相続税の申告を何件かやってみて思ったこと

こんばんわ、タケです。私はスポットで相続税の申告業務のお手伝いをしているのですが、何件かやってみて思ったことを書いて行こうと思います。

なぜ相続税に興味を持ったか

元々不動産に興味があったので、宅建士の資格は取得していたのですが、仕事に直接活かせておらず、この知識を活かす機会を探っていました。
一方、数年前に相続税の改正があり、申告対象者が大きく増加しました。相続税の申告では不動産の知識は必須であり、また、相続税の申告が今後増えていくなら、やらない手はないと思うようになり、興味を持つに至りました。

実務を積む前にどんな勉強をしたか

私自身は税理士の資格を持っているのですが、相続税の知識はほとんどないため、荒療治的に約5ヶ月後の税理士の相続税の科目試験を受けることにしました。当時は会社員時代でしたので、明らかに無謀でしたが、合格という目標を置けば、一生懸命勉強するのではないかと思い、TACの講座や答練に取り組みました。結果は不合格でしたが、人並み以上の知識は身に付いたので、目的は果たせたのかな、と思います。
それ以外では、TACの相続税実務コースの受講や、民間の相続アドバイザリー3級の資格は取りました。

具体的にどのような仕事をしているか

相続税をメインでやられている税理士さんと知り合う機会があり、上記の勉強状況をアピールして、相続税の申告書の作成を手伝う機会を得られました。下請けの立場ですが、もう10件近くは関わったかと思います。

実務上、特に重要な点は何か

相続税は、亡くなった方の財産の評価を行うことがメインとなります。その中でも土地の評価は非常に複雑で専門性が高く、かつ、相続税総額に与えるインパクトは大きくなりがちですので、土地の評価が極めて重要になります。逆に言えば、土地の評価さえきちんとできて、財産の抜け漏れがなければリスクは抑えられるとも言えそうです。
財産の抜け漏れと言う点では、名義預金(相続人名義だけど、亡くなった方の預金だと見做されてしまうもの)の漏れが怖いです。税務調査の指摘項目のトップだったと思います。
非上場株式の評価も大変難しいのですが、土地に比べると出現率は相当低いです。

他の税目と相続税との違い

法人税や消費税、所得税などは、決まった時期に申告をするルーティン業務ですが、相続税は人の死という偶然の事象に由来するものですので、スポットの案件となります。(脱線しますが、偶然の事象で財産を得たんだから課税しますよ、というのが相続税の発想のようです。相続税がない国も多いらしいです。)
また、他の税目は、基本的には簿記が絡むものであり、簿記の知識があると何となく分かる部分もあるのですが、相続税は基本的には簿記の知識は不要です。その代わりに財産評価の知識が求められるので、他の税目と毛色が違い、他の税目の知識もあまり活かせないです。

儲かる仕事かどうか

報酬相場としてはざっくり相続財産の1%弱が報酬となります。1億円の財産であれば70~80万円というところでしょうか。ある大手税理士法人が設定した金額が事実上の標準となったようです。
これが多いか少ないかですが、相続人への対応や財産評価、司法書士への委託報酬など、工数やコストを考えると、ちょっと少ないかなと思います。少なくとも公認会計士のアドバイザリー業務よりは少ないです。
報酬が少ないのであれば、数をこなすという考えもありますが、1件1件に最低限の固定的な労力が掛かるので、数を増やせば増やすほど、時間当たり単価は下がり効率性は下がってしまいます。
逆に、難しい案件や相続財産が巨額な案件を専門にするという考えもありますが、明らかに税務リスクが高まってしまうので、大手の税理士法人でしか対応できないような気がします。単純な金融商品しか持っていない方なら簡単なのですが、複雑な不動産や非上場株式を持っているケースが大半だと思います。

成長マーケットと言えるか

高齢化社会が加速しており、今後も申告数は増加することは明らかです。しかし、報酬相場が固定化していることを考えると、相当な合理化を進めないと利益が出ないように思います。逆に言えば、土地の評価以外を自動化させたり、相続人に財産の明細一覧を作成してもらったりして、工数を大幅に削減できれば、利益が出てくるのではないかと思います。そうなった場合、また報酬が下がり、結局利益は出せないのかもしれませんが。。
ただ、納税者の立場から考えると、報酬がどんどん下がることは良いことに違いありません。そもそも他の税目も含めて日本の税法は複雑すぎて、納税者自身が申告できないために、税理士がやるという状態だと聞いたことがあります(税理士と言う資格は世界でも日本だけらしいです)ので、相続税に関しては、あるべき姿に近づいていってるのかもしれません。

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