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自閉症fuco:にとってのリアル経済状況から「生きる」を考える


皆さんにとって「聞きにくいけど聞いてみたいこと」に、個人でアート活動をしている彼女の支出収入とその運用があるのではと勝手に思っています(笑)。

これまで彼女に収入が発生すると考えたこともなく、対価が支払われるという現状は完全に想定外。今回はfuco:の現状経済について書いてみたいと思います(書ける範囲で!)。




夫婦間で障害児fuco:に残したいものの価値観の相違

大学の同級生だった夫と結婚した決め手は、愛というより(笑)、経済観念をはじめ、人生の感覚が近かったからだと思います。お互い極端にケチでもなく、浪費もしない。

それでも子育てをしながらでてきたその違いは、親として子供達に何を残してやるかということです。夫は現実的に「お金」を、私は彼女を想ってくれる「人」を財産として残していきたいと思いました。これは結局のところお互いの得意とする分野の違いでもあり、どちらも必要です。

fuco:は現在生活介護事業所に通所しており、工賃としては月に1000円前後本人へ、彼女が通所することで事業所に行政からスタッフの方の雇用分が支給されます。障害年金は最重度で年間100万くらい(ただし今後収入に応じて減額の可能性はあり)なので、将来グループホームに入居して、生活していくには不足分を親が蓄えておく必要があります。



fuco:も妹弟と変わりなく、その未来に投資したい


私たちは全く教育熱心ではないのですが、本人の希望でfuco:妹弟は小学生から塾に通い、受験して私立中学に進学しています。

次女は高校大学は公立国立で、幼稚園からずっと大好きな姉を追っている弟も再来年には国立大学に進学するものと思われます。この塾代や学費、本当に莫大にですよね…

結局子供ってそれぞれですが、
違いは特にないのです


できる限りのことをしてやりたい、それはどんなに障害が重くても、fuco:についても全く同じだったのですね。備えるだけでなく、若い彼女の可能性も広げてやりたい。アート活動への投資は、我が家にとってfuco:への教育費でした。



活動によって膨らんでいった支出内容


思いがけず始めたアート。画材も最初は百均の模造紙でしたが、画材屋さんのいい紙(fuco:ガシガシ描くので破れない強度も必要で…)、ペン、沢山購入しました。

アクリル絵の具高い!
使いやすいいい画材は高い!



また外に出そうと決めた後、まず障害者というカテゴリー内にとらわれずと思いました。ブランディングデザイナーにマルツナガルのメッセージをつくっていただき、名刺を作成したことが始まりです。実はいきなり20数万かかっています(笑)。震えました!

何年たっても色褪せない、
いいメッセージだったと思います。


その後、個展&カード、旗諸々(デザイン料20万プラス印刷費など実費)、プロフィールや作品の撮影(量によるが一回数万)、額装(サイズが大きいので一つ6万くらいのを大事に)、一眼レフカメラ購入(10万)、ホームページ作成(100万)、アート靴下1500足制作(ざっと200万プラスパッケージ、箱詰め外注など)…段々数字は大きくなります(金額はおおよそです)。

ショップカードとしてつくったこのカード
今も使用しています
額縁によって絵もすごく変わるので、
いい額縁も10近くつくりました
そしてなんと言ってもアート靴下。
デザイナーと地元メーカーと
こだわりの完全オリジナル!



これらは全てそれぞれプロに依頼しています。予算は年度を通して、マルツナガルと同じ頃に仕事を始めた個人事業である私の収入範囲内(カラーアナリスト)でと決めて。何かの事業支援予算を使ったことはなく、全て自力自立事業です。

とはいえ、自分の仕事もお金のためというより、ただ楽しくて夢中になっているうちに広がっていったのが現実です。最初収支に余裕がない時は大学生もおらず、教育費増大ともズレるようにも仕組んでます(笑)。




そしてアートによる収入が生まれていく


描いていったものは、最初確か何かイベントへの出展料だったと思いますが、これビビりました。お金になると全く思っていなかったので。

SANCの事業アンケートに、「障がい者アートが正当な評価、対価を得られていると思いますか」とあったのですが、まず当事者家族としてその発想すら全くありませんでした。家族にとっても長らく障害=欠落でした。

初めてアートがのったコーヒーが
届いた感激は忘れられませんね!



そのうちSNSでみつけてくださったことを発端に、ドリップパックのデザインに採用され、作品使用料をいただきました!その後原画もご購入いただいています。

それから小学校、大学、事業所などで授業や講演を依頼されたら、講演料を先方から提示されますし(自分の仕事でも講師業していますが同じく数万のことが多いです)、行政のポスターやノベルティに使用されるときもデザイン使用料を頂戴しています。こちらから価格を言うことはありませんが、それらは適正な価格で障害云々ではないと認識しています。

佐賀県のイベントにノベルティとして採用!
担当の方の熱量に感激しました
佐賀市パートナーデーのカードに採用。
個人的にお店に置いてくださったところもありました
実はイベントで担当の方とは、
その後も個人的お付き合いが
続いている場合がほとんどです!




そしてヘラルボニー契約作家となるという大きな転機が!



現在の収入は作品使用料、講演料、靴下などの物販、原画販売などがありますが、圧倒的に割合が高くなったのが、契約作家としていただいているヘラルボニーから作品使用料等です。

アートドレスがでて、どうやら今までとは全く違った額の対価をいただくとなった時、正直かなり困惑しました。それまではfuco:が好きなものを食べようかぐらいに考えていたので(笑)。

教育費とか言って投資する覚悟はあっても、経済的制限にとらわれない未来までは全然見えてなかったのですね。

ただ、場違いにも思えたその売り場に
このアートの存在価値は確かにあったのです!



ヘラルボニーが様々な賞を受賞されたり、コラボしていく企業が増えるにつれて、彼女への案件も増えています。案件ごとに丁寧な説明があり、その都度使用料をいただいています。内容により金額は異なるのですが、最近では夫の月収に迫る月もあり、納税できるほどの収入があるようになりました。

ただ個人活動として始めてからずっと、私の個人事業と合わせて部門を分けて税務申告しており、現状一旦私の口座に入ってfuco:に月々給料として払っています。

画材、イベント出張、撮影、プロダクト発送などの支出は全て事業費として申告しているので、彼女自身の納税は現時点ではないです。それにしても、重度障害のある彼女にこんな収入があるなんて!!!!

プロダクトを通しては
ファンという「人との繋がり」を実現
本の表紙にしていただくというミラクル!
まさかクレジットカードになるなんて
考えられませんでした
佐賀では「シートマスクを探せ」状態で、
SNSで情報錯綜しました(笑)




障害がある人に経済的対価が与えられるということ



企業とヘラルボニー、ヘラルボニーと私たちも正当に評価された経済の中で対等に結びついていることは、私たちにとっても「障害者というカテゴリーにとらわれない」という当初の目的通りです。

ただ、これを重度障害者である彼女のためにどう使い生かすか、この数年ずっと考えています。多様化社会に向かう企業とヘラルボニーに対し、当事者家族として全く準備ができてないと痛感しました。

fuco:自身が何がしたい、何が欲しいと訴えることはなく、それも非常に悩ましいです。お金を何にどう使うかはどう生きたいかを考えることだったとつくづく思います。

現状、自宅で暮らしながら趣味や生活費全般、誰かが待っている日本全国にたまに出かけていける自由さを、彼女は自分のアートによる収入で少しずつ賄えるようになり、そのことで格段に彼女自身の内面も充実してきました。福祉の枠外に、収入を得ることは大いにアリでした!障害児を育てる家族としての意識の変換です。

誰かに会う、役割があるのが
大好きな彼女なのです



対価を循環させていき、私たちからも社会を少しだけ良くしたい



現状重い障害がある彼女が生きていくということは、支えてくれる人や社会の存在が欠かせません。

というわけで、いい格好をするわけではないのですが、彼女だけでなく、障害がある人たち皆んなにとって生きやすい、幸福度の高い社会実現は不可避だと思っています。ささやかでも意識変換、収入あらゆる循環は意識しています。

今までに私たちができたことは、SANCへの定期的な画材代などの寄付、支援学校へのアート靴下の寄付です。支援学校に寄付した時には、卒業生から寄付が来ることは大変珍しいので励みになると言っていただきました。

誰かに喜んでもらうのも勿論嬉しいのです




今後収入が更に増えた時、減った時どうしていくか



収入が今後さらに増えるか、または沢山の一契約作家に過ぎないので減るかはわかりません。両面からいま彼女の人生とリンクさせながら考えています。

彼女にもっと実感を持たせられる
手の届く範囲の活動をつくりたかったのが発端



それには私たちが2年前につくった「fuco:labo」というブランドは起点になるかなと思っています。laboは実験という意味。能力を現状活かし難い誰かにとっても、チャレンジにもなるような雇用をと少しずつ考えています。

個人だけど将来的にアトリエやショップ、カフェで皆んなが集えたり、グループホームとも違う居住空間もあったらいいなと思います。増えたら活かせるし、減ったら収入に結びつけていけます。fucoもここを起点に人と出会い、新しい経験ができます。まぁ、うまくいけばですけどね(笑)



まずはfuco:が望むこと、必要なこと、嬉しいことを叶えながら


彼女は洋服も繰り返し2枚を着るし、特に収集癖もなく、市営プールやジムに行き、母の弁当を毎日持って事業所に行き、ネットで音楽を聴いたりするのがサイコーにただ楽しい彼女。

誰に会っても同じようで、お金の価値はわからない。人が好きで新しいことも好き。人生に必要なものは少なく、シンプルで本質的なものがわかり、ブレない人です。

これからも自閉症という彼女だけでなく、fuco:という個人として、新しい経験をしながら、彼女が何をしたいだろう、喜ぶだろうと目を向け続けるしかありません。

結局、彼女が1番とらわれない人なのだと思う



ヘラルボニーの契約作家になって、今私が個人的にチカラを入れていることは、社会の前進に向かう動きに対し、当事者家族としてその間に位置しながら、本人の変化や家族としての意識変換をリアルに発信をしていくこと。

プロダクトを通じて繋がってくださった障害と無縁だった方々、自分たちと近しい立場の方々、両方にベクトルを向けています。

これからも等身大で出来事や思いを共有し、皆さんと考えていけたらいいなと思っています。お金について考えることは人生を考えることで、それはfuco個人に一層真摯に向き合うことでした。



今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。最近のお仕事旅をご覧いただきながら、また次回9/15お会いいたしましょう。


美術館らしからぬピカピカした展示に
テンションあがってました
メイクをされることも意外と好き
オトナ女子になりました!
夏休みの妹との旅も
良い思い出になったでしょう!
妹にとってもね
初めて一人で交通系IC持たせて、
最後の最後で紛失…
次回はこれを課題に旅リベンジ!


#自閉症 #知的障害 #アート





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