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憧れのモロッコへ行くこと

32歳。


自分の事だけど、女にとってはちょっと
どきっとする歳だと思う。
モロッコの砂漠で星を見ながらぼんやり考えた。


漠然と加齢の恐怖に脅かされながら、そんな時こそ
自分の憧れに手を伸ばしてみるときかも?なんて思いながら
厄年を迎える誕生日に砂漠で星空を眺めるという夢を叶えるために、
一人でモロッコに向かうことを決めた。
初めてのイスラム圏、不安を感じ毎日のように
モロッコの情報をかき集める日々。


完全に勢いでとった航空券を握りしめて、
行くしかないと迎えた出発当日。

びっくりしながらも、毎日は進んでいく。

案外都会なカサブランカ、青の街シェフシャウエン、
ラクダの首が吊ってあったマーケットに腰が砕けたフェズ、
砂漠の入り口メルズーガ 。

いよいよ、お待ちかねの砂漠キャンプ。
行き当たりばったりながら、現地のツアーに申し込んだ。
不安と期待と、なんとかなるもんだなという気持ちがグルグルしてる。
舌でほぐせるほど柔らかいお肉の入ったタジン鍋をモリモリ食べた。


お目当ての星空は、そんな私のグルグルした感情を飲み込むほど、
静かで、雄大だった。


自分のバケットリストを達成できた充実感と共に、
自分が生まれたことについて考えた。
ここまで育ててくれた両親のこと。周りにいる友人のこと。
これからの仕事のこと。生き方のこと。


そんなことを考えながらシャッターを切っていたら、
砂漠まで連れてきてくれた原住民のベルベル人が、
心配して探しにきてくれていた。


「星、綺麗だろ」
「日本人だったな、住んでるのは東京?」
「日本人の女は、ひとり旅よくするのか?」
「モロッコでは、どこまわったんだ?」


なんて話しながら私はシャッターを切る手を止めない。

モロッコから出ることはないの?と聞いてみた。



「ないねぇ。ここ最高だもん」


暗闇でほぼ何も見えない中で、
彼の白い歯がにかっと光るのがわかった。



「東京に比べたら、きっとここは何もないんだろうと思うけど。仕事だって俺がベルベル人だからあるようなもんだし。でも、この砂漠で生まれて育ったし、星はこんなに毎日綺麗だし。毎日こうやって違う国の人と会うから、いつの間にか簡単な言葉なら9カ国くらい喋れるようになれたし。その人たちが、俺の故郷で毎日感動していってるんだよ。それって嬉しいし、最高じゃん。だから」


その話をしているときに、思わずシャッターを切る手を止めていた。


私が数日前まで、何があるか分からないと怯えながらきた憧れの土地。
モロッコ。


私の不安を一切するように、この土地の当たり前を愛している人がいて、
誇りに生きてる人が目の前にいる。私が感じていた不安は
「ただの一部」でしかないという事に気づかされた瞬間だった。


自分が見ていた世界は、とっても狭かった。

旅が好きで、一人でもふらふらしていた自分が
今更こんなことに気付いたのかという恥ずかしさ。

それと同時に迷いなく、自分の好きについてはっきりと語れる彼の考えが
地に足をつけた感じがして、羨ましくも感じた。


その後も旅は続いた。

ロッククライマーの聖地トドラ渓谷、一番賑わう観光地マラケシュ、
世界遺産の港街エッサウィラ。


砂漠の後の旅は、「やっと来たぜ、念願のモロッコ!」
という感じはなくなり、現地の人と一緒に過ごす時間が増えた。
日本で住むような当たり前の感覚を持つようになったのだ。


彼らから見たら、私は外国人。


外国人に向けての彼らの当たり前を目の当たりにして、
彼らの日常に触れるようにした。
彼らの中の日本人=〇〇という常識を知るたびに、常識って
各々思い込んでるだけだなという結論に至った。

国が違えば、文化も言葉も違う。食だって、常識だって。
でも、その場所に行ったらそれが「当たり前」になる。
その人たちの日常が、広がっている。


初めて海外に行った時に、「このまま日本に帰ってこれないんじゃないか」という不安に襲われていたときを思い出した。


地球って、広いし人も多い。



その中の一部でしかない私が、抱えている不安なんて比べてしまったら
そんなものは、砂漠の一粒の砂でしかないのだ。
そう思い込んでいた自分の小さな常識が、
今となっては愛おしくさえ思える。


厄年ながら、幸い、まだ長生きをするつもりなので
常識に囚われずに、図々しく生きてみようと思う。
「こんなことしていいのかな?」「みんなはどう考えるだろう?」と自分の常識を他人と合わせることに一生懸命だった、
自分の慎重さは尊重するとして。

今後はそこに自分の思う常識って、何なのか。これからの自分に必要なのか、照らし合わせて考えていければと思う。

誰かにとっての最高は、
誰かにとっての最低かもしれない。

だったら、多少のハメは外すとしても
自分にとっての最高を
今までよりも素直に選んでいきたいと思う。



今後も、憧れの地へは足を運ぶ。



さもないと死にきれない、と思っているから。
これらは、私の求める常識を
どれだけ壊してくれるのか、
今は楽しみでしかない。

私にとっての最高は、
まだまだ探し甲斐がありそうだ。



夜に見た、にかっとした笑顔が
たまに頭をよぎるから。

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