ケーススタディで学ぶ!インボイス制度のメリット・デメリット
令和5年10月からスタートするインボイス制度。「なんだかよくわからないうちにもうすぐ始まる!」「仕事受けにくくなるらしい?」と、戦々恐々とするフリーランスのみなさまも少なくないはず!
フリーランスや個人事業主の税務相談が専門の税理士であり、フリーランス協会の確定申告イベントでもおなじみの宮﨑雅大さんに「インボイス登録事業者」になることのメリット・デメリットを中心にたっぷり教えてもらいました。
課税事業者になるか、免税事業者のままでいるか
2021年5月に行われたフリーランス協会の調査では、回答した600名のフリーランスのうち、年収1000万未満で消費税の納付を免除されている「免税事業者」の割合は約7割でした。インボイス制度の導入で大きく影響を受けるのは「免税事業者」ですので、多くのフリーランスの人たちが、インボイス制度の導入で影響を受ける可能性が高いと言えるでしょう。
ここで悩ましいのが、「インボイス登録事業者」になり課税事業者として消費税を納付したほうがいいのか、あるいは免税事業者のままでいたほうがお得なのか、という問題です。
では、想定される4つのパターンを見ながら、考えていきましょう。
●パターン1/課税事業者になって、手取り額はキープ
発注先への請求金額は消費税分を値上げできたので、手取り額はこれまで通り。発注者にとっては支払額が増えるものの、インボイスによって仕入税額控除ができるため、消費税の納税額が少なくなる。
●パターン2/課税事業者になるが、手取り額は減る
課税事業者になったものの、発注先への請求額はすえおきに…! 消費税を納税すると、手取り額は減る。発注側からすると、支払額も仕入税額控除額もこれまで通り。
●パターン3/免税事業者のままで、手取り額はキープ
免税事業者のままだが、インボイス制度導入後も請求金額の引き下げはなく、手取り額はそのまま。発注者からすると、支払額は変わらないが、インボイスが受け取れないため仕入税額控除ができず、実質、消費税の分だけ負担額が増えている。
●パターン4/免税事業者のままで、手取り額は減る
発注先から、インボイスを発行できない場合は消費税分を値下げするとの通告。手取りが10%減額となった。発注先からすると、支払額は減少したものの、仕入税額控除での差し引きもないため、負担額は以前と変わらない計算。
4つの判断ポイントで自分に合う選択を
上記の通り、インボイスの登録事業者になり課税事業者になった場合でも、免税事業者のままでいることを選択した場合でも、手取り額は「変わらないor 減る」可能性があることを理解してもらえたのではないでしょうか。
ですから、どちらを選ぶべきかは、取引先との関係や仕事内容、市場価値など、複合的な視点で判断することが大切です。
その際、判断基準になる4つのポイントを紹介します。
①年間の事業収入は?
今後も利益700万円以上が想定されるなら、課税事業者になるのがおすすめです。 ただし法人化を検討しているならば、個人事業主として番号を取得する必要はありません。
②受注経路は?
これまで培ってきた人脈、紹介による受注が多いならば、価格交渉もしやすく、免税事業者のままでも価格の引き下げが起こらない可能性もあります。また、新規開拓が多い場合は、インボイスを取得しているか確認されることも想定されます。インボイス制度に登録して課税事業者になっていたほうが受注につながりやすいかもしれません。
③業務内容や市場価値は?
スキルに独自性があって代替が難しい場合には、インボイスが発行できないからといって発注が控えられることは少ないでしょう。一方、競合が多い場合には、インボイス制度に登録して課税事業者になったほうが有利になる可能性が考えられます。
④同業者の動向は?
登録事業者になる同業者が多いようなら、インボイスを発行できないことが不利に働くことも考えられます。
どっちを選ぶ? 働き方別ケース・スタデイ
ここからは、具体的な働き方や年収別に、登録事業者になるメリット・デメリットを考えてみましょう。
Aさん(エンジニア/課税事業者)
インボイス制度の導入後も、これまでと同様の稼働時間、収入を想定しているなら、すぐに登録してもOK! ただし、法人設立を検討するなら、個人事業で番号を取得する必要はありません。
Bさん(Webデザイナー/免税事業者)
今の働き方を維持したい場合は、まずは発注先に相談してみるのも一案。取引先が「免税事業者のままでも支障がない」「価格もこれまで通りでOK」というところが多ければ、登録はしなくても収入はキープできる可能性が高いでしょう。
ただ、今後事業を拡大し、年収1000万円を超える規模を目指すのであれば、登録事業者になることを検討するのもおすすめです。
Cさん(ライター/免税事業者)
稼働時間を増やし、収入をあげていきたいのであれば、登録事業者になることも検討します。この先も、現在と同程度の稼働時間、収入を維持していくのであれば、発注先に「インボイスを発行できない場合も価格を維持してもらえるか?」「課税事業者となった場合、値上げを了承してもらえるか?」などをざっくばらんに相談してみるのも手です。
Dさん(ハンドメイド作家/免税事業者)
登録事業者になる必要はありません。インボイスとは、取引先が「消費税の金額や適用税率」を正確に把握するためのものです。Dさんの取引先である一般消費者は消費税の申告を行わないため、Dさんから送られる請求書がインボイスかどうかの確認も不要です。
インボイスに登録するには?
登録番号の取得は、お住まいの地域の管轄税務署で行います。
窓口、郵送のほか、e-taxでも申請が可能。以前にe-taxで確定申告をしたことがある人は、「利用者識別番号」と「暗証番号」を確認してから行うとスムーズです。
一緒に検討したい「簡易課税制度」
登録申請をする際に、一緒に検討したいのが「簡易課税制度」です。
本来、消費税の納付は、発注先から預かった消費税から、仕入れにかかった消費税を差し引きして支払います。税率8%、10%、消費税のかからない経費を分類して計算する必要があり、集計はなかなか大変です。
この作業をぐんとラクにしてくれるのが、簡易課税制度です。簡易課税制度では、なんと仕入にかかった消費税の計算をまるっと無視して、「みなし仕入率」で控除できるようにしたものです。
職種によって控除割合は変わりますが、フリーランスの場合は50%を差し引けるケースが多いでしょう。税込で110万円の売り上げがあった場合、消費税の納付額は【売り上げ税10万円×みなし仕入率50%】で5万円になる、というわけです。
急ぐ必要はなし! 1年かけてじっくり検討を
以上、インボイス登録をした方がメリットが大きいか、あるいはデメリットのほうが大きいかは、働き方や事業規模、取引先との関係性によっても変わることをお伝えしました。
インボイス制度の正式スタートは2023年10月、登録申請の提出期限は23年3月31日です。つまり、まだ余裕はあるので、急いで結論を出さなくても大丈夫ということ。
2022年の秋ごろまでに方向性を決めることをめざし、じっくり検討していきましょう。
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