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セキュリティクリアランス

内田氏の主張には割と共感する所も多いのだが(特に教育に関することとか)、安全保障に関する考え方は根本的に異なる。
以前も書いたが、私は用米派である。
先の大戦の恨みも忘れてないし(恩は恩で別に忘れている訳ではないが…)、本来安全保障を他国に付託するのが論外だという立場である。
日本が現状アメリカの属国であるという認識自体には大枠異論は無い。
例えば、プラザ合意とかで半導体産業をぶっ潰されたなんてこともある。
主権と領土の両面で、アメリカに対して主権国家のテイを成していない、という指摘はごもっともである。
本来は、自国の領土に他国の軍事基地が無ければならない、だなんてふざけた話である。
その点を言うと、私は本来は自主防衛派なのである。
しかし、現実を見るとそうもいかない。
その理由は大きく2点ある。
1点目は、日本には安全保障上の脅威となる国に囲まれている、非常に地政学的リスクの高い地域に位置している。
最大の脅威である中国は、既に軍事のみならず、科学技術、教育水準、インテリジェンスのどの分野においても、日本を凌ぐ一流国となっている。
二流以下なのは倫理観くらいなものだろう。
つまり、我が国はほとんど全てにおいて格上であり、唯一倫理観のみがゴミの危ない強大なクソ国家の脅威を受けているのである。
しかも、それに加えて、今の時代に現にウクライナを武力侵略し、未だに国際法違反の不法占拠を続ける、二流国に成り下がったにも関わらず軍事的には一流国であるロシアも隣国である。
建前上、準同盟国である南朝鮮は竹島を不法占拠している上に、海自航空機に銃口を向けて脅したのである。(この表現は比喩であり、厳密には火器管制レーダーを照射した。)
台湾は親日(国)だと思うかもしないが、そもそも尖閣が中国と問題になった原因は台湾が領有権を主張したせいである。
それを考えると、我が国は主権や領域、そして当然国民を守るための安全保障に、莫大な投資をしなければならないだろう。
それをしなくて済んでいるのは何故か?
言うまでもなく、アメリカというケツ持ちにケツを振っているからである。
本来は当然、どんなに厳しい状態であっても、自力で外交ができるだけの防衛力を備えるのが筋である。
そもそも、外交は防衛力の後ろ盾が無ければ、大した仕事はできないのである。
少なくとも、近隣国とのシビアな外交交渉においては、相手の持つ軍事力を使わせないだけの十分な防衛力が必要である。
なので、アメリカから名実ともに独立し、完全に主権を取り戻し、責任ある主権国家となるためには、安全保障上の能力を飛躍的に向上させることが必要なのである。
にも関わらず、対米協調を批判する一方で、防衛費増大に反対してみたり、スパイ防止法はおろか、特定秘密保護法にすら文句をつけるのである。
それは筋が通らないだろう。
実際問題、特定秘密保護法案に反対した左翼の心配事のうち、ひとつでも現実的な問題となっただろうか?
なってはいまい。
何故なら、法案の段階で既に彼らの主張が成り立たない条文になっていたのである。
それにも関わらず、ただただ印象操作を繰り返して、国民の不安を煽っていただけなのである。
内田氏は「他国のために自国民の権利を侵害する法律を作るなんて、アメリカ様も首を捻っているだろう」といったことを述べているが、それは明確に誤りである。
何故なら、アメリカはそれよりも厳しい制度で自国の安全保障を実現しているのである。
これはアメリカに限ったことではなく、世界の主要国は当然に、厳しい情報保全、スパイ対策をしているのである。
それが制度としてまともに存在しなかった日本が異常だったのである。
アメリカが首を捻るとしたら、「なんで日本は自国を守るための当然の法制度の整備を今まで怠ってきたのだろうか?」という点であろう。
まぁ、そうなった原因を作ったのはまさに当事者たるアメリカなのであるが…
主権侵害の出鱈目憲法を押し付け、腑抜け政策を強要し、安全保障を提供する代わりに安全保障面で甘やかして自立心を奪ったのである。
首を捻るなら、自らの過去の行いに対して首を捻じ切るほど捻れば良い。
2つ目は、真に対米独立をし、名実共に主権国家となるには、自国の安全保障に対して真摯に投資しなければならない。
防衛力に然り、法整備に然り、外交能力やインテリジェンス能力についても然りである。
何百年もかけるつもりならばゆっくりやれば良かろうが、そうではないならそれなりに国民に痛みを伴う改革が必要である。
それに賛同できる国民がどれだけいるのだろうか?
少なくとも、「福祉が足りない!」とか「税金下げろ!」とか言う意識のうちは不可能である。
私としては、教育を通じて、安全保障の必要性を国民全てが理解し、自国の主権と安全保障に対して責任を持つ意識を育てるべきだと思っている。
それが出来るまでは、次善の策として、アメリカ様のケツのアナまでペロペロ舐めてケツ持ちをさせざるを得ないのである。

現在、国会においてセキュリティクリアランスの法整備が議論されているらしい。(本日通過だとのこと。)
これは、昔話題になった特定秘密とかの国家の機密情報を扱う資格を特定省庁の公務員だけではなく、民間人にも必要に応じて与えよう、というものである。
いわゆるスパイ対策の制度なので、必然的に身元調査が必須になる。
野党はどうせそれを人権侵害だと言いがかりをつけ、マスコミは一般国民に対して身元調査をやり出す!と印象操作するのだろう。
現状は、特定秘密等に該当する様な、国との契約を扱っている企業の社員に対してセキュリティクリアランスを資格として取らせる、という形で話が進んでいるらしい。
そもそも、特定秘密指定された情報は可用性が著しく低くなるのだから、なるべく指定しないで済むなら指定したくないというのが本音となるのである。
何でもかんでも指定して国民の言論の自由や知る権利を侵害する!だなんてのは実態を知らない人間の戯言に過ぎない。
そもそも、一般国民が何故か知り得ないはずの特定秘密を知っており、その秘密をしゃべったことを理由に逮捕される!だなんて妄想も甚だしいのである。
どうしても他国に知られると不味い情報を知る権利が欲しければ、然るべき立場で然るべき調査を受けて堂々と知ればいいのである。
それこそ、自立した主権国家において、機密情報を垂れ流しにしている国なんて存在しないのである。
然るべき自立した国家になるために必要な法制度を、遅ればせながらやっているのが現状なのである。
対米自立を訴えるならば、歓迎こそすれ、批判する謂れはないはずである。

というのが、至極当然の主張である。
私はもう少し踏み込んでみたい。
まず、セキュリティクリアランスは国会議員全てに義務付けるべきである。
厳密には、候補者全てに義務付けるべきである。
保全意識が問題なくあって、かつ、身元(前歴も含む)がしっかりとしていれば、セキュリティクリアランスは普通に得られる資格である。
勿論、行政による政治家の恣意的な選抜にならない様に「もしも不適格となった場合には、その理由を国民全員に対して開示する」ことが必要である。
例えば、帰化歴があったり、配偶者が安全保障上の脅威国の出身であったり、不透明な借財や犯罪歴等があったりすれば、セキュリティクリアランスが取れない場合がある。
それをおしてでもセキュリティクリアランスを取ろうとしているという事実を白日の元に晒した上で、それでも取るべきかを国民と共に考えれば良い。
その上で、異議申し立てがあるならば、もう一度国民の面前で適格性を判断されれば良い。
当然ながら、セキュリティクリアランスを問題なく取得できたならば、個人情報は保護されるべきである。
しかし、申請した上で取得できない正当な理由であれば、国民が知る権利を持つべきである。
本人は当然として、取れない様な理由があるにも関わらず取ろうとした人間がどの様な人間であるかを、国民は知る権利がある。
何故なら、国民は自国の安全保障に寄与する権利と、そのために必要な情報を知る権利を有するからである。
自民党の法案では、大臣以下政務三役等の国会議員たる行政職員にはセキュリティクリアランスを求めないという。
私の主張する制度設計には至らないまでも、片手落ちであるとしか言いようがない。
ふんわりとした大臣の任命時の守秘義務程度でお茶を濁すべきではない。
そもそも行政の運営を担う与党の特定の議員だけでなく、野党も含めた国会議員の役割には行政の監督もあるはずである。
それが、特定の国の秘密を見られないなんてことがあるべきでないし、逆に選挙に受かった程度の理由で無条件に見られる権利を与えるのもおかしい。
大きなペナルティー付きの守秘義務を全ての国会議員が負った上で、全ての国会議員が全ての秘密にアクセスできる様にするべきである。
然るべき資格を得た上で、国民の負託を受けた国会議員は、国家の全ての情報にアクセスする権限を持つべきである。

また、セキュリティクリアランス自体を個人に付与される資格とするべきである。
その資格を持っているか、しっかり更新しているかで、政治家や行政職員、特定の秘密を扱う企業の従業員以外でも、特定の情報に触れられる資格とするべきである。
それは一種の独占業務資格とすれば良い。
そうしたならば、就職等でも優遇されることになるだろう。

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