見出し画像

「信じて任せる」ということはめちゃめちゃ難しい!

真に「信じて任せる」とはどういうことか

「信じて任せる」ことほど、難易度が高いことはない。リーダー、管理職の役割を担っている、担ったことがある方なら、その難しさをご自身の実体験からリアルな手触り感をもって認識なさっているのではなかろうか。任せる仕事、タスクのボリュームや全体から見た位置づけ・重要性にもよるが、(ややオーバーかもしれないが)腹を括って人(部下や同僚)に任せるにはそれなりの勇気がいる。

逆の立場、責任ある仕事を任せられるというのは、それはそれでモチベートされる。私もかつて主査クラスであったときに、尊敬するグループリーダーから「細かいやり方を含めて、全面的に●●に任せる。(責任は俺がとるから)ぶっ放してこい」と親分肌で力強く言われたことは鮮明に覚えている。そして、何としてでも上司の期待に応えようと必死こいて頑張った。それで、幸い結果もついてきて栄えある年間MVPの表彰もいただいた。まさに、努力して結果が出て「自信」になったというわけだ。

私の失敗談(懺悔)

前職(通信キャリアの研究所勤務)での苦い思い出。30歳過ぎで研究主任(現場リーダクラス)だった私は、人事異動か何かの事情で途中から新入社員M君の直接指導者の役割を任された。12月半ばに新人が研究テーマ企画の進捗発表会を行うわけだが、担当者のM君はその発表会に向けて原理確認用画像処理プログラムのコーディングと提案方式の評価、そしてミニ論文=研究テーマ進捗報告書の執筆・提出までを完了せねばならない。
M君は元来真面目な性格でもあり、きっちり間に合わせてくるだろうと楽観視する一方で、提案方式のアルゴリズム設計を11月末まで試行錯誤しており、傍から見ていて危ういと個人的に感じてもいた。そこで、私は先回りしてもし評価プログラム実装が間に合わなかった場合のリスクヘッジで、自分なりにプログラムをこっそりと実装したのだった。事の顛末はどうだったのか。M君は終盤の追い込みもあって実装も含めてスケジュール通りに完了し、研究テーマ企画の進捗発表会をそつなくこなした。
結果私の心配は徒労に終わり、それはそれで問題ないのだが、何と表現したらよいのか、後味の悪さ、うしろめたさをしばし引きずっていた。その正体はリスクヘッジというと聞こえはいいが、後から振り返ってみると、彼(M君)のためではなく、ただの保身であった。

要するに、自分が無能な直接指導者と周りから見られたくない。研究テーマの進捗発表会で、結果が出ていないと流石に格好悪い、自身の評価にも響くのは避けたい... そこには、M君(のため)という軸はほとんどなく、まさに自分本位だったのだ。 

無責任な「任せる」になっていないか

勝手にメンターと仰いでいる方より、以前「●●さんは、信じて『任せる』ということの意味をはき違えていませんか」ということをさらっと問われて、ハッとさせられたことがある。真に『任せる』というのは、例えその人が失敗してもきちんと納期までに自分でカバーできるところまで考え尽くしたうえで任せなければならない。「あなたの『任せる』は、無責任な『任せる』になっていないか」ということを見抜かれていて、きっとそのことを伝えられたのだと思う。
そう考えると、真に任せることには不測の事態に備えた用意周到な準備と、しつこすぎないモニタリングの仕組みと、そして最後の最後は祈るような気持ち・寄り添う覚悟が必要とされる。そのことを学んだ。

単なる土管になっていないか[2021/6/25 追記]

ちょっと本題からは逸れるが、部下を持ってチームを率いる立場になって分かった学びがある。それは、「なぜ、チーム責任者として自分がその意思決定をしたのか」の理由を部下や関係者に説明できるか、という点。大企業の中間管理職で見られる伝書鳩的な人。上席の意向を汲んで(忖度して)チームメンバーに仕事を落とすだけなら、ネットワークの「土管」と一緒。何の付加価値(value)も生み出していないということに、ある時気づかされるのだ。
大企業に限らず、ベンチャーでもあるであろう、経営陣や声の大きい人がやると決めた(約束してきた)ことを優先度高でねじ込まれる〇〇さん案件。やらされる側の立場に立てば、「〇〇さんがやれって言ったから/〇〇さんが決めたことだから」という説明はマネジャーから一番聞きたくないし、一発でモチベーションを削ぐ最強で最悪のワード(笑)
「つべこべ言わずさっさとやれ!」「Just do it!」だけでは人は動かない。自分の評価を気にして面と向かって反対意見を述べず、しぶしぶ従う部下も少なくないと思う。分かってくれた、押し切ったと思ったら大間違い。部下は、上司の命令や考えに必ずしも納得していないけれど、良好な人間関係を保つために聞いたフリ、やったフリをしてやり過ごすのだ(面従腹背

画像1

松下幸之助はかく語りき

人を使うコツはいろいろあるだろうが、まず大事なことは、人を信頼し、思い切って仕事をまかせることである。信頼され、まかされれば、人間は嬉しいし、それだけ責任も感じる。だから自分なりにいろいろ工夫もし、努力もしてその責任を全うしていこうとする。言ってみれば、信頼されることによって、その人の力がフルに発揮されてくるわけである。
実際には100%人を信頼することはむずかしいもので、そこに、まかせて果たして大丈夫かという不安も起こってこよう。しかし、たとえその信頼を裏切られても本望だというぐらいの気持があれば、案外に人は信頼にそむかないものである。

(出典:松下幸之助 一日一話)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?