第二回 いちごのこと。
いちごのこと。
10月下旬から5月頭。国産のいちごが手に入る時期は、意外と長い。
いわゆる「木」になる果実ではないため、「野菜」としても扱われることがあるが、好きなフルーツランキングでは常に上位に入るいちごは、やはり「果物」というイメージが強い。
最近は糖度が高い種類のいちごも増え、そのまま食べても美味しいものが多いが、やはり、フルーツサンドにするには、いちごらしい風味が強いものの方が美味しい。
そういう意味では、年々甘くなっていく海外産のいちごより、やはり産地から近い国産のいちごの方が使いやすい。
そんないちごサンドを、いつも買ってくれる中国人留学生がいる。
長い髪をなびかせて現われ、「いちご1つ」。
交通系ICカードをかざして、最低限の会話だけ。
ある日、いつものように買いに来た彼女に、「ほかはチャレンジしないんですか?」と聞いてみる。
話しかけられたことに驚きながら、「あぁ~」。目を泳がせて「いちごが食べたい」という。
何度かそんなやりとりをしているうち、「いちご大福風」を選んでくれた。いちごのサンドではあるが、こしあんとクリームと一緒に挟んだ、国産の時期にしか出さない限定品。甘さ控えめのこしあんと、こしあんの風味に負けない国産いちごが光る自信作。
ただ、残念なことに、次来たときは「やっぱり普通のいちごで」。
スタッフには人気の「いちご大福風」も、彼女には刺さらなかったらしい。
それでも最後、気を遣ってなのか、言ってくれる。「次はまた違うのにチャレンジしたい」。
「ありがとうございます。待ってます。」
いつかきっと、いちご以外にもお気に入りを見つけてくれると信じて。
About Us
フルーツハーバー
東京都中野区上高田3-40-10秋山ビル1階
高田馬場駅から電車で揺られること10分。新井薬師前駅南改札からすぐの場所にある小さなフルーツサンド店。
自家焙煎コーヒーや、概念が変わるほど美味しいスコーンなども並ぶ、週末だけ開く大人の秘密基地。
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