただき、ありがとうございます。また次回8/15にお会いしましょう。
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