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『空飛ぶストレート』

笛のような音が暗闇に響いた。
澄み切った星空の下、山の中に無音が戻る。

陸上競技用のピストルを開け、花火に使う火薬を入れ直した。
ピストルを掲げ、垂直に腕を伸ばす。
引き金を引いた。火が、尾を引きながら真っすぐ打ち上がった。ひゅるひゅると音を立てながら空へ上る。
火の帯が菊の形に広がった。続いて破裂音。金の粉を散らして、しだれ落ちてくる。

弾が命中し、星が爆ぜたのだ。

花火は、砕いて練った星と火薬を尺玉に閉じ込めて作る。
原料となる星は、冬に山で収穫する。空に瞬く星に一度そのまま着火して、爆ぜた時の色や輝きを見る。

今年は質がいい。
収穫用の火薬をピストルに入れ、もう一度火を放つ。
光が一直線に闇を切り裂いた。音だけが破裂し、空一帯にこだました。
鈴なりの星が震え、一斉に落ちてくる。地面で跳ね返り、水晶の破片のような音が無数に響いた。

星をかき集めて袋につめる。
帰り際に見上げると、星を振り落とした空はいつもより広く見えた。


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