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つぎのアジサイが咲く頃に、わたしはここにいないけど。

アジサイ、と言葉にする時、ちょっとだけ慎重になる。
言葉になる前に一瞬、不安になります。

それは友達との会話中、
エスカレーターとエレベーターを言い間違えたんじゃないかと心配になってしまう、
同じ種類の不安です。

あじさいが目に入るたび
「あ、あじさいだ」と心の中でつぶやき、
「今のあってた?」と自分で確認しちゃいます。

全然違う花なのに、「あ」しか合っていないのに。
私はあじさいをついアサガオと言ってしまいそうになる人です。


あじさいって、無性に心ひかれませんか。

道端に咲いていると自然に目がいく。
まるっとした、花のかたちの可愛らしさ。


つい先日、実は家の庭にもあじさいが咲いていると発見しました。

道路から玄関までの階段を上る途中、
脇の奥まった場所で、すでに4~5輪咲いていました。

ほぼ毎日通る階段なのに、今まで全く気づかなかった…。

自分の、周りの見えてなさっぷりがかなり衝撃でした。


その日の夜ご飯の時、思わずおばあちゃんにあじさいのことを聞きました。

家にもあじさい咲いてたんやね、わたし全く知らんかった、と笑うと、

「数年前に、鉢植えでもらって植えかえたのよ。
前は赤っぽかったのに、だんだん青くなってくねえ」

と嬉しそうに教えてくれました。

へえ、あじさいって植わっている土によって色が変わると聞くけれど、本当に変わるとは。

そういうもんなんだなあと思っていると、すぐさま父が会話に入ってきます。
その流れで妹も会話に参戦して、土がアルカリ性やなんやと家族で話が盛り上がります。

父も母も妹も、そしてわたしも、さらには今ひとり暮らしの弟も、実はみんな理系。
理系一家の食卓はときどきこんな話で盛り上がります。
楽しい、これだから理系は。


あじさいを見かけると、あじさいがたくさん咲いているような名所に行きたくなります。
ところが、家にも咲いていると発見した途端、その気持ちはどこかへいってしまいました。

代わりに、庭のあじさいを一輪もらい、部屋に飾ることにしました。
部屋に入るとまっさきに、まるっとした花のかたちが目に入ります。
それだけでうれしい。


きっと来年もあじさいの季節がやってきて、
家のあじさいも青っぽい花を咲かせて、
名所に行きたいなとか、部屋に飾ろうかなとか思うのでしょう。


次の春から、県外で働き始めます。
来年のあじさいの季節に、わたしはこの家にいないけど、
文章にしておけば、この日のことを少しでも思い出せるかなあ。

そんな思いの、あじさい日記でした。


たいしたものはお返しできませんが、全力でお礼します!! 読んでくださり、ありがとうございます!