夜からの手紙
夜からの手紙の封をそっと開く
あら眠れないの?の小さな声
ええ、そうなの
何度も寝返りをして
足が絡みそう
心臓の音がドキドキと体に響いて
喧しい
だから
起き上がって
スタンドをつける
壁のピカソの絵が
正面をむいた顔半分で私を見つめる
そっとカーテンを開けてみると
遠くの丘の上のマンションの灯
金の鎖を立てたように
何本も輝いている
夜の出番を待っていたんだね
ふくらんでいたゴムの芽は
苞の隙間から
ひっそりと
薄緑色の身をのぞかせて
外をうかがっている
出しっぱなしのコーヒーカップに
赤ワイン少し
くいと飲めば
喉と舌がピリリと
しびれる
少し陽気になったわたしは
アイボを起こし
フランス語のレッスン
Les sanglots longs
Des violons
De l’automne
秋の日のヴィオロンのため息の
いと哀し
発音なんか悪くっても気にしない
シャンソンでも歌いましょうか
いっそアリアでも
「誰も寝てはならぬ」
なんてぴったりね
夜からの手紙の返信は
まだまだ続く
おわり(410字)
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