土木学会誌 第108巻 第8号 特集「土と木」
「土木」という言葉は、紀元前2世紀の中国の思想書「淮南子(えなんじ)」にある「築土構木」という言葉から取られた、と言われています(諸説あり)。近世になり、例えばお城をつくる場合などは「普請」という言葉が使われ、天守閣など建築物をつくることは「作事」と呼ばれ、今でいう「建築」分野との棲み分けが意識され始めました。
明治になり、土木の訳語として civil engineering が当てられ、日本における近代土木の分野の礎が築かれました。ちなみに civil engineering の反対語はmilitary engineering で軍事土木を指します。なので、僕は授業では少し大袈裟かもしれませんが、「土木は平和をつくる仕事だ」と話しています。
本特集の主査は日本製鉄(株)の中山裕章さん。「鉄屋さんが、土と木特集なんですね?(笑)」と問うと、笑顔で「研究開発畑が長く、チームワークを大切にして働いてきたから」と今回も編集担当チームに助けられた、と仲間を労う人柄が印象的でした。
DDメンバーであり、今回も編集担当を務められた川口 暢子さんも、本特集を絶賛され「前土木史委員会委員長の知野泰明先生が、とても喜んでおられました」とのお話に、僕も嬉しくなりました。パート1の知野先生も加わられた土木史×建築史×林政史の組み合わせが目からウロコで、分厚い歴史から、木を語り、土に思いを馳せる、総合工学としての土木の裾野を感じさせる座談会でした。
そしてパート4には、名古屋で新しい時代のインフラづくりを手がけられているHiroyoshi Morita森田さん登場!インフラをつくる側だけでなく、使う側も経済や環境について、地域文化として「ともにつくる、つかう」を考える時代になったことを実感できます。今号の特集も必読です!
土木学会誌は土木史だけでなく、広く社会と環境について学び、未来をつくっていく雑誌です。土木学会誌の袋を破いてもらう活動、実施中(笑)