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電磁気学について[速習!]


電磁気学の考え方を読んで

電磁気学は大学物理の中でも必修である。力学については以前「力学の考え方」という同シリーズの本を読んだので今度はこちらを読んでみた。読んだ目的は数学概念に対して物理サイドの直感が欲しいからである。目下の目標としては量子力学を目指している。

この記事を読む上での前提知識は物理は運動方程式$${F = ma}$$を見たことがある程度で良いと思いますが、数学についてはベクトル解析を必須としています。あと個人的にシンプルな書き方が好みなので積分範囲や変数を書かなかったりしています。気になる方は場合によって埋めてください。しかしざっくり読むだけなら細部に拘る必要はなくストーリーだけ読んで良いと思います。それとマクスウェル方程式に何度も目線を移したりしますので必要に応じて記事を2ブラウザで開き片方を参照専用にしておくと煩わしさはないでしょう。マクスウェル方程式の理解を目的としてなるべく寄り道をせずに天下り的に記事を構成しています。

記事の読み方

本の目次

  1. 電磁気学とはどんな学問か

  2. 近接作用と生電場

  3. さらに静電場について

  4. 定常電流

  5. 静磁場

  6. 電流にはたらく磁場の力

  7. 時間的に変動する電場と磁場

  8. 電磁気学の基本法則

  9. 電磁波

  10. 電磁波の放射

マクスウェル方程式

$${\mathrm{div D} = \rho}$$(マクスウェル-ガウスの式)
$${\mathrm{div} B = 0}$$(磁束保存の式)
$${\mathrm{rot} E + \frac{\partial B}{\partial t} = 0}$$(ファラデー-マクスウェルの式)
$${\mathrm{rot} H - \frac{\partial D}{\partial t} = i}$$(アンペール-マクスウェルの式)
ただし、$${E}$$は電場の強度、$${B}$$は磁場の強度、$${D = \epsilon_0 E}$$は電束密度、$${B = \mu_0 H}$$は磁束密度、$${\rho}$$は電荷密度、$${i}$$は電流密度、$${\epsilon_0}$$は真空の透電率、$${\mu_0}$$は真空の透磁率

マクスウェル方程式

上記方程式系がマクスウェル方程式と呼ばれる電磁場を支配する方程式であり、これを理解することが電磁気学という事らしい。後で再訪するとして記号のみを簡単に解説する。まずユークリッド空間にて電場と磁場と言う考え方がある。電場$${D}$$は電荷粒子$${q}$$から発生するクーロンの法則から導かれる直感的に電気っぽい力を持つベクトル場の事である。同様に磁荷を仮定し、クーロンの法則から導かれる場を磁場$${B}$$と呼ぶ(※1)。$${D}$$、$${H}$$はそれぞれ電場、磁場の定数倍である。

※1・・・本当は電流(※電荷の移動)によって発生する場が磁場である。磁荷は観測できていない。

遠隔作用と近接作用

最も基本となるのは点電荷$${q-Q}$$間に生じるクーロンの法則$${F = \frac{1}{4\pi \epsilon_0}\frac{qQ}{R^2}}$$である。これは形式的に万有引力$${F=-G\frac{mM}{R^2}}$$にそっくりであるがクーロンの法則は引力の他に斥力が存在する点とクーロンの法則は万有引力が与える力の$${4.2 \times 10^{42}}$$も大きいという点が異なるので現時点で別法則である。さてこのような表記は何気ない様で遠隔作用の力の表記になっている。つまり点電荷$${q}$$、$${Q}$$は距離的に離れておりその隙間は中空である。(※いかに近かろうと2点を取るという行為は離散的であり、ユークリッド空間と言う連続的な空間においては必ず中空部分がある)。それがどうしたと思うかもしれないがこれを近接作用系表記に直すというのが物理学のアイディアである。(※物理学とは法則の拡大解釈によって進化する学問である)。近接作用とは何かというと、電荷$${Q}$$があればまずそこに空間のゆがみが生じる(※電荷$${Q}$$が鉄球でそれをブルーシート(※2)の上に乗せるとシートがゆがむイメージ)だろう、このゆがみの影響を電荷$${q}$$が受けることで電荷間に引力や斥力が発生するということである。この近接作用という拡大解釈を実現する為の本質はクーロンの法則を$${F = qE}$$、$${E = \frac{1}{4 \pi \epsilon_0}\frac{Q}{R^2}}$$という2式に分ける事である。こうすると点電荷$${Q}$$が電場$${E}$$をまず齎し、その後電場から受けた力を基に電荷$${q}$$に力$${F}$$が働くというストーリーが与えられる。$${E}$$の式にある$${R}$$は電荷$${q}$$との距離であったので、近接作用の考え的には$${R = | x - r_Q|}$$と直すのが良いだろう。これにより$${E = \frac{Q}{4 \pi \epsilon_0}\frac{x - r_Q}{| x - r_Q|^3}}$$となる。更に電荷$${Q}$$が密度$${\rho}$$により連続的に分布しているときは$${E = \frac{1}{4 \pi \epsilon_0}\int \frac{(x - x')\rho(x')}{| x - r_Q|^3}}$$となる。これで電場を空間に対して連続的に記述することが出来た。さてマクスウェル方程式の第1式$${\mathrm{div} D = \rho}$$を見ていただきたい。これは電場の湧き出し(※発散)$${div D}$$は電荷密度$${\rho}$$と等しい事を意味する近接作用の式でありガウスの法則と呼ばれる。電荷が存在しなければ(※$${\rho = 0}$$)無から電場が湧き出す事は無く、電荷密度が湧き出しそのものであるという事である。この洞察によりマクスウェル方程式の第2式$${\mathrm{div} B = 0}$$は磁荷の非存在性を意味する。磁場というのは電流によって発生するものであって、右ねじの法則により電流を囲むように磁束線は閉曲線を構成する。その磁束線の任意の断面において流入と流出が等しいのならばその発散は0なのである。(※定常電流に対しても同様の保存則が成立し、電場と磁場は表裏一体の関係にある)

※2・・・このブルーシートはゆがみを媒介する空間に満ちた目に見えない何かであり、これを物質によるものだという仮説がその昔主流であった。この実在するであろうブルーシートはエーテルと名付けられた。このことは自然な発想であるが物理学的にそれは観測されなければならないだろう。これを観測する為に電波に対する実験(※マイケルソン-モーレーの実験)が行われた。エーテルなる水面を媒介とし進む電波は地球の公転に対して相対的な速度になるはず(※エーテルがもしこの宇宙に普遍的に存在するものならば地動説により地球に対しては動いて観測されなければならない)である。しかしこれは棄却された。。今では空間は単なる座標のみが存在するだけの空の存在では無く、それ自体がゆがむという性質を持っているという受け入れられ方をしている。一体空間とは何なのだろうか?

(復習)万有引力ポテンシャル

第3式と第4式に入る前にニュートン力学における万有引力とポテンシャルについて復習しておこう。一般に力$${F}$$が何らかの関数$${U}$$のgradientによってあらわされる$${F = -\mathrm{grad} U}$$時に関数$${U}$$をスカラーポテンシャルと呼び、力$${F}$$を保存力と呼ぶ。運動方程式に従っている力がポテンシャルを持つとき力学的エネルギー保存則$${E = \frac{1}{2}mv^2 + U(r) = }$$(一定)が成り立つ。gradient formの両辺を積分するとポテンシャルを持つという事は$${U(r) = - \int_{r_0}^{r} F\cdot dr}$$という$${U}$$の存在を意味しており、即ち右辺の仕事(※力が$${r_0 \rightarrow r}$$に向かって線路上作用している。その積分なので仕事と定義して良い)が端点のみによって決まるという条件を意味している。ニュートン力学系のなす技は仕事であるが、即ちポテンシャルを持つ力におけるそれは当該オブジェクトの位置によって(潜在的に)記述可能と言う条件なのである。つまりこの$${U}$$はポテンシャルと呼ばれるのにふさわしいと言える。またこれは位置エネルギーと同じである。エネルギー保存則は運動方程式に対して$${v}$$を内積し$${m\frac{dv}{dt} \cdot v = F \cdot v}$$、積分すると$${\frac{1}{2} m v_2^2 -\frac{1}{2} m v_1^2 = \int_{r_1}^{r_2} F \cdot dr}$$が導かれるので結局$${E = \frac{1}{2} mv^2 + U}$$が保存されることになる(※詳細は読者に任せる)。運動エネルギー$${\frac{1}{2} mv^2}$$は位置エネルギーに対するニュートン運動系に対するcomplementみたいなものであろう。ここまでが一般論であるが、さて万有引力とは$${F=-G\frac{mM}{R^2}}$$なる力の事でありこの力の系(※重力場)が与えられたとする。この時の万有引力ポテンシャルは単に計算により探せばよいだけなので簡単であろう。$${U=- G\frac{mM}{r}}$$となる。

静電ポテンシャル

話を戻す。マクスウェル方程式の第3式(ファラデー-マクスウェル)は磁場変位の無い静電場においては$${\mathrm{rot} E(x, t) = 0}$$であるが、$${\mathrm{rot} = \nabla \times}$$形式を鑑みると$${E}$$がgradient form(※$${\mathrm{grad} = \nabla}$$)を持つ事が必要十分(※一般に外積$${a \times b}$$の大きさは2つのベクトルが作る面積)である。しかしそのことは静電場がポテンシャルを持つ事に同じである。(記事内で述べた)クーロンの法則で静電場の力が与えられているので計算により静電ポテンシャルは$${\phi = \frac{1}{4 \pi \epsilon_0}\int \frac{\rho(r')}{| r- r'|}}$$となる。議論を少し整理すると万有引力は保存力であったが、同一形式のクーロン力も保存力であり、その近接作用versionも保存力である(※トートロジーな言い方になってしまうが具体的にポテンシャルを発見できるので)故静電ポテンシャルが定義出来、その観点からファラデー-マクスウェルは単に必要条件という事である。ただし時間変位の元のファラデー-マクスウェルは次節。

ファラデー-マクスウェル方程式と電磁ポテンシャル

電磁ポテンシャルについて述べる前に少し前準備をしよう。

  1. マクスウェル方程式第2式(※磁束保存の式)$${\mathrm{div} B = 0}$$はスカラーポテンシャルを持たないが、$${\mathrm{div} = \nabla \cdot}$$という形式から$${\nabla}$$に直交するベクトル値関数が解である。ここで外積の直交性に着目すれば$${\mathrm{rot} A = \nabla \times A}$$が解として妥当であろう。この$${A}$$をベクトルポテンシャルと呼ぶ。

  2. ファラデーの電磁誘導の法則について。ファラデーはドーナツ状の鉄に2組のコイルを巻きつけて、その一方に電流を流して鉄環の中に磁場を作り、第2のコイルに電流が流れるかを実験した。その際に第1のコイル内の電流が一定に保たれている時は第2のコイルに電流は流れなかった。しかし、第1のコイルのスイッチを入れた瞬間と切った瞬間にだけ第2のコイルに電流が流れた。これを電磁誘導の法則と呼ぶ。即ち第1のコイル内の電流が作り出す磁場が第2のコイルが作る面(※作る面と言うのはコイルをしゃぼんに入れ出来る膜の事。但し形は何でも良い)を貫くその磁束の変化量によってのみ電流が発生するのである。これがマクスウェル方程式第3式の右辺における電磁誘導項$${\frac{\partial B}{\partial t}}$$である。つまりこれは磁束一定の静電場には本質的にない項であり変位電流が本質となる項なのだ。因みに第3項は遠隔作用なる積分形で記述すると$${\int_{C_0}E \cdot dr = -\frac{d}{dt}\int_S B_n dS}$$となり、$${\int_{S} B_n dS}$$が円環$${C_0}$$が作る曲面$${S}$$を貫く磁束なのでその変位が円環$${C_0}$$上の電場の強さであるという形式になっている。$${\mathrm{rot}}$$とはそれを近接作用で書いたときの左辺の周回積分にあたる部分なので回転(rotation)と呼ばれる。磁束の変化$${\frac{\partial B}{\partial t}}$$は回転に作用する。

さて話を戻す。前準備1から磁場はrotation form$${B = \mathrm{rot} A}$$で書かれるので、ファラデー-マクスウェルの第一項と統一的である。こうすると$${rot (E + \frac{\partial A}{\partial t}) = 0}$$となり即ち保存力である。即ち計算により変位する電場に対しても電磁ポテンシャル$${E = -\frac{\partial A}{\partial t} - \mathrm{grad} \phi}$$を持つのである(※$${\phi}$$と$${A}$$をまとめて電磁ポテンシャルと呼ぶ)。

アンペール-マクスウェルの法則

マクスウェル方程式の第4式はアンペール-マクスウェルの法則と呼ばれる。その前に静磁場と電流について述べておく。

  1. 静磁場においては$${\mathrm{rot} H = i}$$が成立する。$${i}$$を電流密度と呼ぶ。ファラデー-マクスウェルの方程式で同じような考察をしたが右ねじの法則から電流密度$${i}$$は磁場の強さ$${H}$$の回転に作用する。

  2. $${\mathrm{div} i = 0}$$を定常電流保存則と呼ぶ。これは導線のどこで切っても電流は同じという意味である。

電流とは電荷の移動の事なので、その発散は電荷密度の時間変位であるというのを電荷保存則$${-\frac{\partial \rho}{\partial t} = \mathrm{div} i}$$という。これが時間変位に対する電流の保存則に該当するものである。この時にガウスの法則$${\mathrm{div} D = \rho}$$を考慮すれば変位電流に対するアンペールの法則は$${\mathrm{rot} H = i + \frac{\partial D}{\partial t}}$$となる。

ローレンツ・ゲージの電磁ポテンシャル

以上でマクスウェル方程式の説明は終わりであるが、第2式$${\mathrm{div} B = 0}$$はベクトルポテンシャル$${A}$$の存在を、第3式$${\mathrm{rot} E + \frac{\partial B}{\partial t} = 0}$$は電磁ポテンシャル$${\phi}$$(と$${A}$$)の存在を示唆していたのでポテンシャル$${A, \phi}$$の形は残りの第1式(マクスウェル-ガウス)と第4式(アンペール-マクスウェル)が決める。計算が長くなるので結果だけ述べるが、マクスウェル方程式を満たす1つの電磁ポテンシャルについて述べた方程式系がある。つまりマクスウェル方程式をポテンシャルサイドから記述したものである。

$${E = -\frac{\partial A}{\partial t} -\mathrm{grad}\phi}$$
$${B = \mathrm{rot} A}$$
$${(\Delta - \epsilon_0 \mu_0 \frac{\partial^2}{\partial t^2})A = - \frac{\rho}{\epsilon_0}}$$
$${(\Delta - \epsilon_0 \mu_0 \frac{\partial^2}{\partial t^2})\phi = -\mu_0 i}$$
$${\mathrm{div} A +\epsilon_0 \mu_0 \frac{\partial \phi}{\partial t} = 0}$$

ローレンツ・ゲージの電磁ポテンシャル

この方程式は後半3つの系でポテンシャル$${A, \phi}$$を決定する事になる。前半2つの式は電磁ポテンシャルから$${E, B}$$が書かれるという事だけを言っている。第3式、第4式を見てその波動方程式の解を求める事が目下の課題である。第5式はローレンツ条件と呼ばれるものである。第3式、第4式の波動方程式の解が満たすべき性質であり、解候補を選定する役割を担っている。

その先の話題

遅延ポテンシャル

電磁場とは電荷密度$${\rho}$$の連続的分布が齎す空間なのでその波動として求まるポテンシャル$${\phi(r, t)}$$(や$${A(r, t)}$$)は波動の発生位置$${r'}$$によって考慮すべき過去の時間(※発信時刻)が異なる事になる。この洞察により電磁ポテンシャルの形を予想したものを遅延ポテンシャルと呼ぶ。理論的にかなり難解な式になってしまうが、受信位置が電荷存在領域に対して十分遠い時、電気双極子近似と呼ばれる1次モーメントによる近似法を用いる事でそのポテンシャルの形を具体的に!求めることが出来る。

電磁波の存在

ローレンツ・ゲージの議論によりマクスウェル方程式は波動方程式という観点が与えられそれ故電磁場においては我々が良く知っている波としての解析が可能になり、更に電磁波の存在が導かれる。結論だけ述べると電波と磁波の振幅の方向、それと電磁波の進行方向はそれぞれ全てが直交する。また今まで別々に述べられていた電磁波と光波は同じものであることが導かれる。さらに光の速さ$${c}$$は$${c = \frac{1}{\sqrt{\epsilon_0 \mu_0}}}$$という事も分かる。

ラーモアの公式

荷電粒子の単位加速時間当たりの電磁波の放射エネルギー強度が次式で求まる。$${P(t_0) = \frac{e^2}{6\pi \epsilon_0 c^3}(\frac{dv(t_0)}{dt_0})^2}$$。この式は古典物理学を原子の世界に導く。

まとめ

ざっとマクスウェル方程式周りについて速習してみました。物理学は本当にド素人ですが数式を使いこんなに世界が広がるのかと驚きました。特に遅延ポテンシャルを近似として実際に陽に求められるという事は数学界では殆ど絶対にない(※数学界では大概微分方程式を示して陽に解けずに細かい解析に移る)ことなので非常に興奮しました。マクスウェル方程式が波動方程式であるとか電磁波と光波が同一という所にもとても驚きましたね。

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