ルヴァンカップ決勝 川崎F vs 札幌 ~隠された様々なストーリー~
川崎にとってJリーグYBCルヴァンカップ(旧ヤマザキナビスコカップ)での決勝はまさに「呪われている」レベルで勝つことが出来なかった。2000年、2007年、2009年、2017年と4度タイトル獲得のチャンスがありながら結果は全敗。おまけに全試合無得点であった。
僕は10年以上川崎を応援してきているが、決勝で負ける度に他サポや友人から煽られるのである。「無冠ターレ」という言葉と共に。
100点とられたら101点取り返す超攻撃的サッカーでタイトルを目指した関塚フロンターレをリセットし、パスで崩すいわゆる「現代的」サッカーを完成させるのに5年以上かかった。ルヴァンカップ決勝が2009年から2017年にかけて8年も隔たりがあるのはこのパスサッカー構築期間である。
しかし2017年では当時特に苦手意識もなく誰もが「今回はいける!」と思っていたルヴァンカップ決勝セレッソ大阪戦でまたも負けてしまうのである。
ゴール裏にいた僕は試合が終わってもしばらく現実を受け止めることが出来なかった。
そのシーズンではリーグで初タイトル獲得。「たまたま」という言葉が似合う他力本願の逆転優勝だった。
2018年にリーグを連覇。しかしカップタイトルは夢のまた夢。
2019年、各クラブが力をつけ川崎対策がなされる中、リーグ3連覇がかなり厳しい状況になってきている。天皇杯もACLも敗退。残されたタイトル獲得のチャンスはルヴァンカップしかないと正直思っていた。
そんな中、鹿島を倒し決勝へコマを進めた川崎。相手は札幌。通算成績は19勝5分1敗のお得意様で、おまけに監督のミシャとの相性は◎である。
「4度あることは5度ある」か「5度目の正直」か。
試合は日本サッカー史に残る名決勝だった。ゴール裏から見ていた僕の心情と後から知った情報を織り交ぜつつ試合を振り返ってみる。
試合前から漂う激戦の予感
ミシャ監督のもとで攻撃的なサッカーを作り上げてきた札幌とJリーグ王者の川崎のカードに対して試合前、様々なメディアが「点の取り合いになる!」といった表現をしていた。
僕は前日「点が取れるのか...?」と思っていたが、やはり決勝の舞台は気持ちが高揚するもので、寝坊常習犯の僕が当日は朝4時半に起きて点が決まる妄想をしながらスタジアムに向かった。
スタジアムにつきしばらくすると両チームのスターティングメンバーとベンチメンバーが発表された。
川崎 : GK 新井 DF 車屋 谷口 山村 登里 MF 碧 大島 阿部 脇坂 家長 FW ダミアン
札幌 : GK クソンユン DF 福森 キムミンテ 進藤 MF 菅 深井 荒野 白井 チャナティップ 武蔵 FW ジェイ
川崎のスタメンの中に2年前の決勝でもスタメンだったメンバーが4人。その中の大島は怪我明けだが実は2年前も怪我明けだったのだ。ちなみに後々判明した話だが、スタメンの田中碧は鼻を骨折している。
前線には脇坂とダミアンを起用。このルヴァンカップでここまでこれたのはこの2人のおかげであろう。しかし後々述べるがこの日は「脇坂とダミアンの日」ではなかった。
札幌は主将で10番の宮澤が欠場。キャプテンは元川崎の福森が務めた。前線にはチャナティップ、鈴木武蔵、ジェイに加えて菅など、一発がある選手が揃っておりベンチにもアンデルソンロペスやルーカスフェルナンデスなど役者が控えている。なんか外国人選手が多すぎて本当に日本のクラブなのか少し疑ってしまう。
選手のアップが始まると札幌ゴール裏のコンサドーレコール。これは圧巻だった。おもわず川崎ゴール裏からは拍手が起こった。
試合前から会場の雰囲気は最高潮。王者として迎える初めての決勝戦に僕は心を躍らせていた。
頭によぎる2年前
運命のキックオフ。しかし開始30秒に荒野がクリア気味に蹴ったボールが川崎の最終ラインの裏に流れ、山村がファールをしてしまう。幸いにもカードは出なかったが僕個人の意見とすればあれはイエローカードであろう。
思えば。
2年前、試合開始47秒で失点をした。この時の記憶は嫌になるほど頭にこびりついてる。
そしてこの瞬間もこれが頭の中をよぎった。札幌にはフリーキックの名手福森がいるのだ。
しかしなんとかこのピンチを乗り越え、直後のコーナーキックもしっかり対応した。
すると前半5分に脇坂のファーストシュート、7分に登里のミドル、9分にはシュート名人の阿部がゴールに迫った。
「お?なんだか今日はいける気がする!」と思った数十秒に悲劇は起こる。
前半10分、右の白井にロングボールが繋がるとチャレンジに行った車屋がかわされそのままクロスを送るとファーに流れ菅のボレーで札幌先制。
「やってしまった」としか言えない失点だった。というのも登里サイドにフリーな選手が出来てズドーンというのはよくある失点パターンなのだ。直近のリーグG大阪戦の倉田のゴールもそうだが。
札幌は攻撃の時に人数を一気にかけてくる。だからこそ川崎の「よくある失点」というのは対策をすべきだった。しかし入れられたものはしょうがない。まだ9分だ。
そこからはというと川崎が繋ぎながら攻め込み、札幌がボールを取るとカウンター、という流れが続いた。
僕は最近ドイツのブンデスリーガの試合をよく見るのだが、この時の札幌はまさにドルトムントのような攻撃だった。奪ってから縦に速いサッカー、若くて勢いのある札幌は和製ドルトムントと言ってもいい。こんなことを川崎ゴール裏で考えていた僕は怯えていたのかもしれない。札幌の攻撃に。
チャンスは作るもののダミアンと脇坂が決定機を外しまくる。ポストに嫌われ、クソンユンの好セーブにあい、時間がどんどんすぎていく。
前半のロスタイム、脇坂のコーナーキックをダミアンが触ると、ファーに流れ、阿部が胸で抑えゴールにぶち込んだ。
優勝請負人の阿部の川崎史上初のルヴァンカップ決勝でのゴールはあまりにも大きいゴールだった。「いける!!」という謎の自信が湧いてきて横にいた友人たちとハイタッチ。前半が終了した。
試合後の阿部の話だとあのゴールはクソンユンの股を狙ったわけではないそう。「思いっきり打った」というプロらしからぬ感想文だが、あれが脇坂だったら外していただろう。いや、冗談抜きで。
心なしかハーフタイムのゴール裏には笑顔が多かった。僕自身も地元である川崎の旧友に会ったりと濃密なハーフタイムを過ごした。
2度の埼スタ劇場
阿部のゴールで肩の荷がおりた川崎はかなり勢いを持って後半に臨んだ。
後半は札幌のカウンターに警戒心を強め、リスク管理をよりするようになった。よく「リスク管理はGKの仕事」と言われることがあるが、普段GKをしている僕からすると「全員で気を付けよう」と言いたい。この時の川崎は前線の選手も取られ方に気を付けるようになったし前半よりは改善されていた。
後半13分、札幌はジェイにかわってアンデルソンロペス投入。アンデルソンロペスをみて千と千尋の神隠しを思い出した。わからない人はTwitterで #千と千尋の神隠しを無理やりJリーグに例える と検索してみてほしい。
同点になり、札幌がコンパクトな守備を敷いていないため川崎らしいサッカーができるようになった。
後半14分には右サイドからのクロスを収めた脇坂に決定機。しかしこれも大きく外してしまう。まさに「若さが出ている」といったミスだ。
後半19分に脇坂にかえて憲剛、後半28分にダミアンにかえて小林を投入。前線4人を2017年初優勝時の黄金おっさんメンバーにしたのだ。
その後も一進一退の攻防が続き迎えた後半43分。大島の浮き球スルーパスを小林が胸で納めてゴールに流し込んだ。逆転。まさに埼スタ劇場。
これはみんなどう感じたかわからないが僕は小林がトラップしてからシュートを打つまでの時間がなんかゆっくりに感じた。カッコつけて言えば「時間が止まったような感覚」である。
初優勝が目の前まで来た。急に溢れそうになる涙をこらえつつ青覇テープをポケットに忍ばせた。
後半もロスタイムに突入。リード中の試合終了間際にはお決まりのAVANTEを歌う。もちろんこの日も。昔聞いた話なので僕も記憶があいまいだが、AVANTEという応援歌は、後半ロスタイムに失点が多いフロンターレだった(今でもよくあるが)のでスタジアム全体で1つになって最後の数分を守り切ろうという意味が込められているのである。
後半45+5分、札幌にコーナーキックのチャンスが与えられ、GKのクソンユンも上がってきており、時間的にもラストプレー。
しかしフロンターレはやはりフロンターレでした。
福森のキックに深井が合わせて同点。ゴールネットが揺れると遅れて札幌ゴール裏の歓声が耳に届く。僕の友人がここで一言「簡単には勝たせてくれないね」。二度目の埼スタ劇場開幕だった。
余談だが、このゴールを決めた深井はプロサッカー人生の中で3度の前十字靭帯断裂を負っている。2013年から札幌のトップチームでプレーをしてたこともありこのゴールはまさに「札幌への恩返し」ゴールだったのだ。これは感動エピソード。
一気に気持ちが現実に戻った僕はミシャ監督がイエローカードをもらっている場面を見逃さなかった。あれはちょっと面白い。
試合は2-2で延長戦に。
サッカーの面白さが凝縮された30分
気持ちは案外落ち着いていた。ここまで来たら決勝だろうがなんだろうが最後まで戦ったもん勝ちだと思っているからだ。
後半ロスタイムの劇的ゴールで勢いを持ってくるかと思いきや、安全策を張ってきた札幌。川崎はいつもの繋ぎもあり、延長前半開始直後はいい流れが続いた。
札幌のカウンターも鋭さを欠きはじめ、僕も心の中で「いけるんじゃないか」と思っていた。しかし延長前半6分にまたも悲劇が起こる。
怪我明けで身体の重さが終始見受けられたチャナティップがここで得意のドリブル突破。ギリペナルティエリア外で谷口がファールで阻止。イエローカードが提示されたが主審はVARからの指示でオンフィールドレビューへ。
その時会場は騒然。「え?なに?」といった感じだ。
それもそのはず、ファールは取ったしイエローカードは妥当であると誰もが思っていた。
僕自身も「ペナ内か外かの確認かな」と思っていた。
主審が戻ってきて、TVシグナルを出したあと手は後ろポケットに。
イエローカードとは別の位置にレッドカードは入れないといけないので、僕はその瞬間に何色が出るのかがわかってしまった。
レッドカード。DOGSO(決定的な得点機会の阻止)の4条件を全て満たしていたためのレッドカードだ。DOGSOという言葉はJリーグジャッジリプレイが始まってから認知度が高まっているが、まだ知らない人も多いみたいで試合後も納得できない人が多く見受けられた。
谷口は悔しさを噛み締めながらピッチ外へ。ボールは福森が持っていた。
このFK、決められたらいよいよ終戦記念日となってしまう。位置はゴールから20mちょっと。サッカーをやったことある人ならわかると思うが、ここまで近いとニアサイドは逆に入らない。
しかしニアに低壁を置くと決められる可能性も出てくるため山村や悠をニアに設置。ファーの壁には大島と長谷川を置いた。
僕を含めたゴール裏全員が「ファーに来る」と思っていただろう。左利きの福森にとってファーの角に強めのパスを出せばゴールに届けられるのだ。
イメージ通りのボールだった。福森とフロンターレ同期加入の大島の頭を超えたボールはしっかりゴールに吸い込まれた。2-3。
まさに絶望。現実となった終戦記念日。かつての仲間に叩き込まれた一発は我々の夢を打ち砕いたのだ。
ここで川崎は大島にかえて試合直前にF-SPOTで感動を呼んだマギーニョを投入。僕はこの交代が鬼木さん史上最大の名采配だと思っている。
2点目のイメージもあり「大島下げちゃうの!?」と思う人が多かった。しかし途中出場していた長谷川とこのマギーニョが両サイドで走りまくったおかげで「まるで11人いる」ような試合になったのだ。
札幌は勝ち越し後、優勝を確実にしようと守備の意識を高めた。4点目を取って試合を終わらせられたと思うが、選手たちはなかなか攻撃に人数をかけれず。もちろん、鹿島のような経験豊富なチームだったら4点目を全力で取りに行っていただろう。
長谷川、マギーニョ、家長などサイドの推進力で相手を押し下げることが出来、中央でも10人にしてはスペースが生まれていた。
しかも幸いなことに相手は札幌。これがセレッソやFC東京であったらゴリゴリに守り切られていただろう。
失点後、10人のフロンターレは「もうやるしかない」というような戦いぶりで札幌ゴールを脅かす。王者としての意地だろうか、今までのフロンターレに無いものがそこには見えた。
延長前半はこのまま終了。エンドはすぐ変わり延長後半へ。
ここで福森が交代。セットプレーが重要なこの試合で福森アウトは、正直我々にとって朗報であった。
後半も川崎がボールを持って圧力をかける。マギーニョが右で多少暴れていたため、家長がバランスをとりつつ走りまくっていた。
延長後半4分、ここでも長谷川のチャレンジからコーナーキックのチャンス。正直憲剛のコーナーは期待出来ないものがあるが、割といいボールが中に入った。
中で札幌のクリアが不十分になりファーの山村が折り返すと、中に「たまたま」いた悠が押し込み同点。
僕は「まだいける!」と叫んだ。そう。まだいける。
これは録画を見直して気付いたのだが、アシストの山村はボールが中に入り切る前に何故かバックステップを踏んで後ろに下がったのだ。優れた嗅覚があったのだろうか。結果的にこれがゴールに繋がった。「鹿島の血」が入った山村が川崎を救ったのだ。
10人の川崎がだんだんと運動量を落としてきて札幌も決勝ゴールを取りに来る。
川崎はカウンターも狙いつつ決勝ゴールを取りに行く。アンデルソンロペスのオフサイドからアドバンテージを取ってもらえずカウンター出来なかった場面では悠様激おこに。
札幌の猛攻も山村と車屋の臨時CBがなんとか抑え延長後半ロスタイムに突入。札幌のコーナーキックのシーンでは心臓が止まるかと思った。
なんとか耐えた10人フロンターレ。試合はもっと心臓に悪い「PK戦」に突入する。
PKは決して「運ゲー」ではない
世間ではPKを「運」と表現することがある。
もちろん運要素はあると思うが、僕は運要素は20%くらいしかないと考えている。
というのもPKを蹴る側にかかるプレッシャーというのは本当に計り知れない。この48000人の前で蹴るPKはなおさらである。そのプレッシャーの中で、120分走った後で、どれだけ正確で強いボールが蹴れるのかが重要であり、結局はメンタルも含めたキッカーの実力で結果が決まる。
逆にキーパー目線で考えるとどれだけ相手をよめるかが重要になってくる。安全に下を狙ってくるタイプなのか、意外と根性が座っているタイプなのか、はたまた本田圭佑みたいにド真中にぶち込んでくるタイプなのか。メンタルが弱いタイプ相手にはプレッシャーを与えたり、コースを誘導したりも有効である。
なんにせよPKには想像以上の駆け引きがあるのだ。
コイントスの結果、PKは川崎サイドでやることに。小林は試合後「初めてキャプテンの仕事を出来たなと思いました」とコメント。
さあ1本目のキッカーは小林悠。この時の僕の気持ちは「本当に無理だ心臓に悪すぎる見れないよこんなの」。
決めた。そして2本目の山村もしっかり決めた。「鹿島の血」が入っている山村はなんか安心して見れた。
ここまで両者決めて川崎3本目、憲剛が出てきた。少し考えてみたが憲剛がPKを蹴るイメージが浮かばない。ACL準々決勝のセパハン戦でも天皇杯ベスト16の浦和戦でも蹴っていない(調べたら去年の水戸戦などで蹴っていました)。大丈夫なのか、憲剛。
憲剛の蹴ったボールは右に突き刺さった。「はあああよかったよかった」という思いで水を飲んでいたので見ていなかったが、めちゃめちゃ煽っていたらしい。おっさん、元気やな。
札幌の3人目は深井。土壇場での同点ゴールを決めたこともあり冷静に左上を射抜いた。実は2本目の鈴木武蔵も左上に決めていたのだが、キーパーの僕が思うに上に蹴られると取れない。理由は長くなるので割愛するが、上を狙うデメリットとして、バー上に外す可能性が出てくる。ちなみに僕は上なんて怖すぎて蹴れない。
4人目は車屋。テレビで見ていた友人から後々聞いた話だが、車屋の蹴る前の顔は「THE 外す人」だったらしい。その顔通り、右上を狙ったボールはバーに当たり空へ高く飛び上がった。
外した瞬間の車屋の「あぁっ」って感じの顔がすごく頭に残っている。彼にとって人生で一番最悪な瞬間だっただろう。
最初は相手へのブーイングだったゴール裏もいつの間にか全てを新井に託したかのように新井コール。しかし札幌4人目のルーカスフェルナンデスがPKをしずめ、いよいよ追い込まれる。
ハッキリ言うがこの時点で僕は90%ぐらい諦めていた。家長が外して終戦のイメージも、5本目普通に決められて終戦のイメージも、絶望に浸りながら大混雑の浦和美園駅で電車を待つイメージも浮かんでいた。
両手を握って祈った。頼む!頼む!
家長は決めた。そして珍しく煽る。そんなのに喜んでいる場合ではないことを我々が一番わかっているはずだ。
札幌決めれば初優勝の5人目は石川直樹。2009年にも札幌に所属していた大ベテランが決めて札幌初優勝!というシナリオが台本のラストページまで来ていた。
しかし左に勢いよく蹴ったボールは新井が触ってゴールの横へ。
「うわあああああああああああとめたああああああああ」
まさかの展開に誰もが叫んだ。僕はというとちょっと衝撃的過ぎてあまり覚えていない。
6人目は長谷川。「彼は度胸がある、大丈夫だ」と思いながら見ていると、しっかり決めた。ここで上に蹴るとは、本当に強靭メンタルだ。
流れは完全に川崎側。みんなが泣きかけながら思いを声に出していたゴール裏は12年前のACLでの浦和ゴール裏並みにプレッシャーになったのではないか。心なしか新井が都築に見えてくる。
出てきたのは若い進藤。明らかに緊張していた。ボールをセットした際も完全に「外すやつ」の動き方だった。
「今にも心臓が張り裂けそうなこの試合、頼むからもう終わってくれマジで終わってくれ」と僕は思いながらそれを見届けた。進藤が蹴った方向に新井の体が動く。
終わった。
歓喜と青いテープに包まれるゴール裏。謎に走り出す新井。僕は一気に溢れ出る涙を止めることが出来なかった。
新井が止めて周りが湧いた瞬間から僕は大号泣したため、新井のトライも悠のガッツポーズも見れなかった。周りが見えるようになると、僕の友人が号泣する僕のことを動画で撮っていたが、まぁ悪い気はしない。近くにいた僕の家族には「泣くな!」と言われる始末。
あの時流れた2003★★は一生忘れないだろう。そのくらい最高の瞬間だった。
VARのチェックも済みゲームは終了。冷静に考えると死闘だこれは。
偶然なのか?
MVPは新井。そりゃそうだ。しかし新井もまた苦労人なのである。2012年にヴェルディから戦力外通告。トライアウトを経て2013年、川崎に第4GKとして入団。チームでは常に明るく、サッカーではひたむきに努力していた。しかしなかなかピッチに立てず初出場は2015年。新井は福森とともにベンチ外が続いていたのである。
2018シーズンまでの6年間での出場数はたったの37。ちなみに同じ6年間で中村憲剛は244試合に出場している。もう30歳になってしまった新井が報われた瞬間だった。
2017年の最終節を思い出してほしい。クラブ初優勝が決まったあの大宮戦では、最初に阿部が決め、悠が決めまくり、最後は長谷川が仕上げた。
何かこの試合と似ていないだろうか。最初に阿部が決め、悠が2点決め、PK戦最後のキッカーは長谷川である。
おまけに2017年の優勝決定の瞬間も今回の優勝決定の瞬間も新井は猛ダッシュしていた。
偶然なのか、どうなのだろうか。
天皇杯初優勝の瞬間が待ち遠しい。
ルヴァンカップ初優勝を飾ったフロンターレは急いで帰りラゾーナ川崎で優勝報告会。僕はというと疲れていたため近所のすし屋でとろサーモンを大量に頬張っていた。
帰って録画や様々な記事、SNS、動画をみて色々なことに気が付いたためメモ程度に残しておく。
まず試合前のPV。自虐を挟んだあの映像はフロンターレにしか作れない。正直最高だ。さらにコレオグラフィー。北海道の絵をゴール裏に描いた札幌、意地でもこのタイトルが欲しいという思いをゴール裏に描いた川崎、どちらも素晴らしいものだった。
今大会から初めて導入されたVAR。この試合だけでもかなり重要な役割を果たしていたが一体これはどうなのだろうか。僕は未だに完全賛成できない。誤審やアンラッキーな事件もサッカーの面白さとして僕は好きだ。来年からはリーグ戦でも導入ということで楽しみである。
PK戦が終わった瞬間倒れこんだ選手が2人いた。車屋と碧だ。車屋に関しては納得中の納得だが、なぜ碧がたおれたのか。実は7人目のキッカーが碧だったらしい。試合後のコメントからは半端じゃない精神のみだれを読み取れた。よく耐えた、碧。
僕は今でも思っている、「谷口が退場して逆に良かったのではないか」と。いや、そりゃ良いわけはないが、少なくともフロンターレに100%悪影響を与えたわけではない、と言いたいのである。この退場でもう失う物は何もない状態になったし、1人少ない分自分が頑張ろうと全員が思ったのだと僕は考えた。以前のフロンターレだったら確実に沈んでそのまま負けていた。そんなチームにまでなるとは、感動です。
フロンターレ、まだまだこれから
これでルヴァンカップ初優勝。
クラブとしてはまだ星3個。まだまだこれからだ。
川崎フロンターレは下から這い上がってきたクラブ。僕自身見始めたのはJ1で憲剛、ジュニーニョ、テセ、我那覇などが攻撃的サッカーを見せつけ始めた時期からだが、元々はJFL、J2にいたのだ。まだまだチャレンジャーである。
皆、鹿島を見てみるんだ。星20個。まだまだ長いぞこの道は。このストーリーは。
常勝川崎へ。さあ行こう。
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