見出し画像

電動アシストサイクルを貰う 

 長い間一緒に仕事をしていたある人から、電動アシストサイクルを頂いた。パナソニックの古い車種であるが、造りが頑丈で、まだ充分に乗用に堪えた。同社の電動サイクルは製造時期によっては、バッテリーの欠陥が指摘され、リコール、無償交換の対象となっているが、その問題にも対応済みだった。自転車の譲渡のためには、都道府県警か交通安全協会に所定の書類を提出しなければならないが、それも全て先方で作成、対応してくれた。自分は、必要な公印が全て押された完成済みの紙面を、自宅近くの自転車屋に持ち込み、防犯登録を再申請するだけで良かった。本当に、神か仏のような人だった。
 二月中旬のある晴れた日、その電動サイクルで、北区、文京区、豊島区を走り回った。起伏に富んだ城北の台地の坂道を、モーターの加速力で軽やかに登りきるのは爽快だった。走行モードは上から「パワー」「オートマチック」「ロング」の三段階があるが、真ん中の「オートマチック」に設定すれば、大抵の坂道は楽に登ることが出来た。


 池袋北口の路上で、黒いボックスワゴンから、大量のプレステ5をひたすら荷下ろしする三人組の男を目撃した。おそらく日本人ではない。彼らの拠点と思われる雑居ビルに、手際良く次々と搬入していく。その様子を遠くから撮影し、SNSに上げた。



 西武池袋線、椎名町駅前にある肉うどんの店「南天」で昼食を食べた。南天は都内に幾つか店があるが、この店が本店であるらしい。店内は非常に狭く、真冬の青天の路上にハミ出したテーブルの上で、看板メニューである肉うどんを無心に啜った。店も客も、オミクロン株のことは余り気にしていない様子だった。
 まだ午後が始まったばかりだ。次はどこへ行こうか? 時間はまだ沢山ある。道が続く限り、バッテリーが尽きない限り、この自転車でどこまでも、どこでも好きな所へ行くことが出来る。自由だ。
 

詩的散文・物語性の無い散文を創作・公開しています。何か心に残るものがありましたら、サポート頂けると嬉しいです。