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【日記】三度目のフジロック

土曜、朝5時起床成功。全然眠いが、目をこすってシャワーを浴び支度をする。6時の電車に乗って東京駅へ。東京から新幹線に乗ること約2時間。車内はフジロック会場へ嬉々として向かう人々で埋め尽くされていた。9時半頃に越後湯沢到着、そのままシャトルバスで会場に向かう。シャトルバスが例年より本数多くなったのか、ほとんど並ぶことなく乗車できたのが良かった。

10時すぎに会場ゲート到着。3年目のフジロック、感慨深くもあり、もう脳内にマップが広がっていて余裕こいてる部分もあり。ゲートをくぐったら真っ先にレッドマーキー奥のドラゴンドラ乗り場に向かう。初めて行ったけど、乗り場までの傾斜キツすぎだろ。会場に着くまでよりも遥かにHPを奪われた。そこから30分間ゴンドラに揺られて、フジロックのステージの中で最も高い場所にあるDay Dreaminへ。

デリドリーミン、通称デイドリはお子さん方が多く、大きなシャボン玉を掴んで遊んでいたり、朝からコーヒーやビールを販売していたりと楽園みたいな空間だった。高いところにあるため風が涼しく穏やかだったのも大きい。PAS TASTA(以下パスタ)の待機中、万珍醸造のジャスミンティーセゾンで飲み始め。新潟ガールことyさんにも会えた。それと長年Xで相互フォローの男性にも会って、お互いに「古のフォロワーだから感慨深いですね」という話をした。目の前であまねさんが誰か関係者と思しき人と立ち話をしていたが話しかける勇気はなかった。

苗場の、それも初めて訪れるデイドリのステージで観るパスタは本当に文字通り最高だった。ドームの中で自由に音楽をかけ、踊り遊ぶ6人衆、かと思いきや途中であまねさんがドームを飛び出てハンドマイクでpeanuts phenomenonを歌ったり客側にマイクを向けて煽ったりして、60分のセットリストが体感一瞬でおわった。kabanaguがポーターロビンソンのSomething Comforningとパ音のhikariのマッシュアップをかけて次に繋げているのも良かった。普段彼らを観る薄暗いクラブのフロアとはまた違い、至極開放的で、彼らのプロフィールにある「音楽をする6人組」という文章が的確に体現されたパフォーマンスだった。

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デイドリを後にして下りのゴンドラに乗り、グリーンステージへ。TLDPがちょうどラスト数曲といったところで、聴きたかったNothing Matterを演奏しており歓喜。戦闘力の高いディズニープリンセスみたいだなと思う。バンドの首謀者であるアビゲール以外のメンバーと活き活きと己を主張していてかっこいい。裏ではシロップ16gが演奏していてとても観たかったが、タイムテーブルの都合上無理そうだったのとTLDPに関してはこの前の単独公演に行けなかったのでここで無事消化できて良かった。

その後、ホワイトステージに移動して折坂悠太を少し観る。このときが最大ぐらいの照りつける日差しのもとで穏やかに山々にこだましながら伸びる歌声、意外にも折坂のライブは初めてだったがこんなに優しくユーモアに溢れているのかと感じて新鮮だった。新譜からの曲も多く、努努でギターとサックスの太鼓相撲を行司としてオーディエンスに示す折坂の立派な口上に思わず聞き惚れた。

一旦ステージエリアを後にして、キャンプサイト奥にあるピラミッドガーデンへ向かう。昨年は途中で近道ができたはずだが、今年はシャトルバス乗り場の奥まで回っていかないといけないらしく、ほぼ競歩であった。あまりにも遠すぎて着く頃には疲弊していたが、たどりついた先には大好きなアマクサソナーのヘッドブルワー・荒木さんと、WateringHoleのオーナー・Yuyaさん。二人にアマクサハンターが来たぞ!と迎えられながら、フジロックスペシャルのスムージーサワー・NekoNekoリターンズを飲む。yさんと、彼女のお友達も一緒だった。会計中、隣で見覚えのある顔が…と思ったら松田龍平がハイボールを買っていた。俳優はクラフトビールの出店でもきちんとハイボールなのだなと思った。とわ子の印象が強く、要するにめちゃくちゃかっこよかった。奥にマヒトもいたのでおそらく御一行なんだろう。
一瞬で飲み干して即刻おかわりスムージーをした。後半戦に向けての栄養補給ということで。

荒木さんにまた明日も来ますねと伝えて、キャンプサイトエリアを通り抜けてレッドマーキーまで戻る。ちょうどフレシノのリハ中で、youthを演奏していたのでラッキーだった。それにしてもホワイトのくるりから瞬間移動して切り替える石若駿は超人すぎる。フレシノの後はヘッドライナーのクラフトワーク。テクノというジャンルの礎であり、もう還暦をとうに過ぎたバンドがこうして日本でライブをやるなんて異例も異例だ。本当はgirl in redを梯子したかったが、あまりにも目を見張るパフォーマンスだったのでそのまま居座ることにした。教授を生涯の親友だと伝えて演奏された戦メリのカバーには胸を打たれるものがあった。The Robots〜Dentakuを聴きながらゲートに向かう。混み始める前にシャトルバスへ乗り込みたかった。

23時半頃に湯沢駅へ戻って、そこからタクシーを拾い予約していた旅館に向かう。途中コンビニに寄ってもらうも混雑していて運転手の方を待たせてしまい申し訳なかった。旅館に無事チェックインして、ヘロヘロになりながら温泉で汗や泥を流し、上がってから買い込んだグレープフルーツのチューハイを飲んで軽く食事をして合宿スタイルの大部屋に向かい、指定された布団に倒れ込むようにして寝転んだ。が、アドレナリンが出ていてあまり眠る気になれず結局2時頃に寝た。

日曜、朝7時頃目が覚める。周りのフジロッカー女子たちはまだ寝てる人が大半だったので、起こさないように大浴場へ向かった。露天風呂があって、外気浴をしながら少しの時間楽しんだ。全然疲労は抜けていないけど向かうしかない。旅館を後にして、9時頃のバスで今日も苗場へ。最終日開始。

昨日の反省を踏まえて先にピラミッドガーデンに行き、朝スムージー活を済ませる。それからFILED OF HEVENで菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールを観た。SPANK HAPPY後期リスナーとしてこのタイミングで菊地成孔が観られるのはラッキーだった。色気を帯びた歌声は朝というより本人も言う通り夜向きだったが通り雨も相俟って艶っぽく聴こえた。それから引き続きCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN。名前は知ってたが、うすらぼんやりと聴き流してた程度だったので楽しみにしてた。女性ボーカルを迎えてのセットで、ワタツミの軽やかな民謡的メロディに折り畳み椅子の上で体が踊った。このタイミングで弾丸で来たという友人二人にも会って、一緒に写真を撮るなどした。

ナガノで失礼しますね〜

グリーンステージで関西在住のライターのMさんと落ち合い、共にクリープハイプを観る。尾崎世界観が金髪だった。MCで、「僕らはいわゆるロキノン系として淘汰されることが多く、音楽リスナーの人から舐められがちなんですけど、ロキノン系としての音楽をここ苗場で鳴らしていきたい(意訳)」ということを言っていたのが印象的だった。自分はそれこそ高校時代にロッキン、ビバラ等のロックフェスでライブキッズとしてのマウントを取ってきた(?)タチなので、年を重ねて苗場の地で彼らと再会できることは思わぬ幸運というか、ここでそうやって言い張れる彼らのことを頼もしいと思った。ほとんどがおそらく新曲でわからなかったけど、ホワイトへ移動しているときに聞こえた「社会の窓」にあの頃を少し懐かしんだりした。

ホワイトでジザメリ。Mさんとフロア前方に進み、良い位置でジムとウィリアムの二人を観ることができた。Psychocandyからおよそ35年、演奏もボーカルも音源より厚みがありながらもなめらかな質感を帯びていて聴き入りやすかったと思う。途中でジムの恋人が登場して、手を繋ぎながら新曲を二人で歌唱するシーンには一同ドン引きだったけど、終盤に貫禄たっぷりのJust like honeyを聴けたのでそんなことはどうでもいいどころか回収されてしまった。

Mさんと別れ、レッドマーキーでFontaines D.C.。彼らの存在はメディア編集を務めていたときから認知していたけど、正直何がいいのかわからなかった。昨年のアルバムが自分にはわかりにくく、イマイチ熱狂的なムーブメントにノれなかった。が、直近出した先行シングル2曲が明朗なメロディとシューゲイズ的サウンドのバランスが良く成り立っていたので楽しみだった。まるでロンドンでshameを観たときのようなオーディエンスの(文字通りに狂ってしまったかのような)熱狂っぷりに驚いた。フロントマンであるグリアンが大きく両腕を振って指揮棒に見立てて観客を煽り、コールアンドレスポンスやクラップを要求し、さながらマーキー、いやこの一大フェスティバルの支配者のような風貌でフロアを一望していた。ダークさとオルタナティブの両側面を持つバンドの秘めるポテンシャルを垣間見て、ここまでの人気を誇るのも合点がいった。8月後半にリリースされるアルバムが今から待ち遠しい。

そのまま同ステージでRIDE待機。気付くと最前列にいた。待機中にフジロック公式のインタビュー動画でマーク・ガードナーが「君たちの大好きな曲も演奏するよ」と話していたのでハナから期待しかしていなかったのだが、2曲目に自分が心底聴き惚れたLeave Them All Behindを演奏してくれて興奮で死ぬかと思った。なぜならこの曲はペリカンファンクラブが超初期の頃にSEにしていた曲で、自分にシューゲイザーという音楽カテゴリがあることを明確に示してくれた曲だからだ。波打つように反響しあうギターの音色とパワフルなドラムの打音に耳を刺激されながら身体を揺らす、あまりにも気持ちいい。ああ、今年はこの曲を聴くためにここに来たんだなと確信した。新譜からPeace SignやLast Frontirなどキャッチーな曲も挟みつつ、ラストに「せっかくだからもう一曲やろう」と急遽Chelsea Girlをセットリストに組み込んでくれてもう大満足でしかなかった。ライドはシューゲイザー御三家と呼ばれる中の1組だが、シューゲイザーというジャンルの垣根を飛び越えて常に実験的な音を鳴らしながらリスナーを自分たちの中に取り込んでいくのに長けていて、そこがキャリアが何年経とうとも色褪せない所以なのだろうと思う。

マーキーのステージから人が掃けて、呆然としたままオアシスエリアを歩いていると後ろから突然声をかけられた。今年の頭まで付き合っていた元恋人で、元気?と聞かれた。来てるのはインスタ経由で知っていたが、大学生なのに二日間なんてバイト代から引かれるの大変だろうに頑張ったね〜という気持ちで見ていた。元気だよ、イギリス行くのは変わらず?、うんまあ上手くいけば、という当たり障りのない会話を経て、じゃあ友達探しに行くから、と手を振った。友達探しに行くというのは嘘なのだけど、ここから同じステージを観ようとなろうものならどうなるかが未知数で危うかったので避ける選択をした。年下の男の子って恋愛対象として見るには苦手だ、という意識は変わらないけど。

小腹がすいたので屋台でロングポテトを買い、グリーンステージ後方でノエル・ギャラガーを観ていると、ぽつぽつと降り出していた雨がやがてそこそこの大雨になり、皆木の下に避難するか、カッパやジャンパーで身体を保護していた。自分も寒くなってきたのでリュックからゴアテックスを取り出す。ノエルがちょうどWhateverを歌い出したときだった。会場は湧いていたが体温はどんどん下がっていく。フジロックでこんなに降られたのは初めてだった。もう終演間近で、体力も底を尽きていたので、ゲート先の売店兼休憩所まで戻ることにした。もったいない気もしたが致し方ない。何か買う人、寝る人、食べる人、たばこを吸う人、色んな人を見かけながら半目で仮眠をして、朝4時半頃にシャトルバス乗り場へ向かう。まだまだ来ないだろうと思っていたらもう走り出していて、越後湯沢から東京に向かう始発の新幹線に乗ることができた(代わりに席がなくてグランクラスだったけど)。

朝7時すぎ頃に東京駅に着いた。少し前まで寒い寒いと言ってたのが嘘みたいな暑さ。もう限界かも…と足を引きずるようにしながら帰路をたどり、リュックを投げ捨ててシャワーを浴びてからチューハイを少し飲み、昼まで寝た。

3年目のフジロックはエリアマップも頭に入っていて、かつ環境整備が年々拡充されており野外フェスとして比較的快適な印象を持った。とはいえ、どうしてこんなに体力を削がれるアンドお金を削られるのに来ようと思うのか?については、最早儀式みたいな気持ちで来ている部分も大きいかもしれない。行けば何かが変わるじゃないけど、自分の中の対音楽意識みたいなものを再確認する場としても機能しているように感じた。人と空間と演者と、すべてが折り重なって毎年夏に苗場へ誘ってくれる。来年自分がどこにいようとも、変わらずここにいたいと願っても、フジロックという日本が誇る音楽の祭典で変遷する音楽シーンのリアルを見つめていたいと思う。


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