【コラム】精神保健指定医という資格の意味
精神保健指定医という資格をご存知でしょうか?
精神科医で知らない人はいないと思いますが、、
実はこの資格、業務でほぼ必須の資格ですが、扱いを間違えるととても怖い資格なんです。
本来医療行為は医師免許がなければ傷害罪等(詳しくないので憶測ですみません)の法に触れる行為ですが、医師免許があり、かつ、患者さんの同意の元であれば、施行できるものです。
精神科では往々にしてこの同意が得られないことがあります。しかし、患者さんの医療及び保護のためやむをえず、強制的な治療が必要となる場合もあります。
となると本来無理矢理治療を行うと傷害罪等の刑法や人権侵害の憲法違反に問われるのですが、精神保健指定医が必要と判断すれば、施行することができます。
具体的に言えば、措置入院や医療保護入院等の強制入院、隔離や身体的拘束などの行動制限ですね。
文章で書くとそれほど怖さが伝わらないかもしれませんが、、
言葉を選ばずに言えば、強制入院は嫌がる人を閉鎖病棟に閉じ込める、隔離は部屋の外に出られないようにする、身体的拘束は身体を固定して動けなくする
警察に置き換えると逮捕、留置場に入れる、手錠や縄をかけるなどがそれにあたると思います。
(”誤解がないように申し上げておきますが、精神科での強制入院や行動制限はあくまで医療行為であり、逮捕や懲役のように懲罰的な意味合いは一切ありません。治療のため必要に迫られた際にやむをえず、必要最小限で行なっております。私は精神科医の端くれですが、ここだけは強調させていただきます。精神科医であれば皆同じ思いで精神医療に携わっていると信じています。”)
本来こういった人の移動や行動を制限する行為は警察でも勝手にはできません。現行犯等の一部の場合を除いて、裁判所から令状をもらったり、裁判で有罪になって初めて行うことができます。
しかし、精神保健指定医の場合は、自分1人の判断(措置入院等一部は2人の判断)で上記のような本来、人権侵害にあたる、警察でも裁判の結果を持ってしかできない行為ができてしまいます。
だからこそ業務を行う度に本当に判断に間違いはなかったか、といつも怖くなります。ただ、必要な場面で行わないと患者さんのためにならないので躊躇はしませんが、、
最近ではレポート審査の厳格化や面接の導入などでより厳密に審査されるようになってきました。
また、精神保健福祉法も徐々に改訂され、制度も変わってきてはいますが、現状では依然として本来あり得ないような権限が付与された資格であることを肝に銘じて取得、運用して欲しいです。