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「ほどよく嫌じゃない状態」こそが自由|マヂカルラブリー・野田クリスタル|マガジン『pathports』一部公開

freeeが「自由のあり方」をテーマに制作したマガジン『pathports(パスポーツ)』。マガジンの名前には、手に取った個人事業主・フリーランスにとって、自由とはなにか?を考えるきっかけになったり、みなさんの旅路を支える"パスポート"のような存在になればという想いが込められています。
そんな『pathports(パスポーツ)』から、誌面の内容をnote上で一部公開。第一弾となる今回は、マジカルラブリー・野田クリスタルさんのインタビュー記事です。

お笑い芸人としてテレビや舞台で活躍しながら、ゲームクリエイター、そしてマッチョ芸人としての「クリスタルジム」運営など、さまざまな顔を持つ野田クリスタルさん。

自分の好きなことを仕事にしながら、軽やかに生きているように見える彼は「一発逆転を諦めたからこそ、今がある」と語る。「コツコツ続ける」野田さん流の生き方、そして「制限」との向き合い方を聞いた。

野田クリスタル(のだ・くりすたる)
1986年生まれ。吉本興業所属のお笑いコンビ「マヂカルラブリー」ボケ担当。『M-1グランプリ2020』優勝。コンビで漫才を披露する一方、NintendoSwitch用ソフトとしても発売されている自作ゲーム・通称「野田ゲー」の制作でも話題となり、『R-1ぐらんぷり2020』では自作ゲームをプレイするネタで優勝を果たす。筋肉芸人としての一面も持ち、「クリスタルジム」を発案・ジム長を務める。

より強いものを生み出す「制限」もある

——野田さんは普段、何か「制限されているな」と感じることはありますか?

筋トレで体を絞っているときは、食事が制限されていますね。でも、悪いことばかりじゃないですよ。

食べられるものが限られる分、制限のなかでなるべくおいしいものを食べようと選びますし、体を絞っているときは味覚がすごく研ぎ澄まされるんですよ。たとえば、茶碗に入れた250gくらいの白米を、本当にゆっくり食べる。これがうますぎる。僕はビールをあんまり飲めないんですけど、めっちゃ喉が渇いたときに飲むビールのおいしさってこんな感じなんだろうなって思います。

——制限をしたほうが、よりおいしさを感じられる。

そうだと思います。食事の一つひとつに集中するから、しっかり味わえるようになる。それに僕、本当は町中華やジャンクな食べ物がめっちゃ好きなんですよ。好きだからこそ、制限が終わったあとに食べたときの喜びがすごい。もはや、ラーメンの丼にれんげをそっと入れて、スープが少しずつ入っていく様子を見るだけでも、たまらないです。食べるのが好きな人ほど、食事制限をして、終わったときに一番好きなものを食べてみてほしいです。やばいと思います。

——制限があるからこその喜びも存在するんですね。

それこそ、お笑いから一時期離れていた芸人がまた戻ってきたときって、めっちゃボケてくるんですよ。たぶんそれは、その人がずっとお笑いを制限されているような状態だったから。溜まりに溜まったボケが一気に放出されるんでしょうね。

制限って、我慢することで何かが少しずつ溜まっていく状態と、単純な我慢の2種類があると思うんですよ。前者は、より強いものを吐き出すために大事な手段でもあるんじゃないでしょうか。

何をやっても、お笑いからは離れない

——野田さんは芸人としてネタを披露するような活動のほかに、ジムの運営やゲーム制作など多岐にわたる活動をされています。何か活動の軸はあるのでしょうか?

何をやるにしても、お笑いからは離れないことですね。そこは守っています。どれもあくまで、お笑いのなかにある活動です。

——まったくつながらない活動は選ばないと。

そうじゃないと勝てるわけがない、と思うんです。ゲームだけをずっと作ってきた人だらけのフィールドで、僕がお笑いという武器を使わず正面から戦っても、かなうわけがない。だからあくまでお笑いを軸に、筋トレやゲームといった自分の持ち味を生かせる活動をしているんです。

——そういったポジション取りのようなことは、普段からよく考えるんですか?

考えますね。僕自身は何をするにしても、戦いたくないので。まだ足跡がついていないところへ行ったほうが、争いにならないじゃないですか。開拓といえばカッコいいかもしれないですけど、単純に、戦いたくないだけです。

——争いにならないポジションは、どのように探しているんでしょう。

思いつきやすいのは「自分の熱があるもの」だと思います。僕の場合はトレーニングに対して熱量があるからこそ「ジムを作る」発想が生まれてきたし、ゲームをするのが好きだから「ゲームを作る」発想が生まれたわけで。結局は、自分のなかにある材料でしか生まれないと思います。

——『M-1グランプリ』で優勝するまでにマヂカルラブリーとしてのネタのスタイルは何度も変化してきたかと思います。目標を達成するために自分を変化させていくことに抵抗は感じませんでしたか?

ひと言で「スタイル」と言っても、何をどこまで「スタイル」と呼ぶのかって話だと思うんです。マヂカルラブリーのスタイルが何かと言われたら、厳密にはないんですよ。しゃべくり漫才もやるし、単独ライブではコントしかやらないし。

——『M-1グランプリ2020』で優勝されたときの「つり革」のような、トリッキーなネタの印象が強い人は多いと思います。絶対に電車のつり革につかまらない男が、電車に揺られて床を転げまわるというボケは強烈でした。

そうですよね。ああいったネタが僕らのスタイルだと思われがちなんですけど、そういうことじゃない。もっと、こびりついちゃっているもの。出したいわけじゃなくても、どうしても出てきちゃうものが「スタイル」だと思うんです。

実際、『M-1グランプリ2020』で披露した「つり革」や「フレンチ」も賞レースで勝てるネタを作ろうと思って生まれたんですが、すごくベタな漫才になったかというと、そんなこともなかった。細かな技術は組み込まれていても、根本には「マヂカルラブリー」があったんですよね。

——その「こびりついているもの」は、芸人を始めてから培われたものだと思いますか?

何かを面白いと思うことって、芸人を始めてから生まれた感覚ではないじゃないですか。僕がこれまで生きてきて、面白いと思うものの方向性は、たぶんずっと変わってきていないと思うんです。くだらないこと、しょうもないことが好きではあるんですけど、はっきりと言語化するのも難しくて。

——明確に「これ」と言えるわけじゃないけど、自分のなかにこびりついたものは確かにあると。

「スタイル」と呼ばれるものがあるのは、芸人だけじゃないですよね。今の時代「これが仕事の正解です」とか「これをしたら成功します」みたいな情報があふれている。でも、そういうものを追って真似するよりも、もっと自分のなかにこびりついたものを探すことのほうが、重要なんじゃないかと思います。

——一方で、世間のなかで自分を売り出すための肩書きや強みを設定し、売れていく人もいますよね。でも、結局はその肩書きや強みにがんじがらめになってしまうケースも少なくないと感じます。

それに関しては、覚悟も必要だし、やり続けた先の面白さを信じることが大事なんじゃないですかね。その人が他のことをやっていたらもっと売れていたのかといえば、そういうわけでもないかもしれないし。だって、それで食えるんでしょ? という。

「自分はこれで食えてる」って自覚を持った人ほど、本当に強いと思いますよ。「自分はこれしかできない」ってことを、腹括ってやり続けているからこそ面白い。いつまでもやり続けやがって、なんて思わないですよ。

文=鈴木梢 写真=藤原慶 編集=友光だんご


インタビューの後半は、ぜひ『pathports』本誌でお楽しみください! 

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