見出し画像

(8/28更新)マクロード:世界的な銀行信用危機

THURSDAY, AUG 24, 2023 - 11:30 AM Alasdair Macleod
Macleod: The Global Bank Credit Crisis | ZeroHedge

世界的に見れば、消費者物価のさらなる下落はもはや考えにくい。
債券利回りはすでに上昇傾向にあり、
銀行危機という新たな局面が引き起こされるだろう。

本稿では、
金利を上昇させ、世界の銀行システム全体を不安定化させる要因について
考察する。
銀行の信用収縮は初期段階にあり、
それだけで借り手の金利コストは上昇する。
昔ながらの信用収縮が起きているのだ

新たな物価上昇、より正確には通貨の購買力低下の加速は、

金利上昇にもつながる。
金融や不動産価値の下落は避けられず、
外国人投資家は資金を本国へ送金することになる。

これにより、
過去52年間に蓄積された32兆ドルの不換紙幣ドルへの海外投資の多くが
解消されることになる。
そして、BRICSが貿易決済手段として
ドルに取って代わることを検討しているのは、
これ以上悪いタイミングはないだろう。

高まるグローバル・バンキング・リスク

信用をめぐる警鐘が徐々に鳴り始めている。
マネタリストやオーストリア学派の経済学者たちは、
ほとんどすべての場所で縮小している広範なマネーについて、
この点を強調している。その大部分は商業銀行の預金である。
そして今週、中国の指令経済でさえ信用問題が露呈し、
大手不動産デベロッパーのカントリー・ガーデン・ホールディングスが
債券の支払いを滞らせた。

銀行信用の世界的な循環的下降はとうに過ぎ去ったことであり、
それが現在我々が直面していることなのだ。
過去のサイクル、特に1929年から1932年にかけての経験則によれば、

インターバンクの信用枠が削減され、
融資が呼び戻され、
担保が清算されるにつれて、
恐怖が野火のように銀行団に広がる可能性がある。

今日生じている問題は、現在の信用サイクルの悪化が、
1970年代以降の不換紙幣の世界が直面したどの事態よりも深刻なのか、
それとも中央銀行の負債を適時に拡大することで再び救済できるのか、
ということである。

金融危機を回避するために金融政策を利用することの問題は、
それが失敗するときが必ず来るということだ。

特に、銀行が景気後退に対して
十分な資本を有しているという仮定を出発点とする官僚によって
金融政策が推進される場合はなおさらである。

これは、単に債務不履行の潜在的な津波に蓄積された
以前のサイクルからの非生産的債務を無視している。
債務不履行が銀行を圧倒した場合、
政策対応は通貨を破壊し、問題を悪化させるだけだ。
債券利回りが再び上昇している今、
転換期が迫っていると考えるには十分な理由がある。

金融政策への信頼、通貨への信頼、
そして取引相手の支払い能力への信頼である。
不換紙幣の集団が直面するリスクを見る前に、
信用システムの崩壊につながる可能性のある要因を
いくつか挙げておく価値がある:

銀行の信用収縮。

銀行の信用収縮は、
銀行家が貸出リスクが増大していることを認識した結果である。
これは、銀行のバランスシートのレバレッジが高く、
不良債権や貸倒れから生じる株主資本の消失の可能性が
拡大している場合に深刻な問題となる。
その結果、金利上昇によってキャッシュフローが
打撃を受けた正常債務者も過剰債務者も、融資枠を拒否されるか、
少なくとも高い金利コストで融資を制限されることになる。
したがって、信用低迷の初期段階では、金利がさらに上昇し、
経営破綻につながる。
要するに、中央銀行は金利をコントロールできなくなるのだ。

銀行間のカウンターパーティ・リスク。

銀行が、取引先の1行または複数行が過剰に拡大したり、
管理不行き届きになったりして、
カウンターパーティ・リスクになっているのではないか
と疑ってきた長い歴史がある。
銀行はこうしたリスクを判断するために
共通の分析モデルを持っているため、
大多数の銀行が同時に特定の銀行について同じ意見を持ち、
その銀行がホールセール市場から締め出される危険性がある。
そうなると、預金流出の資金繰りがつかなくなり、
中央銀行に支援を求めざるを得なくなるか、
突然破綻することになる。
最近では、シリコンバレー銀行がそうだった。

S&Pやフィッチなどの信用機関による格下げは、
銀行間融資危機の引き金になる。
こうした格下げが今、始まっている。

債券利回りの上昇。

銀行は通常、民間部門への融資に慎重な場合に資産を再配分し、
国債をストックする。
そのため、債券保有残高の増加は信用サイクルと
逆サイクルになる傾向があり、
エクスポージャーの満期は1~2年に限定される。
このパターンは、中央銀行が経済の長期停滞時に金利を
ゼロ・バウンド以下まで抑制することによって崩れてきた。
ここでも、シリコンバレー銀行が、
このやり方がいかにひどい結果を招きかねないかの一例となっている。
シリコンバレー銀行は、
ゼロ%に近い利率で債券購入資金を調達し、
満期の長い国債や政府機関債を購入して信用スプレッドを拡大した。
金利が上昇し始めると、銀行の損益勘定は打撃を受け、
同時に債券投資の市場価値は大幅に下落し、
バランスシートの資本は帳消しになった。
FRBは、1年物スワップで現金と引き換えに国債を償還価格で
引き受ける銀行定期資金調達プログラムを創設することで、
このリスクを引き受けた。
基本的に、米国内の問題はカバーされ、
代わりにFRBのバランスシートに蓄積される--
ただし、これはFRBの会計処理には反映されていない。
FRBの会計処理には反映されていないが、
この融資枠の引き出し額は現在1,070億ドルで、
さらに増加している。

量的引き締め。

主要中央銀行(FRB、ECB、日銀、PBOC)を合わせると、
2022年初めからバランスシートを約5兆ドル削減している。
このQTは、満期を迎えた国債を再投資しないことで実施された。
中央銀行のバランスシート縮小のほぼすべては、
商業銀行の資産として口座に計上されている残高である
準備金に反映されている。
したがって、商業銀行システムは全体として、
放出された準備金を他のものに再投資するか、
預金者、債券保有者、株主に対する負債を合計した額を
減らす必要に迫られる。
当初、商業銀行システムは、政府の資金調達基盤として
不安定な3ヵ月物や6ヵ月物の国庫手形の保有を
増やすことでしか対応できない。

担保の清算

国債利回りのすべてのグラフは、
市場参加者の大半が信じているように、
利回りが安定し、最終的には低下するのではなく、
上昇を続けていることを私たちに訴えている。
さらに、原油価格をはじめとするエネルギー価格が
力強く上昇している現在、銀行の信用収縮によって
金利がさらに上昇するという見通し(上記で詳述)と、
この記事で取り上げた他の多くの要因によって、
債券利回りは大幅に上昇し、
金融資産と不動産価値の弱気相場が到来することになる。
銀行が融資担保を保有している場合、
その価値がさらに下落する前に金融資産を売却しなければならない
という圧力が強まるだろう。

不動産負債。

銀行の住宅・商業用不動産融資は、
物価上昇と銀行の信用収縮による金利上昇の結果、
大幅な評価損を吸収しなければならなくなる。
リーマン危機は、住宅ローンの貸し出しと証券化に関するものだった。
今回、金利上昇は商業用不動産を方程式に加えるだろう。

シャドーバンク

シャドーバンクとは、
銀行免許が必要な、信用を創出するのではなく、
信用を再利用する機関と定義されている。
これには、年金基金、保険会社、ブローカー、投資運用会社、
その他株式の貸し借りやデリバティブ、
有価証券の取引を行う金融機関が含まれる。
これらの事業体はすべて、
銀行やその他のシャドウバンクに対して
カウンターパーティ・リスクをもたらす。
昨年9月に英国で発生した年金基金の吹き飛びに象徴されるように、
リスクの一部は予期せぬ方面から顕在化する可能性がある。

デリバティブ。

国際決済銀行による評価では、
昨年3月の建玉は約38兆ドル、オプションの想定元本エクスポージャーは
さらに60兆ドルに上る。
規制されていない店頭デリバティブの市場規模ははるかに大きく、
2022年末時点で625兆ドルと推定され、外国為替契約(107.6兆ドル)、
金利契約(491兆ドル)、株式リンク(7兆ドル)、
コモディティ(2.3兆ドル)、およびデフォルト・スワップを含む
クレジット(9.94ドル)で構成されている。
すべてのデリバティブには
カウンターパーティ・リスクの連鎖がある。
デリバティブ市場の失敗は、
はるかに広い範囲に影響を及ぼすだろう。
特に、規制当局がOTCデリバティブの真のリスクポジションを
把握していないことは、規制概要に記載されていないためである。

レポ市場

どこの銀行システムでも、
またそれ以上に、銀行は流動性を確保するために
現先取引に依存している。
低金利と必要な担保が利用できることが、
この形態の資金調達の特徴である。
特に欧州では、
国際資本市場協会によれば、
レポの残高は様々な通貨で10兆4,000億ユーロ相当に達している。
基本的に、これらの金額は金融システム内の不均衡を表しており、
担保が設定されているため、
インターバンク市場で決済される伝統的な
オーバーナイトの不均衡よりもはるかに大きくなっている。
レポは担保付きとはいえ、
カウンターパーティが破綻した場合の影響は、
銀行セクター全体の安定性にとって
はるかに懸念すべきものとなる可能性が高い。
そして金利の上昇に伴い、担保価値の弱気相場は
この流動性プールを枯渇させることになりそうだ。

中央銀行のバランスシート QEを実施した中央銀行は、
金利抑制とともにQEを実施した。
その後の金利上昇により、大幅な時価評価損が発生し、
現実的な計算では自己資本の何倍もの損失となっている。
中央銀行は、投資を満期まで保有するつもりなので、
これは関係ないと主張している。
しかし、商業銀行を救済する場合、
その技術的破綻が障害となり、
通貨の信認が損なわれる可能性がある。

こうしたシステミックな破綻の可能性を考えると、
これまでのところ、急激な金利上昇が広範な銀行危機を
引き起こしていないことは注目に値する。

クレディ・スイスや
米国の地方銀行の破綻は、
おそらく本番前のウォーミングアップに過ぎない。

しかし、その時が来たとき、
中央銀行と各国政府の財務省が、
リーマン危機への初期対応として、
G20加盟国の法律で義務付けられた救済措置を取るかどうかは、
未解決の問題である。
それとも、現実的な対応としてベイルアウトに頼るのだろうか?
G20諸国間でこの問題についての協調が欠けていれば、
すべての銀行救済の試みが危うくなりかねない。

さらに、中央銀行の技術者たちは
信用や銀行の実務をある程度理解しているが、
銀行規制当局については同じことは言えない。
彼らは商業銀行業務の実地経験はほとんどない。
規制当局はストレステストを考案するが、
その前提は規制対象の銀行が生き残ることである。
そうでなければ、規制当局としての義務を怠ったことになる。
予想される銀行ストレスの背後にある経済前提が、
ほとんど常に非現実的なほど穏やかであることは注目に値する。

大混乱に陥ったとき、
官僚は自分たちの無能さを棚に上げて、
失敗の責任をすべて商業銀行自身に押し付ける。

米国の銀行システムの弱点

世界の不換紙幣システム全体の基軸通貨であるドルと、
それに基づくすべての銀行信用は、
世界的な銀行危機の震源地になる可能性が高い。
他の通貨が弱まったり破綻したりすれば、
金融伝染が起こる前に一時的にドルへの資本逃避が起こるだろう。
しかし、ドルが最初に破綻すれば、他の通貨もすべて破綻する。

したがって、米国の銀行システムの状況は世界経済の根幹をなす。
現在、米国の銀行信用はもはや伸びていないだけでなく、
縮小している兆候がある。

上のグラフは、すべての商業銀行預金に
FRB のリバース・レポ契約を加えたものである。
後者は厳密には一般に流通していないが、
そうでなければ銀行預金に反映される大規模な
マネー・マーケット・ファンドの代替預金形態となっている。
最近、2021年にFRBが
特定のノンバンクにレポ口座の開設を許可した時にはゼロだったのが、
昨年9月には最高額の2兆3,343億ドルまで急増した。
この変化を銀行預金の数字に加えると、
銀行信用の真の縮小は1兆2,030億ドルとなり、
これは今年初めの最高値の5.9%に相当する。
銀行負債の差の一部は、商業銀行向け貸出金の増加(5,560億ドル)で
占められている。
これは、預金者が銀行への固定貸出に比べて
預金から実質的に何も得られないことを考えれば理解できる。

これらの要因を考慮すると、
総資産はまだピーク時の水準を大きく下回っておらず、
これまでのところ、
銀行はリスクをコントロールする目的で資産を
整理してきたに過ぎないことがわかる。
したがって、信用危機はまだ初期段階にあり、
今後大幅に拡大する可能性がある。

下のグラフは、貸出環境が悪化する中で、
銀行がバランスシート総額を確実に縮小させる理由を示している。

過去30年間で、
総資産のTier1リスク資本に対する比率は、
歴史的に正常と考えられていた8倍弱から、
最近では14倍にまで拡大している。
このレバレッジ比率は、
不良債権と金融投資の時価評価損を合わせた水準が今後上昇すれば、
株主資本を一掃する恐れがある。

第二の弱点は、
米国が銀行預金を含む外国ドル短期保有に依存していることで、
米国財務省によると、昨年5月の総額は7兆1220億ドルだった。
このうち銀行預金は2兆3670億ドルで、
米国の銀行システム全体の13%にあたる。
しかし、短期保有の合計に長期保有の24兆7,880億ドルを
加えなければならず、短期・長期投資の合計は32兆ドル近くになる。
これは米国のGDPを大幅に上回っており、
2つの関連要因の結果として蓄積されてきた。
1944年のブレトンウッズ協定以来、ドルは基軸通貨であり、
国際的な商品価格は常にドル建てで取引されてきた。

記憶に新しいところでは、
外国人の手にドルが過剰に蓄積されたことがある。
その結果、ドルは金と交換され、
1948年には21,682トンあったアメリカの金準備高は、
1971年には9,070トンにまで減少した。
ブレトンウッズ協定が破棄された後、
現在に至るまでドルは、金である実質的な法定国際通貨で測定される
購買力の98%を失っている。
基軸通貨としての地位と米国の貿易赤字の持続により、
米国のGDPに占める外国人のドル保有比率は増加し続けてきた。
しかし、最近の地政学的な出来事は、この傾向を逆転させる恐れがある。

ドル債利回りが上昇し、
32兆ドルの外国人金融資産や銀行預金の資本価値が損なわれると、
外国人は損失の拡大を避けるためにドル資産を売却せざるを得なくなる。
そしてすでに、アメリカと同盟を結んでいない多くの外国が、
回避行動を取り始めている。
来週ヨハネスブルグで開催されるBRICSサミットには、
最大60カ国が参加すると噂されている。
ロシアの国営メディアは、サミットの議題として
金を裏付けとした新しい貿易決済通貨があると明言し、
ドルの不換紙幣体制に終止符を打つよう呼びかけている。

サミットの結果がどうであれ、
不換紙幣ドル体制がほぼ一巡したことは明らかだ。
米国経済からの信用撤退は通貨を弱体化させ、
米国の生産者物価と消費者物価のインフレ率を高め、
債券利回りを上昇させるだろう。
安価な金融に依存してきた金融資産や不動産の価値は大打撃を受け、
外国人による非金融資産の売却をさらに促すことになる。
米国に限らず、銀行の損失は急速に拡大するだろう。

外国人が米国債の購入よりも売却に関心を寄せている今、
米国政府の財政がさらに悪化すれば、
銀行は間違いなく救済を迫られるだろう。
ある程度、民間セクターへのいかがわしい融資を
国債に代えることは銀行にとって魅力的だが、
それは極めて短期的な償還期限に限られる。
その結果、満期を迎える国債や新規発行国債に対する政府の資金調達は、
現金に近いと見なせる3カ月物や6カ月物の国庫短期証券によって
促進されることになる。
インフレの影響もさることながら、
外資によるドル売りによる金利上昇の影響は、
債務調達コストを急増させ、
債務の罠をさらに深刻化させるだろう。

これだけでは十分でないかのように、
同時に銀行の信用崩壊はデリバティブ債務に悪影響を及ぼすに違いない。
下の表は、米国の上位12行のOTC債務のスナップショットである[i]。

すべてのナウを数え切れない読者のために、
上位9社のエクスポージャーが数兆ドルであることに留意されたい。
クレジット・スワップやクレジット・デフォルト・スワップなど、
一部の店頭デリバティブが想定元本に対して
債務を負っていないのは事実だが、
為替デリバティブ、コモディティ、株式リンク契約(117兆ドル)など、
その他のデリバティブは全額消滅している。
しかし、これらは銀行のバランスシート上では
重要性の乏しい契約価値としてしか計上されていない。

例えば、本稿で先に引用したBISのデリバティブ試算では、
昨年12月の外国為替店頭契約の想定元本は107兆5,761億ドル、
市場総価値は4兆8,461億ドルだった。
銀行のバランスシートに計上されているのは後者の数字である。
しかし、その合計でさえも、購入と売却の純残高として
記載されることによってさらに減少し、
見かけのエクスポージャーはさらに小さな数字に減少する。
要するに、107兆ドル以上の資産と負債が消滅させられているのだ。

BISの2022年3年ごとの店頭デリバティブ調査によると、
米ドルはこのFXポジションの88.5%を構成している。
米国以外の銀行間のユーロドルのオフショア取引は
全体のわずかな割合にすぎないが、
それ以外のドル建ての契約はすべて米国の銀行を
カウンターパーティとしている。
これは2つのシステミックな脅威を生む。
まず最も明白なのは、
外国銀行やシャドーバンクとのカウンターパーティーの破綻である。
金利が上昇し、担保となる金融資産価値が暴落する中、
米国の銀行システム外からのカウンターパーティ破綻のリスクが
高まるのは明らかだ。
2つ目のカウンターパーティーの破綻は、
米国の銀行同士、あるいはシャドーバンク同士の契約によるものである。

(銀行規制当局でなくとも)中央銀行が
こうしたリスクを十分に認識していることは確かだが、
世論の関心を引くことは避けている。
2008年9月、FRBがAIGを850億ドルで救済したのは記憶に新しい。
AIGは当時世界最大の保険会社であり、
クレジット・デフォルト・スワップや
その他のデリバティブ債務のオリジネーターでもあった。
証券貸付など他の要因も絡んでいた。
しかし、FRBが保険会社を救済したのは、
CDS市場におけるカウンターパーティとしてのAIGの失敗に対する
FRBの懸念を反映したに違いない。

BRICSの新金通貨

来週、ヨハネスブルグで開催されるBRICS首脳会議で発表される
提案の詳細が明らかになるだろう。
この新しい決済通貨は、
金グラムなどの金建てになることが予想されている。
金に裏打ちされた信用の復活は、成長を続けるBRICSファミリー、
そして米ドルに代わるより良い通貨を求める
上海協力機構のすべての加盟国、対話パートナー、仲間にとって
重要な進展である。
さらに、米ドルを弱体化させ、
石油とガスのドル価格を引き上げて
ルーブルの下落を安定させることは、
今やロシアにとって強い利益となっている。

金建て新通貨の計画がどの程度信用できるかによって、
上記の国内経済・通貨要因に加え、対外的にも
商品・製品・サービスで表されるドルの価値が
損なわれることになりそうだ。
外国為替取引所は、BRICS陣営の中央銀行が保有する
ドル準備高がますます冗長になり、
新しい金貿易決済通貨に取って代わられることを予想し始めるだろう。
ソブリン・ウェルス・ファンドも、
国際商品ディーラーや輸入業者と同様に、
ドル残高を減らして追随するに違いない。

ドルが売られるだけでなく、
ドルを米国債やその他の投資に振り向ける必要性もなくなる。
米国政府が借入要件を抜本的に削減する行動をとらない限り、
資金繰りは急速に悪化する。
ドル安により、商品、原材料、輸入品のドルコストは上昇する。
その結果、ドル金利は外国人保有者がドル残高を維持するために要求する
プレミアムを反映して上昇するに違いない。
しかし、それでも十分とは言えないだろう。
過去52年間にわたる純粋な不換紙幣ドルの大いなる巻き戻しは、
ドルの存在だけでなく、高度なレバレッジをかけた銀行システムをも
確実に脅かすだろう。

過去の不換紙幣を捨て去り、
エネルギーやコモディティとより密接に結びついた通貨、
つまり金が実際に象徴しているものを選ぶことは、
不換紙幣ドルの破壊にとどまらず、
他のすべての不換紙幣をも破壊することになる。
ユーロ、円、スターリングといった他の主要通貨が
直面している脅威と同じである。

主要不換紙幣の中で最も過大に保有されているため、
米国の銀行システムで最初に破綻が起こる可能性が高いことは
すでに述べた。
しかし、他国で銀行危機が最初に発生した場合、
金融伝染によってすべての銀行関係が弱体化するまで、
安全な逃避先としてドルが一時的に買われる可能性がある。
他の主要通貨のポジションを見る必要がある。
ここでは、ユーロ圏の銀行が直面している問題を例に挙げる。

ユーロシステム

他の主要中央銀行と同様、
ECBと各国中央銀行のネットワーク(ユーロシステム)は、
量的緩和を通じて国債やその他の債券を積み上げてきた。
量的緩和によってユーロシステムのバランスシートがどの程度拡大し、
その後縮小したかは下表の通りである。

15ヶ月前に8兆8,280億ユーロの最高値をつけたECBと
各国中央銀行の総資産は、7兆1,670億ユーロまで減少した。
前回の金融危機からピークまでの増加のほとんどは、
ECBが資産購入プログラムと呼んでいるものによるものだが、
そうでなければ量的緩和として知られている。
総資産の減少は、短期資産が満期を迎え、
資金が再投資されないことで、
商業銀行に対する負債が減少することで達成された。

とはいえ、現在、総額4兆8,650億ユーロにのぼる
残りの有価証券については、時価評価ベースで大きな損失が発生している。平均満期を5年、ユーロ圏国債の平均利回りを0%から3.2%に上昇させた
と仮定すると、昨年1年間のユーロシステムにおける損失は
約7000億ユーロに達する。
これはユーロシステム全体の自己資本の約6倍に相当する。
この評価問題は、購入価格と最終的な償還価格の間の直線ベースで
債券を評価するユーロシステム会計によって隠されている。

ECBはいつでもユーロを刷ることができるから問題ない、
と考えるのは自己満足に過ぎない。

ユーロシステムにとって唯一の希望は、
債券利回りが低下し、価値が上昇してバランスシートの健全性が
回復することである。
しかし、今のところ利回りは上昇しており、
今後も上昇し続けることは明らかである。
ある段階で、インフレ率が目標に戻り、
金利と債券利回りが低下するという仮定は放棄され、
ユーロシステム全体の資本増強を考えなければならなくなるだろう。

それは容易なことではない。
間違いなく、複数の管轄区域における国家レベルでの法整備が必要となる。ECBがドイツやその他の国の政治家からの抗議にもかかわらず、
インフレ政策のレールを敷くことは一つのことだが、
株式資本を懇願することはECBを後手に回らせることになる。
金融政策の失敗やTARGET2の不均衡がなぜ存在するのかについて、
政界から疑問の声が上がるに違いない。
特に、各国の中央銀行が
ECBに株主資本比率に見合った資本増強を行う前に、
資本注入が必要になる可能性があるためだ。

しかし、欧州の人々は、
商業銀行ネットワーク全体をバックアップする
ユーロシステムに依存しており、そのグローバルなシステム上
重要な銀行(GSIB)はアメリカの銀行よりもさらにレバレッジが高い。
さらに、ユーロ圏にはシリコンバレー銀行に相当する銀行が
隠れているはずで、そのバランスシートは予想外の金利上昇と
債券価値の暴落によって債務超過に陥るほど損なわれている。
10兆ユーロ規模のレポ市場も担保価値の暴落に直面している。
ユーロ圏のGSIBは、
デリバティブのカウンターパーティ・リスクに大きくさらされている。
しかし、

ユーロシステム自体は破綻しており、
黄昏時の熱帯の太陽よりも速く沈んでいく債券に
多額のユーロを支払っている。

銀行危機の性質上、いくつかの要因が重なり、
予期せぬパーフェクト・ストームとなる。
私たちは皆、その出来事の後に賢くなるだろう。
しかし、今のところ、私たちが観察できるのは、
ユーロシステムとその商業銀行、
そしておそらくはユーロそのものを破壊する可能性のある、
ばらばらの筋を一緒に観察することだけである。

米国の銀行システムが先に崩壊しなければの話だが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?