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なれること、慣れること

初めて行く喫茶店でくつろげる人は、才能があると思う。4限の講義が終わった後、友達との待ち合わせまで時間があったので、大学近くの喫茶店で時間を潰すことにした。いつも行っている喫茶店の前まで来たのに、「たまには探検でもするか」と、踵を返して再び歩き始めた。理由はないけど、なんだか、そうした方がいい気がした。

地下にある喫茶店に入った。想像していたより随分と狭くて、人がたくさんいた。マスターに「1人です」と指でジェスチャーすると、カウンター席に通された。テーブル席は3つ、全て埋まっていた。中年サラリーマン3人組と、カップルと、老夫婦。中年サラリーマン3人組の1人が、「新入社員との接し方がずっと分からない、もう嫌われている気がする」と、うなだれながら話していた。赤マルがよく似合う雰囲気をまとう人だった。カップルの彼氏の方は、電子タバコを片手に何かを熱弁していた。そして時々大きい声で笑っていた。老夫婦に会話は無かった。女性の痩せて皺が少し目立つ細い指には、長い長いタバコが握られていた。私の祖母よりも年上だと思われる人が、現役でタバコを吸っている姿を久しぶりに見た。もし肺がんにならなければ、今頃祖母もこんな感じで吸っていたのだろうか、なんてどうしようもないことを考えた。あんまり見なかったけれど、私の両隣は、何か作業をしていた。ゼリーのセットを頼んだ。珈琲ゼリーがもりもりに入っていて嬉しかった。セットのブレンドのソーサーに刻まれた模様が綺麗だった。椅子の間隔が近くて、時々隣の椅子に腕が当たってしまった。「すみません」と、2回くらい言った気がする。落ち着かないながらに本を読んだり、人のnoteを読んだりしていると、大学の友達から、「そういや彼女できた」というメッセージがきた。キリがないのでスタンプを送り会話を強制終了しようとしたら、何を察したのか「まあ、今まで通り気にせずいつでも連絡してきてください」ときた。それはさすがに無理ですよと思いながら、「はいよ」とだけ返して会話が終わった。

大学生の男女の友好関係の儚さは、線香花火にも匹敵する。“ずっとこのまま”が存在しないことを常に考えながら接している。友達に彼女ができたら終わり。全て終わりにする。どんなに面白かった映画の感想を言い合っている最中でも、ご飯の約束をしていても、終わらせなければいけないし、終わりにすべきだと思っている。まあ実際、この信念は勝手に私が持っているだけだし、これを持ち続けられる人と、そうではない人の割合は、きっと後者の方が多いから、なんでこんなにバカ真面目にやっているのか分からなくなることもある。大切じゃないから終わらせることができたのではなくて、幸せになって欲しいから、終わらせることができた。このことに、いつか気づいてくれたら良いなと思う。
「なんか冷たくない?」と言われたけど、全然違うんだよ。こんなこと言うの照れ臭いから言えなかっただけで。大切な大切な友達であるキミに始まりが訪れたこと、本当に嬉しく思っているよ。良き春を、良き青春を。おめでとう。

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