刺激
学校をサボる決意をしたのは、卒業までの出席日数を揃えてからでした。また、授業に出る意味を見出せなくなった決定打は、英語の先生がregion(地区)をreligion(宗教)と言い間違えたことでした。浅はかにも”俺よりこいつは馬鹿だ”と思ってしまったのも受験のせい。
入試なんざ他を圧倒してなんぼ。いかに周りを出し抜くかが合否を分ける。それなのになぜクラス単位で仲良しこよし足並みを揃えなければならないのだ。人と同じ事をして勝機を見出せるわけがない。こんな思考に至った挙句サコッシュに筆箱と折り曲げたプリントをねじ込み、受験生らしからぬ軽装備で学校に行くようになりました。
日本史だけは心をときめかせて授業を受けました。大概の生徒が爆睡する中、自分のために授業が行われているとでも錯覚していたのでしょう。基本的には4限に登校し、昼休みは人と喋り、5限のチャイムと同時に自転車に跨り家路に着く。これが受験前のルーティーンだったのです。
しばしばマックに行ったり、神社に合格祈願へ友人と行く、これが至高の楽しみでした。そんなある日、3人で例により5限のチャイムのタイミングでチャリに乗り学校を出ようとしたときのことです。
”おお、君ら何してるんや”
どうもこんにちは校長先生。すると即座に一人が、
”体調悪いんで帰ります”
脱帽、頭の回転の速さに。無論、江上の脳は無回転。まあ、3人同時に帰る理由が体調不良な訳はないのだが、それにしてもあの返答速度はずば抜けていた。学校を出て、結局どこへ行ったかは覚えていない。ただ繰り返しの日々に刺激を与えてくれた瞬間だったことは確か。
そんな歪んだ青春は帰ってこない。チャリで出かけた日曜も、ギターをビニール袋に巻いて雨から守って帰った放課後も。学校をサボって買ったマックのポテトだってもう二度と味わうことが出来ないのだ。
オチが見当たらない。どうしたものか。洒落たオチもなければ話を締めくくるエピソードもない。とりあえず響きそうな言葉を列挙してみたものの、締め括れませんでした。ただ『人間失格』みたいな入りで文章が書きたかっただけなのです。
小2の頃、あまりにサッカーの練習が嫌すぎてソックスが履けないとわめきサボった話はまたどこかで。
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