フリパラ(フリーランス協会公式note)
縁もゆかりもない土地で、イチから仕事を作った私の方法(徳島編)
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縁もゆかりもない土地で、イチから仕事を作った私の方法(徳島編)

フリパラ(フリーランス協会公式note)

「海や山などの自然に囲まれた町で暮らしたい」「便利な都心暮らしとのんびりした田舎暮らしを両方楽しみたい」。場所や時間に捉われず働けるフリーランスの方々は、「移住や二拠点生活」に一度は憧れを抱いたことがあるのではないでしょうか。

とはいえ、実際に移住や二拠点生活に踏み出そうとすると、多くの人の頭をよぎるのが「仕事」のはず。せっかくなら、「地域の役に立ちたい」「新しい場所で新しいクライアントを見つけたい」という声をよく耳にします。

そこで2月25日、フリーランス協会が2021年度に「徳島ファン創出事業」で連携した徳島県と開催したのが「縁もゆかりもない場所で、イチから仕事を作った私の方法」というイベント。

「縁もゆかりもない土地」だった徳島県に移住して自ら仕事を作った人たちと受け入れ側の自治体の担当者に登壇してもらいました。今回の記事では、そんな3人が語ってくれた具体的なノウハウを3つにまとめてご紹介します。

仕事を作る方法①夢を諦めずに語り続ける

結婚を機に、高知県から徳島県三好市に移住したのが株式会社C Landmarkの藤田梢さん。

高知県から移住した藤田梢さん

三好市と隣町の東みよし町でカフェを経営し、2月からコワーキングスペース(テレワークオフィス)を運営しているとのこと。起業したのは徳島県に移住してから9年経った2016年。きっかけは、徳島で子育てをする中で、地方ならではの課題に気づいたことだったと言います。

「私が気づいた課題の一つは、子どもたちの教育環境。私が住んでいる地域は都市部より子どもの人口が少なく、小学校は1クラス15人程度の規模感が一般的。都市部と比べ、自分の家庭以外の大人と出会える機会や、体験できることの選択肢が少ないと感じました。そこで立ち上げたのが、長期休暇期間中に子どもたちが自由に集える“こどもくらぶ”です」

運営するカフェで開催した「こどもくらぶ」のチラシ
子どもたちが体験したさまざまなプログラム

「先生役は地元のクリエイターさんやフリーランス、地域企業の社長などに頼みました。みんな自分の特技を生かして仕事を作り出している人ばかり。子どもたちが親以外の素敵な大人と出会える機会を提供したかったんです」

こどもくらぶの活動に加え、カフェを経営するなど、徳島県で充実した暮らしを送っているように見える藤田さんですが、移住当初は現地の知人が一人もいなかったそう。人脈ゼロからのスタートでも、「地域を変えたい」というブレない思いを発信し続けたことで、次第に藤田さんの元に人が集まり出したそうです。

「最初はどう仲間を作ればいいか、誰に協力を求めればいいかわかりませんでした。なので徳島県の女性起業塾に参加して、今でいう“ピッチ”のような場で夢を語ったりと、思いを形にする活動を地道に積み重ねたのです。すると一人、二人と『私ならこんな手伝いができます』『こんなことをやっている知人を紹介しようか』などと声をかけてくれる人が増えていきました。今運営しているカフェも、そうしたご縁からオープンでき、口コミでお客さんが集まってくれました」

活動を主に支えてくれたのは、同世代のママたちだったと言います。

東みよし町にオープンした「cafe culcul」。ママたちの力が集結!

ママの力が地域を変えると、私は思っています。今までの地域はどちらかというと、男性主体で作られていました。でも今は女性がどんどん活躍する時代。だからこそ地域づくりにも、女性の意見をもっと取り入れたいと考えました。地方では多くの子どもが学校を卒業したら、都市部に出ていってしまいます。その子どもたちはどうすれば地元に戻ってくるのか。子どもたちが戻って来たいと思える土地になるには何が必要なのか。地元のママたちと意見を交換しながら、そうした課題の解決に取り組めるのはとても嬉しいですね」

運営する吉野川テレワークオフィス

都心では多く見かけるコワーキングスペースも、地方ではまだ多くありません。でも藤田さんは「地方だからこそ満たせるニーズがある」と強調します。

「都市部では目新しさがなくても、地方では注目されるサービスがあります。コワーキングスペースもその一つ。ワーケーションや二拠点生活をしている人など、移住者以外の方々にもぜひ利用していただき、一緒に魅力ある地域を作っていけたらいいですね」

目線の先にあるのは常に子どものこと、地域のこと。常に利他的な視点で語る藤田さんは一つ一つ、想いを形にしています。

仕事を作る方法②理屈よりも「信頼関係」が先

「地方の商談では、ロジックより信頼関係のほうが重要」。そう語るのは、徳島県小松島市で地域活性化に取り組む株式会社Uプロジェクトを経営する酒井大輔さん。福井県出身で、東京の広告会社で働いていた酒井さんが、縁もゆかりもない徳島県に移住したきっかけは、「スキル人材が地方で活躍できない理由を探るため」だったといいます。

地域の人たちとワークショップを企画

「世の中には自分のスキルで地方に貢献したいと考える人が大勢いますが、実は成功事例はほとんどないのが実状です。ならば自分が移住して地域活性化に取り組み、その理由を突き止めたいと考えました」

移住後に始めたのは観光と通販事業。小松島市は大型クルーズ船が寄港する港街で、多いときには年間で3万人近い観光客が訪れます。ですが市内に目立つ観光地がなく、消費が生まれない。生まれたとしても観光に来たときの一度きり。

そのような状態を改善したいと、市内近郊で地域産品の購買につながる観光プラン作りと、観光客に旅行後も買い続けてもらうための通販の仕組み作りを企画。資料を作成し、地元の事業者や農業生産者、加工事業者など合計20社ほどに説明して回ったといいます。

「当初の反応は概ね好感触で、多くの事業者から『ぜひやりましょう』と声をかけられました。でも、その後の連絡がパタリと来ない。こちらから連絡しても『何をすればいいか、よく分からない』と曖昧な返事が返ってくるばかりでした。要するに私の提案内容がほとんど理解されていなかったのです」

ECサイトを提案した際の反応

酒井さんが当初意識したのは、なぜECサイトを構築すべきか、なぜその価格になるのか、などを論理的に説明し、納得して発注してもらうこと。でも、いくらロジカルに説明しても商談が進みませんでした。酒井さんは次第に「理屈ではダメだ」と考えるようになったといいます。

「地方の商談で大事なのは、『難しいことはわからないけど、あなたの言っていることは多分正しいと思うので一緒にやりましょう』という関係性をいかに構築できるか。要するに信頼関係です。その信頼関係を構築するには、地元のキーパーソンに間に入ってもらうことが近道です」

「地元で信頼されている人をいかに見つけるか」が重要

キーパーソンは、地域の中で人脈もあって目立つ人ですので、何人かに聞いてみると、たどり着きやすいと言います。

「移住して5年間、行政・企業・教育機関・住民、様々な立場の人と取り組んできました。今後は、自分が培ってきた経験をいかし『高いスキルを持った人材や企業が、時間や労力をかけずに地域で活躍できる事例』を作っていきたいです」

信頼関係を構築するためにキーパーソンがいかに重要か。酒井さんはその価値を身を持って知った一人です。

「私自身にできることは限界があります。首都圏の広告業界で働いていたときに獲得したスキルだけではなく『地方で信頼関係を築き、仕事を得るスキル』を新た獲得できたと思っています。だからこそ、スキル人材と地方の間に入る”翻訳者”になれる。スキル人材の価値と地方側の課題を正しく把握して、何かを生み出していく。そんなマッチング役を担っていくことで、少しでも地方の課題を解決していくことができれば嬉しいです」

仕事を作る方法③地域を知り、その土地を好きになる

では、受け入れ自治体の立場から見て、移住者や二拠点居住者が地方でゼロから仕事を作るうえで大切だと映ることは何でしょうか。

徳島県阿南市役所ふるさと未来課に所属し、移住コーディネーターとして活動する岩浅壮泰さんは、「(経験やスキル以上に)その地域に関心を持ち、深く知ってくれていること」だと言います。

「一度県外に出たからこそ、阿南市の魅力に気づいた」と話す岩浅さん

岩浅さんが紹介したのは、首都圏在住の一人の女性。専門スキルを持つ複業人材として、阿南市と2021年度に契約した方でした。

関わっているのは、阿南市が2019年にスタートした『SUPタウンプロジェクト』。阿南市で盛んなマリンスポーツのSUP(スタンドアップ・パドルボード)を通して、海の環境問題に目を向けてもらうプロジェクトです。その女性は『SUPタウンプロジェクト』を全国に発信するPRのアドバイザーを務めています。

多様なビーチがある阿南市はマリンスポーツが盛ん

「アドバイザーに就いていただく決め手となったのは、その女性が2021年8月に阿南市が開催したSDGsと観光をテーマにした体験型ツアーに参加してくれていたことでした。その過程で、阿南市の環境問題への姿勢を深く理解してくれていたのです。『SUPタウンプロジェクト』にも本気で関わりたいという気持ちが伝わってきて、遠隔でのコミュニケーションもスムーズに進みました

アドバイザーの方のおかげで、フォローワー数も増加

岩浅さんも酒井さんと同様に、「地方では『何ができるか』以上に『誰とするか』が重要」と強調します。「今回の女性に関しては、阿南市の企画に過去に足を運んでくれていたため、私たちも人柄を事前に理解していました。その点も協力してプロジェクトを進める上でのやりやすさにつながっていると思います」

地域を深く知り、情熱を語り続けて、信頼を築いていく

新たな土地でイチから自分の仕事を作るには、藤田さんのように「どんな地域にしたいか情熱を持って語り続けること」、酒井さんのように、「仕事を提案する前に、信頼関係を構築すること」、また岩浅さんのアドバイスにあるように「地域を深く知っておくこと」、この3つを意識することが重要なようです。そこからご縁が生まれ、仕事につながるからです。結果を出そうと焦らず、一歩一歩進むことが何より大切だと学びました。

執筆:児玉真悠子
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・ フリーランス協会 地方創生チーム&フリパラ編集部
株式会社ソトエ代表取締役、一般社団法人日本ワーケーション協会公認ワーケーションコンシェルジュ。ビジネス系出版社を経て、2014年にフリーランスの編集&ライターとして独立。以降、子どもの長期休暇中に、自身の仕事を旅先に持っていく生活へ。各自治体の発信業務に関わる中で、「地域・大人・子ども」にとって三方良しの親子ワーケーションの可能性を感じ、株式会社ソトエを創業。現在、「親子deワーケーション」の企画・運営・発信事業を通じて、仕事と子育てをどちらも大事にできる暮らし方を普及すべく邁進中。

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