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外食に変わってよく売れた「超加工食品」

2023年10月15日 2023.06.11 一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介
https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/ultra-processed-food/

コロナ期間の自粛生活がもたらした現象の一つに、
食生活の変化があります。
外食が減少し、家での食事が増えたのですが、
一度に大量に購入するため、
スーパーで「超加工食品」がよく売れているのです。

今でも超加工食品のリストは更新されているわけですが、
現時点での超加工食品のリストを一覧表にしてまとめると次の通りです。
ここまで例を挙げると、何となくどんな食材が
「超加工食品」かイメージできたのではないでしょうか。

超加工食品とは、ブラジル・サンパウロ大学の研究者が行った
「NOVA 分類」で、グループ4に分類された食品のことです。
グループ1は野菜や果実など加工されていない食品、
グループ2はバターやハチミツなど少し加工された食品、
グループ3はチーズや缶詰などの最低限の加工食品、そして
グループ4が超加工食品で、スナック菓子、カップ麺、炭酸飲料、健康食品など加工度の高い食品のことです。

超加工食品が健康に悪い理由は?

大手食品メーカーが量産する超加工食品は、
糖質、油脂を多く含むことが多く、食品添加物が多く使われ、
食物繊維とビタミンが少ないのが、その傾向としてあります。

では、どうして超加工食品はこんなにも健康に悪いのでしょうか?

例えば、超加工食品が健康に悪影響を及ぼす可能性がある
主な理由として上記の論文では以下があげられています。

1.栄養バランスの偏り:
超加工食品はしばしば高カロリーであり、
砂糖、飽和脂肪、塩分が多く含まれています。
一方で、必要なビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が
不足していることが多いです。

2.添加物の使用:
超加工食品には、保存性を高めたり、風味を強化したり、
見た目を良くするために、さまざまな食品添加物が使用されています。
また、「添加物は単独では安全性が確認されているものの、
それらが複数合わさることにより、がんを引き起こす可能性」
というのも考えられていますね。

3.調理方法の問題
超加工食品の多くは油で揚げるなど高温調理されており、
その時にアクリルアミドという発がん性物質が作られていたりします。

4.食事パターンの変化:
超加工食品は手軽に食べられ、美味しいため、
過食を促す可能性があります。
冷凍パスタを食べて「もう少し食べたいな」などと
考えてしまう方も多いでしょう。
特に高齢者よりも若年者で超加工食品をとる傾向があるのも、
この手軽さが理由といえます。
また、未加工食品では、食欲を抑えるペプチドYYというホルモンが増え、
グレリンという食欲増進作用をもつホルモンが減ることが
いわれていますが、
超加工食品ではそうしたホルモンの調整が行われにくい
ということが言われています。

このように、超加工食品は偏った栄養バランスのみならず
「加工するプロセスそのもの」で健康に害する可能性があります。

「安価、便利で美味しい」を追求しているのが超加工食品。
ついつい食べたくなってしまいますよね。
ゼロにするのはなかなか難しいと思います。
あくまでバランスをとりながら「頼りすぎない」ことが大切ですね。

この超加工食品が注目されたきっかけは、
食事における超加工食品が占める割合と、
がん、死亡率、肥満との関連を調べたフランスの研究が、
2018年に英国の医学雑誌に発表されてからです。

このフランスの調査は、成人約10万人を5年間追跡したもので、

女性が78%を占め、平均年齢が43歳でした。

超加工食品を多く食べている人は

がんになりやすく、
とくに乳がんになりやすく、死亡のリスクが高くなり、
体重が増加する

という結果が出ました。

最大の原因は、貧しい栄養のうえに
多種多様な添加物を使っていることです。


自粛で超加工食品がよく売れたということは、
日本全体で不健康な事態が広がったと考えられます。
それとともに、なるべく手間暇かけて
食材から手作りする食事の大切さを、改めて思い知らされました。

数々の医学論文からは
以下の超加工食品の危険性について以下のようなことが言われています。

① 超加工食品により全死亡率が上昇する

フランスのNutriNet-Santé Studyから
選ばれた45歳以上の成人44,551人を対象とした
超加工食品と全死亡率を見た試験では、
さまざまな交絡因子を調整しても、
超加工食品の摂取割合が10%多いと、
独立して全死亡率のリスクは14%上昇する
ことがわかっています。

ちなみに同試験では、
超加工食品は、食べ物の総重量の平均14.4%(標準偏差7.6%)を占め、
これは総エネルギー摂取量の平均29.1%(標準偏差10.9%)に相当しました。

また、超加工食品の摂取は、

  • 若年層(45-64歳、食物の重量比平均14.50%)

  • 低所得者(月収€1200未満、15.58%)

  • 教育水準が低い人々(無学歴または小学校、15.50%)

  • 単身者(15.02%)

  • BMIが高い人々(BMI≥30、15.98%)

  • 身体活動レベルが低い人々(15.56%)

と関連しています。
ただし、こうした因子と関係なく超加工食品をとるだけで
14%も死亡率が上がるのですから、
超加工食品の継続的な摂取はそれなりの健康リスクになりますよね。

(参照:Association Between Ultraprocessed Food Consumption and Risk of Mortality Among Middle-aged Adults in France

② 超加工食品で認知症になりやすい

さらにブラジルの10,775人におよぶ研究結果によると、
超加工食品をもっとも摂取したグループは
全体的な認知機能が低下する速度が28%速く、
実行機能が低下する速度も25%速くなることが言われています。

つまり、超加工食品を食べる割合が高いほど、
認知症になるスピードになるのも速い
というわけですね。

この研究の平均年齢は51.6歳であり、追
跡期間の中央値(範囲)は8年(6-10年)。
これほど短期間であるのにも関わらず
認知機能のスピードに差が出てくるのは驚くべきことですよね。

「認知症に将来なりたくない」という方は
なるべく超加工食品を避けた方が無難と言えるでしょう。

(参照:Association Between Consumption of Ultraprocessed Foods and Cognitive Decline

③ 超加工食品によりがんになるリスクも増加

「超加工食品によりがんになりやすくなる」という研究結果も
いくつか報告されています。

例えば、年齢中央値42.8歳の10万人参加したフランスの試験では、
超加工食品の割合が 10% 増加した場合、全体的ながんのリスクは
12%上昇する
ことがわかっています。
がんの種類別に検証すると、特に超加工食品の摂取量が多い人ほど
閉経後の方での乳がんのリスクが高いことがわかっています。

また、イギリスの197,426人を対象とした試験でも
超加工食品の消費量が10%増加するごとに全体のがん(6%増加)、
卵巣がん(30%増加)、乳がん(16%増加)による死亡リスク上昇
が言われています。

このように、超加工食品によりがんになるリスクや
がんによる死亡リスクも上がってくるのです。

(参照:Ultra-processed food consumption, cancer risk and cancer mortality: a large-scale prospective analysis within the UK Biobank
(参照:Consumption of ultra-processed foods and cancer risk: results from NutriNet-Santé prospective cohort

④ 超加工食品は太りやすくなる

もう十分と思うかもしれませんが、
まだ超加工食品の健康リスクはまだあります。
「超加工食品」を食べるだけで太りやすくなるのです。

「超加工食品」とはなにか 
がんや肥満とも関連?

大村美香 2019年7月11日 10時00分
https://www.asahi.com/articles/SDI201907092404.html

超加工食品は悪い食べ物、と思いたくなる内容です。
ただ、論文や資料を読んでいると、
そう簡単な話ではないように思えてきました。

一番疑問に思ったのは、超加工食品の定義。
とてもざっくりとしていて、多種多様な食品が含まれる。
論文で報告された現象が何を意味するか、考えることが難しいのです。

加工度で分類するとしつつも、
「普通の料理には使わない素材を含む」と原材料に言及しています。
工業的に生産された原材料を指しているのか、とも解釈できますが、
だとすると、その条件に当てはまりそうな原材料は山のようにあります。
こうした素材を一つでも含んでいれば素材を五つ使っていなくても
超加工食品なのか。
(中略)

ある日レストランで食べたデザートプレート。
このアイスクリームとケーキは、お店の手作りなのか、超加工食品なのか・・・?

食品の事例で、アイスクリームがあげられていましたが、
家でも作れますし、小さな洋菓子店、食品メーカーなど
多様な作り手がいます。
使う原材料の多さ、種類は作り手によって違うはず。
アイスクリームであるなら超加工食品とするのか、
作り手で分類するのか。
でも食品メーカーによっても製品には違いがあるでしょう。
飲食店で出てきたアイスであっても業務用商品を盛りつけた場合があるし、既製のソフトクリームミックス(原液)で作った
ソフトクリームはどうなる・・・?
(中略)

とはいえ加工食品に頼り過ぎれば、
野菜や果物の食べる量が減ったり、
エネルギーや塩分の量が増えてしまったりと
食事のバランスが崩れやすくなるだろうとは常識的に想像できます。
これは加工食品に限った話ではなく他の食品でも同じですが、
過度に食べれば弊害が出る可能性がある。
健康な食生活には、多様な食品をうまく組み合わせるのが大事。
ごくごく当たり前の結論ですが、そう思います。

「超加工食品」という言葉は新顔ですが、
「健康に悪い」あるいは「健康に良い」とされる様々な食品が話題になり、はやりすたりを繰り返しています。
食べることは誰しも毎日必ず行う生活行動だけに、
見聞きしたことを誰でも簡単に採り入れやすい。
興味を持つ人が多く、人を動かしやすい話題なのだと感じます。
ただ、ある仮説に基づいて研究が始まってから、多数の研究結果が出て、
事実かどうか確認されるまでには、長い時間がかかります。
食と健康の分野に関しては、流行の最先端を追いかけるより、
奇をてらわない定番のアドバイスを尊重する方が、
結局は健康への近道ではないでしょうか。

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