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今年こそ叶えたいんだ!

「まぁーんじろー!!!いるかーい!!」

家の外で元気な大きい声が聞こえる。

 「いーるーよー!!今開けるねーー!!」

まんじろうも負けじと元気な声で返事をした。そして、ドアの前に立ちゆっくりと開けた。

 声の主はまんじろうの視界の先にはおらず、目を落とした先にいた。

 「ポンチョ!お疲れ様!無事に来れたようだね!」

 「うん!なんとか!まんじろうの住んでる地区は大きいぬいぐるみが多いから大変だったよ!」

 まんじろうはポンチョを部屋の中に招き入れて、砂糖多めのレモネードを手渡した。

 



 「ありがとう~!いやー、最近急に暑いよねぇー。換毛期終わったのに中々涼しくならないよー。まんじろうも換毛期終わったよね?」


 「うん!2週間くらい前かな?無事に終わったよ!あっ。ポンチョ、このお菓子食べる?マーガレットから、とあるお礼でもらったんだー!小さく切り分けてくるよ!ちょっと待っててー。」


 ありがとうーと言うポンチョの声を後ろで聞きながら、まんじろうは奥のキッチンにナイフを取りに行った。

 その間ポンチョは、まんじろうから貰ったレモネードを少しずつ飲んでいた。




 小さく切り分けられたバウムクーヘンを食べながらお互いの近況を話し合っていると、ポンチョがそういえば、と話し始めた。

 「ぼくこの間、近所のドーナツ屋さんに行こうと思ったら、ペンギンのぬいぐるみくんにつぶされそうになったんだよ〜。

 まぁ、ぼくはりんごサイズだから見えないのは分かるけどさー。結構大きいぬいぐるみにつぶされないようにするのは大変だなって最近思うんだよね〜。

 まんじろうも僕をつぶさないようにするの、気を遣うよね。なんか上手いことできないかなー。」



 ポンチョは、小さくて可愛い耳をピコピコと動かしている。ポンチョが何かを悩んでいる時に出る癖だ。するとまんじろうが不思議そうにポンチョに聞いた。


 「あれ、ポンチョ。体の大きさを変えられる泉があるの知らない?大きくなる泉と小さくなる泉。一日限定だけど、結構便利だよー?」


 するとポンチョは、え?そんな便利な泉があるの?と、小さな丸い目を更に丸くして驚いた。それを見てまんじろうは、ふふっと笑った。


 「でも、あれだよ?勝手に入ると怒られるからね?どっちの泉にも管理ぬいさんがいるし、使う前に色々手続きあるし。」


 「へぇ~。結構しっかりしてるんだね。てっきり自由に入れるのかと思ったよ。ちなみにどんな手続きするの?」ポンチョは興味津々だ。



 「どっちの泉でもやることは一緒。まずは身長をはかる。元々の身長をはかっておかないと後から大変だからね。次に名前とはかった身長と日時を用紙に書く。

 そして、ここが一番大事なんだけど、なりたい大きさのぬいぐるみを連れて行くんだ。管理ぬいさんが連れて行ったぬいぐるみと大きさを揃えるように調整してくれるんだって。」

 とまんじろうはポンチョに分かりやすく話した。

 ポンチョは、なるほど。と呟き、レモネードを飲み干した。



 「じゃあ、その泉があれば、これまで以上にまんじろうと色んなことができるね。

 これまでは、まぁ、ぼくが泉のことを知らなかっただけなんだけども、体の大きさが違うからって遠慮してたこともあって、誘わなかったこといっぱいあるんだ。」

 と、ポンチョは帰る支度をしながら正直に話した。

 「うんうん。分かる。ぼくもポンチョみたいに小さいサイズの子と遊ぶとき、泉のこと知る前は誘うのためらってたもん。」と、まんじろうもこれまでのことを振り返り、ポンチョに微笑んだ。

 ポンチョはまんじろうに微笑み返し、そしてキラキラと目を輝かせながら伝えた。




 「だからさ、今年はまんじろうと海にいきたいって思ってるんだ。去年は泉のこと知らなくて、誘えなかったんだけどね。今度一緒に計画たてようよ!いっぱい思い出つくりたい!!」


 「絶対に行こう!ポンチョの夢叶えてあげるよ!」


 二人は、そうしっかりと約束したのであった。


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