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アフリカ最高峰キリマンジャロ

キリマンジャロは東アフリカのタンザニアの北端に位置する標高5895mの独立峰であり、アフリカ大陸一高い山である。
ケニア有数の国立公園であるアンボセリ国立公園からも頂上が見えるような、ケニアとの国境のほんのすぐ近くに位置している。
ざっくり植生について触れると、標高約1800mまでステップ、1800〜3000mは熱帯雨林、3000m〜4000mは高山植物地帯、4000m〜5000mは砂漠地帯、5500m超が氷雪地帯である。ほぼ赤道直下に位置するこの山は標高の割に寒くなく、かつ急峻でなく登りやすい事から多くの登山客が訪れる。

今回は令和最初のチャレンジとして、7月にキリマンジャロの頂を目指した話を書く。

行程

いくつかのコースの中から、東側のマラングから入るルートを選択。4日目に頂上に到達する計画である。

行程詳細(カッコ内標高)
1日目:登山の起点の街・モシ→国立公園入口マラング(1800m)→マンダラ(2700m)泊
2日目:マンダラ→ホロンボ(3720m)泊
3日目:ホロンボ→キボ(4703m)泊
4日目:キボ→ウフルピーク(5895m)→ホロン(3720m)泊
5日目:ホロンボ→マラング→モシ

※1日目の朝と5日目の夜は、マラングからモシまでガイド、コック、ポーターと車で1時間かけて移動。

※キリマンジャロ登山ツアーは、自身で準備するものは高山病の予防薬とトイレットペーパーだけという、ほぼ借り物競走でどうにかなるお手軽なツアーがキリマンジャロ周辺には多数存在する。

**1日目:モシ→マラング→マンダラ(2700m)

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7時半。キリマンジャロ登山の麓町、モシの宿で朝ごはんを食べ、今日のコースはゆったりしたものであることからテラスで早速ビールを2本飲む。宿からは雲の上にあるキリマンジャロの頂が見えるが、裾野が広くとても約6000m近くの高さの山とは思えない。

9時半。前日に揃えた荷物および自分たちの荷物をワゴン車に搬入し、ガイド、サブガイド、ポーターと共にモシの街からマラングの入口へ向かう。

11時。キリマンジャロ国立公園の入口の一つ、マラングに到着。キリマンジャロ国立公園へ入り、レセプションにて事前にWebで支払った予約票との突合、荷物梱包を行う。
12時。マラング発。今日の目的地までは直線距離で7km、時間としては3時間の道のり。道幅は2メートル程度で両側道には丸太が並べられているが、道自体には舗装は施されていないぬかるんだ道である。標高1800m〜2700mに位置するマラング〜マンダラの道は熱帯雨林となり、多くの場合雨が降っている。ただし今日に限ってはラッキーな事に晴れている。ひたすら歩く。傾斜もそこまでなく、大変歩きやすい道である。途中にグレーのしっぽの長い猿や白の毛深い猿と何回か遭遇。

14時、今日の工程を半分ほど行ったあたりで用意されたランチ。ランチは自分のカバンでランチボックスを運ぶのだ。中身はチキン、サモサ、マンゴジュース、りんご、オレンジ、ゆで卵、パン。

16時、ひたすら歩いた後にマンダラ着。横になり少し休む。ここまで頭痛も疲れもなし。

17時、片道15分ほどかけてクレーターを見に行く。昔できた直径100m程度のクレーターが草に覆われていた。その先に見晴らしのいい場所があり、下に雲と圧倒的に広大な大地を確認する。キリマンジャロから地下水で河口に注ぐチャラ湖が確認でき、それがガイドによるとケニアとタンザニアの国境であるとのこと。地平線まで続く大地の半分くらいのあたりに国境があった。

18時半、ディナー。きゅうりのスープ、ココナッツカレー、魚フライ、キャッサバ。量は十分。飲み物も、お湯に加えてティー、コーヒー、砂糖、ミルク、ミロまで揃えてくれておりこちらも十分な量。

20時就寝。この地には電源も電波もお酒もないため、約9-10時間を眠りにしか使えない貴重な機会。

2日目:マンダラ→ホロンボ(3720m)

朝6時半。起床。雨。朝方にかけて夢を見るくらいには眠りが浅かった気はするが、何はともあれ9-10時間が過ぎ朝が来た。寒い、鼻水が黄色い、外は雨という万全とは程遠いコンディションだがここは山であり、万全の状態などなく、むしろ全然いい方であると思い直し、ようやく山に来た実感が湧く。とはいえ朝がこの地の寒さのピークだとしたらまだ自前の長袖長ズボンでしのげる程度である。実際まだ2700m地点であり、今日登るのも高さにして1000m程度、気温にしてあと6度下がる。搬入した全ての防寒具を着てしまうのは早計と考え装備を変えず。靴も登山靴に履き替えずに自前の靴のまま行く。

8時、朝食を食べて高山病用の薬を飲み、水筒にお湯と砂糖とティーパックを入れ、ランチパックを持って出発。11kmの道を8時間かけて向かう。標高3000mあたりからあたりがひらけて空が広くなる。熱帯雨林を抜けて高山植物地帯に入る。ひたすら歩く。高山植物地帯には黄色、や白の小さめの花を咲かせた草と、大きめなサボテンのような草が空へ伸びるように生えている。ここでは哺乳類は見かけず、ワシのような大きさと曲がった鼻をもつ強そうなカラスを数匹見かける程度。

12時過ぎ、約3500mを超えたあたりから雲の上に到達して一気に太陽が我々を照らす。そこで1時間弱のランチ休憩をとる。流石に標高が高いので長袖でちょうど暑くも寒くもない程度であり、何人かのドイツ人は半ズボンで歩いている。

15時過ぎにホロンボに到着。

登山というのはもっと激しいものかと思っていたが意外と余裕があるもので、休憩時間や暇な時間に読書や雑談をして時間を潰す。なぜならば寝てしまうと夜眠れなくなるから、疲れてても雑談をした方が有意義に時間が使えるのだ。実際は友人は疲れ切っていて眠っていて、少なくとも僕の場合は全く疲れていないのだがそれは一例(疲れていないのはきっとサハラマラソンのせい)。


19時にディナー。20時に食べ終える。外には雲海と満点の星空。南の方角に燦々と輝く南十字星とその周りに連なる天の川。雲も遮蔽物も地上の明かりも月もないために全てがくっきりと見える。地球を回る人口衛星が太陽の明かりに反射している姿すら見えるほどくっきりしている。オーバーナイトフライトを除き、雲の上で一夜を過ごす経験は人生初だなんて思いつつ就寝。

**3日目:ホロンボ→キボ(4703m)

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朝6時半、起床。快晴。朝ごはんを食べ、昨日よりもタイツを一枚、長袖シャツを2枚多く羽織り、フリースの手袋をし、対高山病の薬を飲み8時に出発。キボまでの距離は9km、時間は5時間。朝のような大気と地熱の温度が変わらない時は上昇気流も発生せず穏やかで平らな雲が地平線に広がっており、平らな雲海とホロンボを朝日が照らす光景は美しかった。

10時過ぎくらいからほとんど植物がなくなり、あたりは砂漠地帯に突入。道は沢山の人がふみならした砂利道で、砂丘を踏んだ時のように沈むこともなく非常に歩きやすい。人の歩いた道を一歩それると頭のサイズの大きな石がゴロゴロ転がっているため、道なりに歩き続ける。キリマンジャロの頂上とは別に、5000m超の峰があり、二つの山の間には冷たい風が吹き抜けている。風吹くルートは防水ジャケットに付いている帽子をかぶり、帽子の口を縛り完全防備で1km程度の道を進む。風吹くルートを抜けるとあとは日照りの道を進む。すでに4000mを超えており息が切れる。ゆっくり進むため疲労は感じず。幸いにも頭痛も感じず。途中でランチを食べ、ラスト1.5kmを45分かけて歩き、13時過ぎに標高4703mのキボに到着。

23時までリカバリータイム。ベッドで本を読んだり寝たりして過ごす。一度だけ18時に起きディナー。途中、トイレに動くだけの50mのアップダウンを往復するだけでも若干息が切れる。ここはそういう場所なのだ。

**4日目前半:キボ→ウフルピーク(5896m)

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深夜0時、キボ出発。

装備はフル装備。靴下は3枚履き、靴は登山靴、下はタイツ2枚+自前のズボン+スキーズボン、上は長袖は3枚+ダウンジャケット、フリース用のヘッドカバーとダウンジャケットのフードにヘッドライト。手袋はフリース地+スキー用手袋。他、ストック2本、スマホにGoProに一眼の入ったカバン、行動食、砂糖をふんだんに入れたホットティーの水筒2本。以上。

岩と砂が入り混じった急峻な山をジグザグに登る。単純に傾斜を見ると45度くらいあるが、ジグザグだから実際の傾斜は20度程度でどうにか登れる。5300mあたりまではほぼ砂場であり、足は滑るがゆっくり動くため楽勝、5300mから5800mくらいまでようやく岩場の本格登山道になり、かつようやく空気も薄くなってきて、ようやく疲れを感じ始め、息が切れる。

5800m辺りから、本格的に頂上が見えてきた。そこまではカルデラ沿いに緩やかな坂が続く。改めていままでアフリカの事を考えて費やした色んな事を思い返して、感無量になり半分くらい前が見えなくなるが、残りを一歩一歩踏みしめて歩く。キリマンジャロが皆に開かれた山であっても、全員が簡単に登れる山ではないと実感をする。いままで登りの際に使ってきた太ももの筋肉がここに来て疲れて動かない。ウフルピーク付近は酸素が薄過ぎて、一歩踏み出すのが限界で本当に苦しい。

AM7時には頂上の5895m地点のウフルピークに到着。雲海をはるか下にのぞむサンライズはとても澄んでいて綺麗である。太陽の陽射しで一気に辺りが明るくなり、山肌にくっつく立派な氷河も見える。いつか登ってみたいと思っていたキリマンジャロ山を無事に登ることができて清々しい。


5800mで体力気力を使い果たした友人も少し遅れ、なんとかガイドとポーターに肩を支えられながらも無事にウフルまで到着。

**4日目後半〜5日目:下山

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頂上には30分弱滞在し(これ以上長く滞在すると寒い&酸素が薄いため危険なので仕方なく戻る)、その後に来た道をひたすら戻る。登りの2-3倍のスピードでトレイルランをし、あっという間に下りのルートを終える。特筆すべき道は、5300mから4700mにかけての山下り。本来はゆるやかなジグザグ道を下るが、一気におりたかったため岩と砂が入り混じる傾斜45度の道を600m直滑降してとても気持ちよかった。なお息はとても切れた。
無事に入り口まで戻り友人と抱擁。モシの街で無事に登頂証明書を受領。

令和最初のチャレンジとしてキリマンジャロを持ってきて、かつ、宣言通りアフリカの最高点(5895m)まで自力で登れて、心から満たされた。

アフリカはこれで31か国回ったことにより、点と点が「つながった」という精神的な充足感を得たが、ついにアフリカ大陸の頂に立ったという物理的な充足感も得られて、心から満足をした。

サポート頂けたら、単純に嬉しいです!!!旅先でのビールと食事に変えさせて頂きます。