ローズマリー　《心情⑧》

目を細めるには最適な日差し
手を包むようなあたたかさにふれた

人に期待させた
人を裏切った

雷雲を切り裂くような剣は持ち合わせていなかった

全部ごめんなさい。
だとか
全部不正解だった
とか
そんなの平謝りでしかない

何度もフリック入力をした分何かできていると錯覚していた

期待をさせたつもりはなかった
期待をさせていた

裏切ったつもりはなかった
裏切っていた

何度も何度も何度も何度も
きれいごとを吐いて結局僕の中では”きれい”だった

両手でくしゃくしゃに丸めても広げてしまえばきれいごとで
頭に、耳に、心に届くことはなかった

迎えに行くって
バーーっと自転車で行って　ほら、早く後ろ乗りなよ。　って言うことだっと思っていた。

紛れもない僕がそうされたいから。

でも、規則的に長いしっぽをゆらす黒猫はちがったらしい。

さぁ帰ろ。　って手をつなげばよかったのか
時間だよ。　て切符を渡すべきだったのか
何も言わずに猫缶を差し出せばよかったのか
待たせた？　ってかっこでもつけてねこじゃらしでも
振ればよかったのか
待ったよね、ごめんね。と抱えればよかったのか
知らないふりをしてその柔軟な体についていけばいいのか

どれが百点満点花丸だったのか

嘘つきで八方美人なたぬきには到底わからない

機嫌を損ねるこの黒い野良猫の頭を、
爪をたてずに撫でる方法を知らない