朝を待っていた。恐らく近辺で一番大きな樹にランタンを担ぎながら登って、靄が広がる一帯とその境界線を見つめていた。朝と夜の狭間。吐く息が白い。ポケットに入れた手紙。置き去りのやさしさは誰に預けたのか。飛び散ったのは硝子だけではなかった気がして、堪らず膝を抱き締めた。日は、昇らない。

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