転国時代
自分が生まれ育った国を離れて、外国で住む、ということは、
何か特殊な事情(転勤や国際結婚など)が無い限り、
滅多に起こらないことだと思っていた。
しかし、終身雇用が終わりつつあり、
転職が当たり前になったように、
近い未来、住む国を自分たちで選択することが自然になってくるのかもしれない。
<ヨーロッパでは普通のこと>
私は今日もいつも通り、東欧の先生とオンライン英会話を続けていた。
すると先生が来月ドイツに引越すという話題になった。
これまでも色々な先生がパンデミック中でもギリシャやトルコなど近隣諸国へ引っ越していた話を聞いていたので、普通のことかな、と特段驚かなかった。
しかし、先生によると、これは引っ越しではなく、「移住」だとのこと。
東欧諸国では政府の失策続きで失業率が高く、生活環境は決して良くないことは何人もの先生から話を聞いていた。この状況に痺れを切らして、なんと20代のうち凡そ80%の人々が近隣国へ移住しているらしい。
確かにEU内は地続きで言語や文化の基礎構造も似ているから移住はしやすいものの、実際に祖国を捨てて移住する人が80%程度いる、というのは衝撃だった。要は東欧諸国は日本の地方のように過疎化が進み、ほとんどの若者は上京していて帰ってこないということなのだろう。
ドイツは東欧諸国に対して言わばIターンを推進するような補助制度を出して、近隣諸国の若者がドイツで移住・労働しやすい環境を進めているという。
ヨーロッパでは日本の地方の過疎化のような状況が国家単位で進んでいるということだ。
<日本も他人事じゃない>
ヨーロッパの現状を聞いて真っ先に思い浮かんだのは、「日本も他人事じゃない」ということだ。
この国の経済成長は止まり、既に衰退期にあり、政府の失策は続き、国力も物価も、相対的にグローバル社会では落ち続けている。一般会社員一人の収入ではとても子供を育てる余裕がなく、少子高齢化は悪化していく一方だ。この国際的に見てとても魅力の薄い国で私たち若者は母国に住み続けるのだろうか。
実は既に日本の若者の間でも外国への移住は増え始めている。先日久しぶりに大学のゼミのオンライン同窓会に参加した際、何人かの先輩はすでにアジアやヨーロッパに移住を完了させていた。
昔は日本企業で東南アジア駐在をすると、物価の安い国では富豪のような暮らしができる、とされていたが、今やそんなことはなくなっている。日本の会社員の給料が上がらない一方、アジアの近隣諸国は着実に我々の給与待遇に迫ってきているのだ。
やりたいことができたり、福利厚生がいい会社に転職するような気持ちで、自らが住む国を変える時代も近づいているのだろう。
私たちはいつでも他の国に移住できるキャリアの準備をしていく必要があるのかもしれない。