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専門的支援以外で自閉症fuco:を成長させてくれたコト


23歳知的障害ある重度自閉症fuco:が成長する中、様々な転機がありました。大きな一つは、発達障害に特化した専門的な療育を受けられた時。本人の困り感へのアプローチ解像度が格段にぐっと上がりました。そしてもう一つがアートを始めて専門的支援が少ない社会と関わった時。なんと、全く反対なんです!

このジレンマにも似た疑問について、今回書いてみようと思います。ちなみに私自身はたまたま自閉症の子供を授かっただけの、ただの素人おばさん(笑)。




「自分たちと違う」価値観と感覚を想像するのが始まり

確かに赤ちゃんの時から寝ないよく泣く子で、子育てって大変だなと思っていました(ただの呑気)。自閉症とわかって、発達支援センターに通う頃には日常生活に差し支える問題だらけで、専門の先生方に毎回必死に相談。

fuco:の下には妹も弟もいたので、抱っこしておんぶしての訓練や相談は勿論ハードでしたが、それ以上に姉さんがとにかく切実なのですよ。本当に!!!

このメンバーをいつも連れて歩いてた私、
よく頑張った(笑)表彰!!


他県に転勤し運よく繋がった専門的療育が始まってから、先生方は自閉症の子供が私たちと全く違う感覚で生きていることを、まず教えてくださったと思います。どう解決していくかという手段以前にこれはとても大事なことで、落とし込んでいくのには時間を要しました。

私自身はもともと保育士になりたい時もあったくらい、子供が好き。だけど生まれてきた娘はごっこ遊びもしない、人形を一人で並べるのが好き、何が楽しいのか、どうしたら喜ぶか、全く不明なんですよ。

教えたらそのうちできるんじゃないかと思いがちですが、そうじゃないんですね。全く違うんです!本人が見えてる世界も困り感もそこへ辿り着くアプローチ方も。



自閉症としての細やかなアプローチによる成長


療育で宿泊することもありましたが、家族と一緒でなくても、本人は穏やかで落ち着いていました。

「親といる時が一番安心で幸せ」は単なる私の思い込みで、いっそしょっちゅう泣いたり、予定がすぐに変わる病弱な弟妹と別の方が良かったりもします。スケジュールで提示すれば見通しが立ち、本人は安心なんですよ。

「文字は教えたから読める」って親は思っているけど、読めるのと理解できるのは全く別次元。アセスメントをとっていったら、この部分は文字より写真や絵での補足が必要とわかったりします。

「少しぐらいうるさいの我慢しなさい」って言いたくなるけど、到底我慢なんてできないレベルで本人は辛かったりします。それらを想像しながら、一つずつ認めていくんですよね、彼女の感覚を。


ちなみに学校の先生で頼りになるのは
専門知識だけでもなく、細やかに本人の様子に気づいてくださる方々。
ありがたかったなぁ!


時間をかけてスタート地点に立ったら、少しずつ問題に対してどうしたらいいか、専門的な視点でアプローチしていただきました。

相談機関の小さなブースで最初は先生と二人で。それから一人でできるように、それが家で一人でもできるように。なんでも段階的に細かく教えてくださって、劇的に暮らしは穏やかに楽になりましたね。



特性を意識することのメリット

自閉症という特性を意識することは、やはり私はとても大事だと思っています。fuco:は言葉で何かを伝えることが難しいので、周りが推理することも必要ですが全く知識がないと「わからない」です。

少し知識があると何か彼女が困った時に、「こういう理由かも」「こうしたらいいかも」と推理予測の選択肢が増えていきます。

今も平日はざっくりスケジュール書きます。
変更も多々ありますけど


彼女は調子が悪い時、ストレスのかかる環境にいる時ほど、スケジュールや手順書など専門的な手立てが細かく必要になります。今まで学校や事業所に行けなくなるという時も、専門的支援の不足はとても大きかったです。



専門的支援が少ないアートでの本人充実という矛盾


ただ、これがアートを始めて「支援としては用意ができてないのだけどうまくいく」という場面が出てきたのです。

彼女は事業所でもスケジュールに沿って過ごしてますが、それらがない初めての場所で、支援員でない人たちと、初めてのことを楽しそうに過ごすという風に。

皆さんの期待にできるだけこたえたいけど、
そのスイッチは毎回違うので
捜索に慌てる(笑)



アートで何かする時、行ってみないとよくわからないことってあるんですよね。どのくらいの広さの場所で、どのくらいの人が集まるか、どういう順番で何をすればいいか、時間的にどんな感じか。

臨機応変にという部分は必ずあります。自分だけでない、誰かと一緒に何かをする場なので。



「役割と期待」による本人の成長と満足


センセーショナルに初めて尽くしだった渋谷でのアートドレス販売会。事前に場所の写真もいただいたけど、なんせ渋谷!!もう全く想像できなかったので、確か「絵を描く、名前を書く、写真を撮る」とだけ伝えて、これはお仕事だけど頑張ったらみんなで美味しいご飯食べに行こうねと言いました。

まぁ、これが本当に期待度に200%以上ミッションコンプリートしたんですね。私はこの原動力を圧倒的「役割、期待」だとその時感じました。

売り場がわかったら、何も言わず
一人でテーブルに向かい
さっと椅子に座ったのカッコよかったなぁ



彼女はとても感覚的に鋭く、相手が自分をどう思っているかも、とてもよく分かります。アートを介して知り合った人たちは、マスコミの方、お仕事相手の方、グッズを購入してくださる方、SNSなどを通じて彼女を知ってくださった方。

挨拶もまず彼女にしてくださるし(普段はそうでもない)、彼女に名刺を渡してくださるし(母にでなく)、彼女がそのままでいることを丸ごと喜んでくださる(どんな変わったことをしても)、その場では彼女は誰かについてきた人ではなく主役。そりゃ、ハッピーですよね。



さらに彼女をオトナに成長させてくれたのは「余白」


それからも沢山初めての体験をさせてもらいました。アート靴下の取扱店に納品に伺ったり、知事へ表敬訪問したり、インターナショナルスクールで英語でアート授業したり、小学校や大学、福祉施設でワークショップしたり、いろんな場所で新しい人たちに出会い、楽しい時間を過ごさせていただいています。

子供達とのワークショップで
「マル職人」と呼ばれてました
販売店に伺う彼女。
行ける場所が広がるのはありがたいこと!
県庁への知事表敬訪問。
緊張も躊躇も一切なし!



どの場でも「役割、期待」は勿論、とびきりの「好意」もつきものです。それ以外にいつもと違う何があるんだろうかと考えたら、「余白」なのかなと。

自閉症の支援で私たちにとって効果的だったスケジュールや手順書というのは、サポートする側で本人が混乱しないように、落ち着いて一人でできるように準備しておくものです。主体は家族や支援者になりがちで、できるだけ明確にしていきます。

対してアート活動では最低限の見通しだけで、あとは余白。

そこでは謎のこだわりが発揮されたり(旅でやたら寿司を食べたがるとか)、変更続きでも気にしないとか、自発的な動きが急に多い(本人が自分でいい人見つけてついていく)とか、思いがけないことの連続です。でも、それが本人にとって主体的でとってもいいんですよね!!!


このポップアップの時は
午前中に一枚仕上げるという
ルーティンを作ってました
諦めて選べる時はお寿司を食べてますが、
そういう時に限って回らないところしかない!!!ぎゃー!


見え方や好みの発見、次回はここ先に伝えておこうという改善、できそうな可能性の拡大、これらは新しい出来事や余白からいつも起こります。

障害が重いと失敗しないように、事故がないように、先回りしてしまいがちですが、失敗こそ成長で、不安でない新鮮さに彼女も心が動くんです。ワクワクしてるんです!



最近の非日常な出来事とその前後


先日は企業案件で遠方から撮影にお越しいただきました。初めてお会いする方々で、セッティング等もあわせて予定4時間。

今までTV撮影で長めの制作風景は経験ありでしたが、画材を複数使うのは普段もしないし、最近そんな長く描いてないし、セットを組んでのスチール撮影も自宅でしたことないし…できるんかな、ホントにって感じですよ(笑)。

担当の方には期待に添えるかわからないとお伝えしつつ、本人に伝えたのは使う画材の提示と、前日一緒におやつを買いに行って途中で食べようねってこと、いつもなら刺繍を抱えて音楽聴くのを楽しみにしているので音楽をつけるタイミング(最初からつけていると制作の手が止まるので)の提示。タイマーなどの時間提示はなし。

それではその時の様子をご覧いただきましょう!

淡々とシンプルな制作する様子を
大人たちがじっと眺める様はなんだか尊かった
全く予定外の屋外撮影もスムーズ、
母より初対面の担当の方と自然に一緒
たまたまのご近所桜吹雪の中を
歩く動画も撮影、
ドラマチックがすぎる(笑)
着々とセットが組まれる中、堂々たるもので
ただいつもニコニコしていたfuco:、
表情が豊かでオトナになりました!


それはそれはスムーズでプロフェッショナル!本人もその夜清々しそうで満足感いっぱい、結局はいつもこうなるのです。



障害があると不足しがちなことにこそ


最近思うのが、障害が重いと「自閉症や障害者として支援する」ということに偏りがちですが、それと同じくらい「年齢相応の個人」を意識した「チャレンジや遊び心、余白」は誰にでも必要でないかということです。

ガッチガチに支援するか、支援なしかの白黒に偏りがちですが、もっと本人自身をみながら柔軟に、そして先回りでなく後方待機ですね!

まずは彼女が安心できる環境と手立てを専門的な視点で整えつつ、足りなくなりがちな「チャレンジや遊び心、余白」もっと楽しもうと思った最近でした。とはいえ、彼女を泳がせるの勇気いるなぁ(笑)。…レッツチャレンジしていきたいと思います。

それでは、最近のfuco:の様子をご覧いただきながら、また次回5/1お会いいたしましょう!今回も長文ファンの皆様ありがとうございました!

初めてボールペンの上に色を重ねてます。
これまた楽しそうで!
頑なに洗面所に掲げられ続ける
妹の高校制服ブラウス。
大学生になったんだけど(笑)
誰かに会いにいくのは
いつもとびきり楽しい!
買ったらすぐ紙は無駄に剥がす派です(笑)
だって紙は食べないから!


#自閉症 #知的障害 #アート

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