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釣りとジジ



夫が釣りに連れて行ってくれました。



むか〜〜し友達の釣りについていったことが一度だけありますが、全くヤル気がなかった私は「寒い寒い」と言いながら殆ど車の中にこもりきりで楽しさを知ることも無くその日を終えたのです。


私の祖父は積丹の漁師家系に生まれ、訳あってその道を継ぐことは叶わず別の土地で土建屋を生業にするのですが、生涯通して海と釣りを生き甲斐にしてきた男でした。

堤防でチョイチョイと釣るような釣りではなく、釣る為ならば一歩踏み外すと死んでしまうような場所ばかり選んでいたそうなので、最期の数年は体力と筋力の低下でお気に入りスポットにも行けず、ドライブがてら海を見る程度に留まるしかできなかったのが切ないです。



祖父と祖母が溺愛していた長男(私からみると伯父)に望みを託して譲った一軍の釣り道具たちも、長男によって二束三文で売っぱらわれてしまったらしく、

「あの野郎俺の大事な竿を無駄にしやがって」 

と愚痴っていました。



そんな頃合に私は夫と知り合いました。



夫は子供の頃から一人で出掛けたりするほど釣りが好きだったようで、祖父も誘って釣りに行こうと何度も提案してくれていました。


それを聞いた直後こそ、

「俺そういう軽い釣り用の道具ねえから、ホーマックで用意すっから」

と言うものの、(恐らく使いやすくて良い道具たちは長男に売られてしまったんだろうし)
昔みたいな体力もない中で、孫・曾孫たちと一緒に釣りをしながら皆の安全を守りつつ、カッコイイところを見せられる自信がなかったのかもしれません。


結局一緒に釣りに行くことは叶わず、祖父は一足お先、と工藤家から去ってしまいました。



もっと祖父が元気な頃に、私も一緒に連れていけとワガママを言っていればよかった。


今日初めて釣りってものをしてみたけれど、活イソメは想像通り物凄く気色悪かったです。
それでも楽しかった。


家に帰ってから
「こんなもんたいしたことねーよ」
と言いたそうな表情で写っている祖父の写真を改めて見てみました。


祖父の記録はもっと大きいんです。
茶の間にでっかい魚拓が飾ってあったので私は知っています。


けどこの写真の祖父と今日の私ならば絶対に私が釣った魚の方がでかい!!

と自慢したくても、もう祖父はいません。

寂しいなあ。
会いたいなあ。


祖父ならばきっと、三途の川も渡らず釣りをしてそうな気がします。
私もそのうちそっちに行くから、今度こそ一緒に釣りしよう。

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