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自閉症fuco:の聴覚過敏とイヤーマフオフのチャレンジ!

fuco:は小学生の頃から顔の一部になる程(笑)当たり前に、イヤーマフをつけています。街を歩いていておばさまに「あら素敵なヘッドホンね、私も欲しいわ」と言われることも、レジャー施設などで外すことを求められることもありますが、ある自閉症の人たちにとって、とても大切なものです。

今彼女はこの長年使い続けてきたイヤーマフを、外すチャレンジをしていて、家族としても感じたことがあったので、今回は聴覚過敏とこのチャレンジについて書いてみたいと思います。



聴覚障害は発達障害の人に多い感覚過敏の一つ

自閉症を含めた発達障害の人は、その脳のつくりの特性上、聴覚を含めた感覚の過敏さが強い人がいます。日常生活に支障をきたすことがあり、その軽減の一つとしてイヤーマフはあります(一方鈍いところもあり、fuco:は痛みや疲れに鈍いです)。

分厚いものを使っていたこともありました


我が家にはfuco:以外にも聴覚過敏がある人がいますが、例えば学校で友達と話そうとしても、音の大小関係なく、隣のクラスの音、クーラーの音、紙をめくる音、人の声が同じように一斉に耳に入ってきて、友達の声は聞きとれないし、頭が割れそうになるくらいに苦しいそうです。

イヤーマフは自閉症の支援グッズとしてだけではなく、元々高音量の騒音にさらされる人(工事現場や射撃、モータースポーツなど)の耳を守るために使用。防音効果が高いことから、近年聴覚に過敏さがある人たちが、自分を守るツールとして使用されているそうです。つけていたからといって、周りの音が全く聞こえない訳ではなく、分厚いものだと水の中に潜った感じだなと私は感じました。


fuco:の聴覚過敏とイヤーマフ


fuco:も小さな頃から、聞こえ難い音を拾って父親の帰宅がわかったりしてたので、聴覚過敏があるんだろうと思っていました。それでも実は、親としてイヤーマフの装着はすぐ受け入れられませんでした。それは見た目があまりにも目立つから…イヤーマフをすると改めて「障害があります!」というようで勇気がいりました。

だから、必要だけど使用してないという子も実際はもっと多いのではと思います。私も今なら小さなこと気にしていたなぁと思うのですが、障害を受け入れるなんて、そう簡単にできやしないのです。

fuco:は結局、療育機関の先生の強い勧めで、着脱の見通しも提示してもらいながら使用を始めました。その後は音が誘発するてんかん発作も始まり、欠かせなくなっていきます。

当時イヤーマフをあの時使い始めたことは
彼女にとっては有効でした!


てんかん発作が初めて出たのは、6年生で運動会鼓笛隊の練習をしていた時期。彼女はお腹に響くような重低音が苦手です。暑い中、鼓笛隊で太鼓の近くで行進をするのはよほどこたえたのだと思います。夜中に白目を剥いて硬直し、激しく痙攣することが何度もありました。

同じくダメだなと感じたのが花火の打ち上げ。好きなんだけど、場所によってはストレスがかかって一晩中全く寝なかったりするので、こっちもいつ痙攣始まるか気が気ではないです…てんかんが始まると家族も音について敏感になり、映画もしばらく行けませんでしたね。


敏感さを能力と感じたことで始めたピアノ


ただ小さな頃から絶対音感がある(聴いただけで音階もわかる)と思っていて、好きな曲も歌い手が変わるとパニックを起こすほど。聴覚の敏感さはマイナスだけでなく、プラスでもあるのかもと思いあたったのがピアノを始めたきっかけです。

ピアノが弾けることも
行ける場が広がるキッカケに
音楽とは本来心地よい響きが
鳴るようにつくられています!


彼女は音程が合っているか、作曲された曲が正しく演奏されているか、細かく感じとれます。正しくないと響きが濁ったり、不協和音となります。更に譜面という視覚情報にもとても強かったので、優れた目と耳のおかげで、重い知的障害がありつつも彼女はピアノを演奏することができています。

fuco:とはクラシックコンサートも行くのですが、弦楽器や金管楽器は音程が定まりにくいのでアマチュアだと辛いなとか、ピアノはある程度調律されていて音程がずれないからいいなとか、みていて面白いです。

演奏を聴いて感動し、涙を流していたこともありました(SAXの須川展也さんの演奏!)。過敏で繊細で、だからいつも本物がわかる人なんです。



イヤーマフを外そうと思ったきっかけ


そうやって、過敏さとも繊細さとも付き合いつつ、イヤーマフを使い続けて10数年。もうこうやって彼女の一部になっていくんだと思っていました。が、ある時、ある人と話していて「外す」というワードが出てきて???!!!!

そのうちタイムリーに耳が赤くなってきて、家族に病院行ったがいいとか外した方がと言われてですね…病院がまた大変な騒ぎになるのですよ、特に耳!できれば少し外してみようと思ったのが、イヤーマフオフへの第一歩です。22歳春か夏。

耳はどうしても蒸れますよね…
耳鼻科治療困難で全身麻酔の経験あり…


ただ、この時つけ始めから大きく変わっていたことがいくつかありました。一つはてんかん発作がなくなり、治療終了したこと。それに伴い、人生初一人で寝るようになり(夜間発作だったので)精神的自立が始まっていたこと。もう一つが妹や弟が高校生になり、家庭が静かになっていたこと。音楽を聴くのが何よりも好きなど、活動の好みや意思表示がはっきりしてきたこと。今なら外せそうだと思いました!


外していく過程で心がけたこと

イヤーマフは彼女にとって安心できるアイテムなのは間違いありません。だから慎重に、なくても大丈夫そうな場面から外そうと考えました。気分が良くて、楽しい時間、何かに夢中になっている時間。静かな場所から徐々に。

外した時も我慢でなく、音が気になるならヘッドホンで大好きな音楽を聴けたらいいと、イヤホンは有線と無線のもの2種、今までのiPodとも違う音楽再生用スマホを用意しました。これを場面に応じて自分で選べるのが目標です。自らそれを選択するのはかなりハイレベルですが、それもいつかはね!!



具体的にイヤーマフを外していく段階


まずは夕飯を食べてから起床まで外してみました。その頃決まって夜に夢中で絵を描いていたからです。あと寝る時も衛生的には外したかったのでこれは流れで。この時点でその他で外しているのは、週2回の温泉、週1回プール、美容院、歯医者。そこから約一年は変化なし(母のやる気は時々発動するので)…

今まで妹弟が夕食後わちゃちゃしてましたが、
随分落ち着いてきた我が家です


一年たって見直した時に、彼女のルーティンになっているスケジュールで、外せそうなところがまだありました。まず家でノリノリで音楽聴きながら刺繍している時

とはいえ、刺繍しながら音楽を聴くという
器用な真似はできず、手は止まってます…


次に週2回通っているジム。毎回35分ウォーキングマシンをしているのですが、歩くことに集中していて、周りの人もそれぞれ集中して静か、両手はバーを握っています!最初だけ耳塞ぎしてましたが、歩きにくかったのでしょう、思わず外したら、この快挙を見てほしいと誇らしげに母を探してました(笑)。

これぞドヤ顔(笑)


その後静かで集中している、ヘルパーさんと二人でアートしている時間。月に数回アトリエを借りて、作業していただいています。

こんなそんなで今のところ超スムーズです!朝スケジュールを確認する時に、ここで今日外そうかと提案するのですが、わかったわかったとうなづいています。強要にならないくらい、私たちの関係性も今ちょうどよかったのだと思います。



気がついたこと①やっぱり苦手なことと安心できることがみえた

fuco:は食べることも人も大好きですが、近しい距離でワイワイとしがちな食卓は耳を塞ぎがちです。食事時にイヤーマフなしは、まだ後の方になりそうです。イヤーマフなしで他に何ができるだろうか、席の配置?外していく時のメニュー?考え中です。

他にショッピングセンターなどの街中も、イヤホンは必要そうです。自分は何をしているわけでもない時間も苦痛そうだし。

イヤーマフ以外でも、
安心を感じられる工夫はありそうなのも発見
幼児期も1食2時間ずつかかってましたから…
何が理由がもっと深掘りできそう


熱中できることがあるかないかだけでなく、手に何かを持って安心なのは、いつも握ってるマカロンからもわかること。無線イヤホンでもスマホは手に握って歩きたいようでした(笑)。さらに心許ない時はゴミ拾って口に入れてます…毛布などに包まれるのも、腕を組んで歩くのも好きです。この感覚の好みはリラックスにもっと使えそうです。



気がついたこと②彼女はこんなにも変化していた!

聴覚過敏があるfuco:だからとイヤーマフをつけていたけど、10年も経てば夢中になれることがいくつもできて必要ない場面があったり、「これは嫌だ」と主張できるようになっていました。

どんな彼女になってほしいかと考えたら、イヤーマフがなくても安心できる、夢中になれることが沢山あったら良いし、無理をしないツールを持っていたらいいし、それらを自分で選べたらそれがいい。

イヤーマフオフは「彼女はつけるもの」と思い込んでいた私たちにとって、彼女の今を改めて細かく見直すいいキッカケになる気がしています。

ちなみに外すことは今のところ彼女にとって嫌なことでなく、表情から見る限り、自分で決めたチャレンジを達成する満足感を感じています(たまたまいいタイミングでした)。

グッと大人な表情になってきた最近
やっぱり音楽を聴くのが何より好き


誰だっていつも良い状態ではないし、彼女だってまだこれからいろんな時があるだろうけど、その時は今回外した順の反対からまたカバーしていけば良いんだと思います。それでも23歳fuco:のチャレンジはまだまだ続くでしょう!

*なお、今回も素人おばさんが、娘の体験を中心に書いています。本人の状況もあるので、やみくもに試せばいいものでもないと私は思います。あくまでも今のfucoがしたチャレンジの一つ、オフだけが目的でもありません。


それでは、最近のfuco:の様子をご覧いただきながら、また次回6/1お会いいたしましょう!今回も長文ファンの皆様ありがとうございました!

目的を無視してタイミングで
電気をつけるので、
明るい中照明オンの季節到来
また時々アクリル絵の具楽しんでます
珍しくシェイクを飲み、吸引に手こずる図!


#自閉症 #アート #知的障害



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