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画家モネとジヴェルニーの庭

先日《オンライン対話型鑑賞プラットフォーム》にて、「入門講座モネ」のファシリテータをさせていただく機会がありました。距離に関係なくいろんな人が繋がって、一緒に絵をみてシェアできるという体験は、予想以上に楽しく嬉しいものでした。
(ご参加いただきました皆さま、ありがとうございます!)
講座の予定は未定ですが、同プラットフォームのトークショーが今週末にあります。アートに興味ある方、ぜひ覗いてみてくださいませ。

テーマに画家モネを選んだのは、自分自身の追求テーマのひとつ「アーティストと庭」ということもあります。モネは、印象派の代表的な画家であるとともに、ジヴェルニーの自宅に作った庭でも知られています。

モネ、マイホーム購入とともにガーデニングを始める
モネがジヴェルニーの自宅を購入したのは43歳のとき。
以来、庭づくりにハマりにハマります。マイホーム購入をきっかけに庭づくりに目覚めるパターンは、現代にも通じるものがありそう。

モネの場合は、元々戸外で制作し、見えたままの美しい自然の姿、その光や風の微妙な変化を感じられるような絵の世界を追求していたこともあり、自分でしつらえる庭は、彼の創作の主たるインスピレーション源になってゆきます。

画家のパレットのような、色彩が輝く庭
家の周りの1ヘクタールほどの土地を、まずは花でいっぱいにして、ポタジェ(菜園)もつくります。モネの庭というと、様々な色彩の花が咲き乱れる様子がまるで画家のパレットのような庭、というイメージが強いです。でも実は料理好きであるモネにとっては、菜園も同じくらい大切なごきげんオプションだったに違いありません。

花の庭には、バラやクレマチスが這う幅広のパーゴラで覆われた通路が中央を通っています。太陽を遮るものがあまりなく日当たりがよい反面、空間構成としては少し平坦な印象を受ける人もいるかもしれません。家を購入した当初はトウヒなどの大木が中央通路を縁取っていたそうです。その大木を妻アリスは残したかったのだけれど、花々を覆う影ができてしまうのが気に入らなかったモネは、結局切らせてしまったのだとか。
(これもどこかのお宅で家族論争のネタになりそうな話題ですね。)

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あえて単純な空間構成だからこそ、様々な草花が織りなす色彩のタッチがパレットの上のように自由に散りばめられたような効果が生まれるのでしょう。いわゆる造園や建築とは違う感性が如実に現れたモネの庭には、やはり画家の庭らしさ、モネらしさにあふれています。

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モネ生涯の最高傑作、睡蓮の水の庭
その10年後には、隣の土地を買い足して、大きな睡蓮の池にポン・ジャポネとフランスでは呼ばれる日本の太鼓橋がかかった水の庭の作庭を開始。
自ら植物を選び、庭師も雇って、制作旅行の旅先からも手紙を書き、様々気を配って維持管理した庭は、自分自身の生涯の最高傑作である、と言っていたほど。

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そして晩年のモネは、自分の庭の睡蓮に池をモチーフに200点以上のシリーズ作品を制作しました。
睡蓮と水面に映る空、光の反射、揺らめき...どんどん進化するモネの創作は、やがてモノの形や色彩といったリアルから自由になった世界、現代にまでも繋がっていく表現のあり方を獲得していきます。

モネの庭と作品は、彼が人生をかけて追求した美が宿る場所。
現れ方が一様ではないからこそ面白い、それらを生み出したモネの美への感性がそれらを繋ぎ響きあっています。

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