姉のこと

ちょっと遅れたけど。
私が生まれる随分前の話。
私の姉は、阪神淡路大震災の約1ヶ月後に兵庫県西宮市で生まれた。

地獄みたい。
多くの人がそんな言葉を残すほどの情景のなかで
母は必死に大きなお腹を守り続けた。
姉もまた、1ヶ月間、母のお腹の中で生き続けた。
当時、震災直後の誰もが呆然としている時に生まれてきてくれた姉は希望であったと思う。
失われていく命が多くある中で、それと入れ替わるように、生まれてきた。
これは決して、感動話ではない、と私は思う。
あの地震で失ったものがたくさんある。

昨年、震災から28年経った1月17日、
5時46分で止まった時計が奇跡的に動き出した。
その年、姉は結婚した。
たまたまだ、きっと。
しかし、あの時計が動き出したことで、「震災の子」と呼ばれ続けた姉は、その言葉の尊さを抱きしめて生きていくと思う。

今年は姉の結婚式がある。
きっといい日になる。



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