映画が繋げる過去と未来

大学生の時、部室で映画を観ていた。顔も名前も知らない先輩方が撮った映画。画面越しに見える風景はよく知っているはずの場所なのに、知らない場所に見えた。知らない人達に会って映画を撮った時の事を聞いてみたくなった。
そんな不思議な感覚を後輩達が味わっているのだろうか。卒業して四年。もう私のことを知っている人がいなくなっているはずだ。脚本・撮影・編集・監督として流れてくる私の名前を後輩達はどんな想いで観ているのだろうか?
面白いと思ってくれていれば嬉しい。カメラワークが淡々としていてつまらない、なんて辛らつな感想を持ってくれたら。それはそれで自分の映画の反面教師にでもしてくれればいい。
そうやって次の世代に繋げていってほしいな、と思う。



以下小説↓
『過去作鑑賞』
部室の棚に並んだDVD。どれがどんな映画なのか、タイトルだけでは判別しにくい。悩んでも仕方がないと目についたものを適当に引っ張り出す。
プレイヤーにセットしテレビの電源を入れる。再生ボタンを押すと映像が流れ出す。
このカメラワーク好きだな。ピントが背景にあっちゃってる。そのエピソードはここの伏線になっていたんだ。ちょ、荷物映り込んでる。
感想は尽きなくて、あっという間に映画は終わってしまった。
次は何を観ようかな。棚を眺めていると背後で扉の開く音がした。首だけ振り返ると同級生が立っていた。
「お疲れ」
「お疲れ。何してるの?」
「過去作観てた」
「へえ。あ、それまだ観たことない」
一緒に棚を眺めていた同級生が指さす。指の先にあった作品は私もまだ観たことがないやつだった。ならば悩む必要はない。指定のDVDを取り出し、セットする。その間に同級生は観る準備を整えていた。
「なんかこの先輩、観たことある」
「色んなのに出てるからね」
「これ何処で撮ってるの?」
「校舎裏じゃない?」
「へえ。こうなってるんだ。今度使ってみよ」
二人で観ていると感想を言い合える。自分の呟きに反応があると嬉しいし楽しい。ああだこうだ言いながら観ていると先程よりも早く時間が過ぎた、気がする。映画の長さは大して変わらないのに。不思議だ。
「次はどうする?」
「うーん。何がいいか」
選んで感想を言いながら観て、の繰り返し。普段はあまり過去作を観ないが、たまにはこうやって観るのもありかもしれないな、と思ったのだった。

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