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あれから

目黒川の桜が満開だと、人づてに聞いた。もしも今、桜を見て綺麗だと思えたら、私はきっと“大丈夫”なんだと思う。桜を一緒に見る約束はしていなかったけれど、夏の花火は一緒に見る約束をしていたせいで、冬は北へ旅行する約束をしていたせいで、これからやってくるどの季節にも君の影がチラつくことが確定している。君を好きじゃなくても、チラついてしまうと思う。これは仕方のないことだよ。約束の賞味期限なんて無いから。

あれから、ちゃんと生活している。ちゃんと、ではないかも。それなりに生きている。別れた日は地元の友達と居酒屋で唐揚げを大量に食べた後、深夜1時に仲良く半分こしたチョコモナカジャンボを食べながら誰もいない道を歩いて帰った。次の日には見せたい人はもう居ないのにまつパに行ったし、1日も休まずにバイトしている。23日と24日はSUPERBEAVERのワンマンに行った。FC席なだけあって、ステージがありえないほど近かった。演者の体から滴る汗が、鮮明に見えた。MC開始3秒で泣いた。握り締めた銀テープは、ある意味命綱だった。雨の日の夕方、下北沢の安価な居酒屋で、粗悪な酒を飲みながら、数ヶ月前から喧嘩していた高校からの友達と仲直りをした。風が強くて、どこかのダンボールが踊っていた。バイト先の先輩1と虎ノ門の洋食屋で大きなハンバーグ定食を食べた。その後、先輩が働いていた、今私が働いている喫茶店に行った。「夜パフェをしよう」と前々から約束していたから、先輩1はストロベリーパフェを、私はチョコレートパフェを頼んだ。キッチンの方が、元のサイズより大きくて豪華にアレンジしたパフェを出してくれた。今まで食べた中で1番美味しいパフェだったと思う。帰り際に貰った手紙を電車の中で読んで、微笑んでいた、気がする。先輩2と、この前君と行こうとして断念した中華屋に行った。1ヶ月前君と歩いた道を辿って、君と行きたかった中華屋に別の人と行った。ニラそばが信じられないくらい美味しくて、この一週間後、また別の友達を連れて行ってしまった。そのくらい美味しかった。中華屋で大食いした後ふらっと入ったカフェ・バーがとても素敵だった。何がとは言わないけど、気づいていたから、この店のことは君に話していなかった。先輩2にお酒を教えてもらいながら飲んだ。初めて飲むチェリー・ブロッサムは、少し苦かった。翌日は大学の友人とオールカラオケをして、そのまま朝の健康診断に行った。久しぶりに寂しくない夜を過ごした。

生きている。何となくだけど、生きている。世界で1番大好きだった人が私から離れても、私はこうやって生きている。生きていかなきゃいけなかった。「生きろ」と言わんばかりに朝がくるから。

2024.4.6

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