黒の絵画

夜霧が消毒していく
――穢れを
ぼくの 見えている 土の
さらに下 の 凝固しゆく饐えた
鬱勃たる修羅の地層
から 一本に ほどけて消えた

削る
邯鄲とした
底の黒に
黒目が開いた
あれは
と思い結ぶ頃
右手にはとうに筆
左に仰ぐ
黒溜まりのキャンパスが
わずか靡く
水面の皺が
てらてら
光る
光だけが輝く
のではない
川辺の転がった石が
それぞれの顔を持って映る
呼称のないホタル ホタルが
めいめいに輝きだすのだ
闇夜だけが見えているのではない
暗い黒
赤い黒
軽い黒
一面のパレット

血管を一つにほどいてつなげると地球をゆうに囲める という
僕の 見えてない 肌の
そのまた下の鬱勃たる修羅
鎮まっているそれを
起こすための悪戯を企んでいるのだよ


お供の蛍火は静かに昇り
ひとりぼっちの裏表紙を畳む

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