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私に還る旅 #5 〜大山の麓で長い夜がはじまった



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#5 大山の麓で、長い夜がはじまった


出雲空港に無事到着した私たちは、レンタカーで一路、
イトナミダイセン藝術祭のオープニングイベントが行われている
淀江町の古代の丘公園という遺跡公園へ。

車で1時間くらいです。

ほしふねさんたちの影絵公演がはじまるギリギリ直前の時間までには、なんとか会場に到着できそうでした。そして、その影絵公演が終わるくらいには、元オットがピノちゃんを見に行ってくれるはずです。

あとちょっと。正直、気持ちは落ち着きません。


そしてオープニングイベントの会場になっている古代の丘公園に到着すると、すぐに出迎えてくれたのが、空丸と同じキジトラの猫ちゃんでした。

よく考えたらこの旅で猫を見かけたのはこの時の1回だけ。

キジトラ猫ちゃんに会った時に、すぐに、あ、何かのサインだな。と思いました。とはいえ、私は気持ちが落ち着かないまま、脳も停止していて、その時には、それがどんなサインなのかはわからなかったけれど、今思えばキジトラ猫ちゃんを見て、撫でさせてもらったことで、ほんの少し落ち着いて、緩んだんですよね。

キジトラ猫ちゃんとお食事の出店


そして、入ってすぐの場所に美味しそうなお食事の出店が出ていました。
数日ほとんど食べていなかったし、ピノちゃんのこともあったし、で、
食欲はまったくなかったのですが、せっかくなので、食べられるかどうかはわからないけれど、と思いつつ、身体にとっても優しそうな揚げ玄米おにぎりとスープのセットをそこで注文しました。

そして、ちょうど注文をして待っているところに、元オットからピノちゃんの後ろ姿の写真と「3ヶ所、吐いている」というLINEが入りました。
予定時間よりもだいぶ早かったのですが、元オットも「猫に何かあったら…と、コワイから早めに見に来たよ。」と。

あわてて電話をすると、「最初ピノちゃんがベッドで爆睡しているから死んでるんじゃないかと思って、めっちゃ焦った」と言い、でもとりあえず起きてきたよ。と、そこから、ビデオ通話に切り替えてもらって、ピノちゃんの顔を見せてもらい、ごはんは食べているか、トイレに入った形跡はあるかなど細かく聞いていたら、途中で突然プツッと通話がキレてしまい、そこからは何度かけてもLINEが繋がらなくなってしまいました。

やぁ〜ん、勘弁して〜〜(涙)。

どんどん日も暮れてきて、影絵公演もすでに始まっていました。
電話も繋がらないし、とにかく影絵公演を演っている丘の上の芝生に移動して、いつでも電話がかかってきたら移動できるように、と、
ひとりで後ろの方でしゃがんで観ていました。
せっかくの素晴らしい公演なのに、ほぼ上の空の状態で。
なので内容は入ってこなかったのですが、
ただただ美しい歌と音の演奏を聴きながら、座っていました。

そうしたら、横に5歳くらいの男の子が、突然現れて
「誰〜?なんて名前?僕はホーポーだよ。」と。

ホーポー??? 

「カロだよー。ホーポー?ちゃん?って名前?」
「”ちゃん”じゃないんだよなー。僕、男だからさぁ〜!」と彼は
頭から被っていたフードを外しました。満面の笑顔。 
めーーちゃーくちゃーカワイイ!!!
ふたりで並んで影絵公演をみながら、いろいろしゃべっていて、
もう5歳の男子にナンパされたみたいな気分でした(笑)。
元オットとの電話が途中で切れた中で、気持ちは焦っていたのに、
ホーポーに妙に癒されて…。
一瞬、おとぎ話の不思議な世界に迷い込んだのかと思いました。

でも、そんな時間も束の間で、ほどなくして元オットからLINEが来たので
「ごめーん、電話してくるね」とホーポーに言って立ったら、
「ちぇっ」って言ってましたが(笑)。


すぐに電話ができる場所まで移動して、元オットがビデオ通話ができなくなったというので、電話で状況を教えてもらいました。
とりあえず、ごはんのカリカリは少し食べた形跡はあって、ピノちゃんは立って歩いたりはしたようなので、不安材料は、また吐いていたことと、ふたりともトイレをした形跡がないっていうことだったけれど、私が家を出てまだ数時間しか経っていないし、歩けているのだったら…。と変わらず心配ではあるものの、顔を見れてちょっとホッとして、とりあえず元オットには帰ってもらうことにしました。
そして、ひで。さんに、明日、予定よりも少し早めに来てもらえるようにお願いの連絡をして、あとは、今夜の状況は天に委ねるしかないなぁ…と。

そして一呼吸。深呼吸をして、気持ちを整えて、
あと残り10分ほどになってしまった影絵公演に戻ろうとしたら、そのタイミングで、ちょうど注文していた揚げ玄米おにぎりとスープのセットが出来てきたので受け取って、丘に戻ると、ホーポーはもう何処かに行ってしまってました。


前の方で椅子に座って公演を観ていたシンちゃんを見つけて、やっと合流。シンちゃんの横に座って、しばらくは、揚げ玄米おにぎりとスープを抱えて、はっきりとした意識もないままに、ぼーっと公演を観ていました。

食べれないかもしれない…。と思ったけれど
手の中の揚げたての玄米おにぎりとスープは本当に温かくて。



日もすっかり暮れて、寒くなってきていたし、
やっと猫たちの状況が知れたことで、完全に安心できたわけではないけれど、これまでよりも気持ちが落ち着くことができたので、
せっかくだし少し口にしてみよう、と食べてみたら、とっても優しい味で、その温かさと優しさが、本当に身体に滲みるようでした。


ああ、そうだった。


今思えば、大山という場所も、人も、動物も、虫も、木々も、食事も、すべてがとっても優しいエネルギーで。
この、スープがゆっくりと時間をかけて身体の細胞のすみずみにまで浸透していくように、まだ東京に置いてきぼりになっている私の心に、この時からすでに大山のエネルギーが、なんの強制も無理もせず、ただ、ゆっくりと静かに。
気がつかないくらいに繊細に、自然に。じんわりと滲み入ってきていた
のだなぁ…と今思いました。


この時には気づけませんでしたが。

ホーポーとしゃべりながら1枚だけ撮れた影絵公演の写真。




(つづく)

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イトナミダイセン藝術祭、11月13日まで開催しています。







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