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STAR*15編集長記「明日を詠う」

フリーペーパーSTAR*VOL.15号の制作が佳境に差し掛かっている。今号の特集テーマは「空(くう)を詠む」。あらゆる面での2極化が進む現代において、人と環境、現在と未来を捉えるために、私達は何を意識するべきなのか。空気感と言うもっとも身近で難解なテーマに決めた理由とは。

TEXT by Ryotaro Okazaki ILLUSTRATION by yiii

「iki-gai(生き甲斐)」と言う言葉が、世界で認知されはじめている。生きる目標、目的とは違う、この概念に人として生きる事を見つめ直し、人生の意味を見出す人が増えているそうだ。そんな「生き甲斐」や「やり甲斐」と言った言葉を海外から改めて聞くと、それってなんだっけ?と問わずにいられない。これまで私たちは、何に生き甲斐を持ってきたのか。いつから未来を語るのに不安だけが募るようになったのか。

「空を詠む(くうをよむ)」特集の発端は、創刊時の思い「誰かの生き方を知り、新たな(自分にとっての)発見に出会おう」に立ち戻ろうと思ったからだった。創刊時は、大学の同級生や後輩と一緒に作品集として始めた。ただ、漠然と想像している未来の自分や社会にむけて、何かを感じ表現したい。自己満足と言うよりも、自己修正に近い感覚だったのを覚えている。
昨今では「AかBか」「分かるかわからないか」「多くの人が思っている(はずだ)」そんな言葉が世代を問わず目立つようになってきた。立場を表明する事が良くも悪くも強制力を持ち、共感を通り越し過剰に強調される。曖昧な答えをしようものなら両者から叩かれる事も多い。そういった愚痴や相談を受けることも増えた。

言葉にしづらいもの、曖昧なものにこそ、実は多くの可能性がある。多くの意見や背景が混ざり合う場所。混沌としたその場所で、本当の意味での自律を目指した時、全く違う未来への道筋が見えてくる事もあるはずだ。その上で相手の話に耳を傾け、背景を想像する。急くように理由をつけては誰かに答えを求めていないだろうか。
そんな事を思っているとき、元号が令和に変わる事が決まり、新たな時代が始まった。私は令和と言う字に、不思議と穏やかな地平線を思い浮かべた。人と人が、自然と人が絶妙な均衡の中で共存する未来。そして、日本の地に遥か昔から根付く空気感。

先人は、その時をとりまく空気感を全身で体感し、憂いや慈しみ、未来に向けた希望を歌や詩にのせて詠っている。短歌で未来への希望を詠うように、自分に目を向け、土地に目を向け、そこからはじめて希望が湧き上がる。人ははじめから予測不能の世界で生きてきた。そんな私達にとって、未来を語る事は希望を詠う事に似ているのではないか。そんな思いから私は「空を詠む」と言うテーマを掲げた。

テクノロジーによって社会も身体も拡張し、現実が変換されている中で、私達が感じているこの空気感は何なのか。それは、人の営みを包括する五感を超えた感覚に思え、同時に自らを俯瞰する力にも思えた。答えのない答えを求めているようで、それ自体が答えのような曖昧な感覚。そんな説明のできないものに救われることや、律される事がある。この感覚を、岡山と言う地で感じる事が増えれば、どんな未来への選択肢が生まれるだろうか。

今、私達が希望とする未来は何か。
当たり前のように来ると思っている明日に、夢でなく希望が詠えるように、新たな本誌の根幹としてこの問いに挑んでいきたいと思う。

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Cover Illustration「shining star」by yiii
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空・宇宙・空気感 をテーマに 宇宙(そら)で楽しそうにダンスする流れ星の子供達を、抽象的な雰囲気で描きました。

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