知的な資産も複利成長するということ
年齢が上がってくると、物忘れや言い間違い、ぱっと言葉が出ない、といったことが増えてきた、と感じることがあります。
年相応、誰にでもあること、と思いつつも気になります。
頭の働きは、やはり、歳を重ねるごとに衰えていくものなのでしょうか?
案外、そうでもなさそうなのです。
いわゆる「知能」には、年齢が上がるにつれて衰えるものばかりではなく、長く維持されるもの、人によっては成長していくものもある、ということが分かっているようです。
加齢と知能の変化に関する理論を研究した英国生まれの心理学者 レイモンド・キャッテルは、知能を、記憶や計算、直感など、素早く物事を処理していく流動性知能と、言語や洞察、理解、創造など、経験や学習などから獲得する結晶性知能とに分類して、流動性知能は20歳代をピークに徐々に減少していくものの、結晶性知能は20歳代以降も上昇し、高齢になっても安定しているとしました。
この話を聞くと、少しほっとするとともに、結晶性知能を高め、維持していくにはどうすれば良いだろうか、と興味が湧いてきます。
その後の研究成果もあり、やはり言語による能力を鍛えること、たとえば読書などは、結晶性知能を高めるひとつの大きな力となるようです。普段からいろいろなことに興味を持ち、関連する本を読み、関心を広げ掘り下げる、といったことを続けることが推奨されています。
参考:「高齢期における知能の加齢変化」公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
この話に関連して思い浮かべるのが、著名な投資家ウォーレン・バフェットの「右腕」とも言われるチャーリー・マンガーの読書。90歳代でなお現役のマンガーの人生観のひとつが「読書による勉強を続けること」であることを、ふと思い出しました。
「マンガーは、・・・・新しい知識を得るために、1日1時間独学することにした。・・・・何年も続けるうちに数千冊分の知識が蓄積されていった。異なる分野の知識が頭のなかで相互作用をもたらしたり、まるで複利運用のように知識の量が加速度的に増え始め、私たちが住む世界についてより理解を深めることができた。彼は、90歳を超えたいまのほうが50歳のときよりも投資家としてずっと進歩したと言っているが、彼はそれを知識の複利効果だと考えている。」
(デビット・クラーク著『マンガーの投資術』\日経BP社)
ここまで来ると結晶性知能が複利で成長しているイメージです。
複利で増えるのは金融資産だけでなく、知的資産も同じ。
マンガーのような超人的な読書を真似ることはとてもできませんが、急に結晶が溶け出してしまうことのないように、普段から少しでも心掛けていきたいと思います。